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鬼畜外道より愛をこめて  作者: キノコ飼育委員
LO☆VE!!
34/77

演説に愛をこめて

最近リアルが忙しくなってまいりました。


更新が遅れるかもしれませんがご了承ください。

ここは元・魔王城。

の地獄と化した城壁内。



城壁内の一角に積み上げられた死体の山はとっくに隊長ご自慢の火炎放射機に焼かれ炭化している。


そこから少し離れた場所で整列する部隊。



ギャリギャリとやかましい音とともに巡回に出ていた隊長が戻ってくる。


隊長は部下に連絡を取るために回線を繋ごうとし、


『っ!! 総員警戒!!』


回線ではなくスピーカーからの大音量の命令を飛ばす。


それはそうだろう、いきなりレーダーやセンサーに障害が発生し、通信が妨害されているのだ。


明らかな異常事態。


Dα01二等が飲み込まれたマシンガンの代わりに予備装備のレーザーブレードを装備しつつ周囲を警戒する。


(おぉっと、敵襲か? …………ッ!!?)



ドックンッ!!



心臓が跳ね上がる。


背部を氷で貫かれたかのような戦慄。


今すぐ操縦桿を回れ右して離脱したくなるようなプレッシャー。


どろりと頬を伝わる汗が鉛のように重い。



(んだよこの吐き気をもよおすような圧力は!!)



並ぶ兵士達から僅かに音がなる。


震えているのだろう。



だがいち早く隊長が自分を取り戻し矢継ぎ早に指示を飛ばす。




『部隊を小隊に分けろ!散開して城門を囲め!!バリケード設置急げ!出てくるぞ!だが合図があるまでは撃つな!!』



隊長の声に反応し慌ただしく部隊が展開を始める。



五人一組に別れ破壊された城門を囲むように〈下級バリケード設置〉で土嚢が作成、積まれていき、兵士達がその影に隠れる。


包囲が完成、緊張とともに迫る何かを待つ。



そしてゆっくりと出てきたのは――――――



いつもの『ラヴァーズ』の面々だ。


だが放つ雰囲気は突入前と今では段違いに覇気のあるモノ。


ルリはキリッとした軍服軍帽軍靴に無地の仮面、黒蟻は妖しく発光する幾何学模様の刺青を、フロストは角と翼と尾が生え、半分神の姿になっている。


ついでに一人、ラヴがいないが自分達の上官に銃を向けていることに慌てる隊長は気付かない。



『こっ、これは総司令閣下!!失礼しました!!全員敬礼!!』



一糸乱れぬ動きで全員が土嚢の陰から立ち上がり敬礼する。



ACも敬礼するように頭部に手を持っていく。


武器を外して。




『戦地で武器を外すとはなにごとだ!!』



瞬間怒号が飛ぶ。


〈拡声〉によりどんな歴戦の戦士でも竦み上がるような威圧が放たれる。



ルリ総司令からだ。



『戦闘が終わったとはいえここは敵地で戦場だ!そこで武装解除するなど言語道断!!とくにSRは即時行動せねばならない兵器(・・)だ!!兵器は敬礼などしなくていい!』


『しっ失礼しました!!』


慌てて武器持つDα01二等。


その心境は自分の創造主に失望されたという絶望で埋まっていた。



(なんつー失態を犯しちまったんだ……クソッ!!隊長はしてねぇし……恥ずい、やべぇ死にたくなってきた…………つか“処分”されに行っちまうか)



だがその絶望は総司令の声で晴れる。



『以後気をつけろ!!安心しろ、汚名返上の機会はすぐに来る。その時までに腕を磨いておけ!!』


『了解しました!!』



(お、汚名返上の機会を与えて貰えるのか……!? なら……次こそは期待に答えて見せるぜ!!)


そう、決意を胸にするのだった。





ちなみに何故こんな風にルリのキャラが変わっているのかというと――――――――







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







「威圧しろぉ?なんでそんなんせなあかんねん?」


「あん?そいつらが敵か味方か、味方なら仲間か部下か、もし部下なら忠誠心がどの程度あるのかわかんねえからだ」


「テンプレやと現実になったNPCは俺らの設定通り味方な部下で忠誠心はMAXてパターンばっかやで?」


「二次元と現実の区別くらいつけろボケ」


「…………いや、まあせやけど……」


「つー訳で今から適当に威圧します、妨害スキルから補助スキルその他演出になりそうなスキルは全部使え」


「むむむ?」


「お前?お前はそのままで十二分に十分だ。いつも通り愛を撒き散らせ」


「むぐっぐ!」


「いい返事だ可愛いぞー。あと、各階層のボス、つまりは各々作ったNPCは責任持って各自で調べろ。終わったらいつもの部屋集合な」


「フム、だがどうやっテ?お前のように読心技術など使えんゾ」


「あぁ~、じゃアレだ、こう言え」



ルリはそっとラヴの耳を塞ぎ、面倒臭そうに指示を出す。



「……いつも思うねんけどお前って割りと鬼畜やんな」


「ボスの次くらいには鬼畜だナ」


「オイオイ、この恋する乙女に対してヒデェ奴等だぜ」


「「漢女(おとめ)?」」


「……いや、今は勘弁しといてやる」


「クハッ(嘲笑)!!

まぁ言いたいことは分かったわ。ほな、〈レベル威圧〉〈妨害電波〉〈撹乱電波〉〈毒電波〉〈威圧眼光(メンチビーム)〉〈恐慌波動〉ONやな。あとついでに、変身!」


黒蟻の全身に蒼く、そして暗く輝く幾何学模様の刺青が走る。


肩から15センチくらいの針が飛び出し電波塔のようにちいさな円盤が三枚(小さく)大中小と、貫かれるように展開される。


パリッ!と一瞬電光が疾ると、赤に、そこから黄色に、さらに紫に光り、最後全て混ざって紅紫色にボンヤリと輝き出す。


〈メッセージ〉〈通信〉〈コール〉を妨害し、センサーの類いを軒並み駄目にし、僅かづつ体力と魔力を削る電波が発信されているのだ。



「フム、では俺モ。〈レベル威圧〉〈邪神の聖域〉〈邪神の眼光〉〈邪神の御声〉〈邪神波動〉起動。そして顕現! ……なんてナ」


フロストの体がぶれ、翼と尻尾が現れ、頭部からメキャメキャという異音とともに捻れた雄羊の角が歯車を押し退けて生える。


白衣と白スーツを着たまま翼や尻尾がどうして出ているのかさっぱりだが、狼男の変身シーンのように服は破れたりしていない。


ヴュ…………ン……とフロストを中心に何かが広がり、その何かが自分の体を通過した感覚を黒蟻とルリは覚えた。


〈邪神の聖域〉というパッシブスキルで、『半径300メートル圏内の回復アイテムを全て腐らせる』というものだ。



「おし!〈レベル威圧〉〈鬼軍曹の眼光〉〈上官命令〉〈煽動演説〉〈女帝波動〉発動っと。

(……ついでに自前の“カリスマオーラ”全開です)」



〈メニュー〉から〈セット装備〉を選択すると、ルリの姿が緋い光に包まれる。


深緑のキリッとした軍服に着替え、軍帽を被る。


仮面はにやけた面から無地の純白へとそのデザインを変える。


腰には見事な細工の軍刀が大小差されており、反対側の腰には同じく美しく装飾された拳銃が下げられている。


もちろん飾りではなく立派に戦闘装備だ。


いや、軽装備に見えてもルリの場合いくらでも武器を吐き出せるので、実質あまり関係はないのだが。



〈レベル威圧〉とはレベル差が100以上あるとモンスターが寄ってこず、逆に逃げ出すという〈設定〉だ。


〈スキル〉ではなく、〈メニュー〉の〈設定〉で、その機能のオン・オフを切り換えられる。



レベル900代から手に入る〈スキル〉で、レベル500以下の相手に種類に応じて様々な状態異常を与えることができる〈波動〉系スキル、状態異常“すくみ”を与える〈眼光〉系スキルなど、色々な妨害系常時発動スキルを展開する三人。


お互い被害が出ても関係ないし気にしないし口にもしない。意地で。


毒電波の光が肌にピリピリと痛かろうと、装備している回復アイテムが腐ろうと、ルリのカリスマに魅了され膝を屈しかけようと全員無言。


さらには不気味にくつくつと笑い出す始末。



「じゃ、行くぜ」



こうして冒頭に戻るのだった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





〈拡声〉スキルによって広い城壁全体に凛とした声が響き渡る。



『諸君!作戦は成功、この戦争は我々の勝ちだ!!』


瞬間、沸き上がる歓声


骸骨兵士達が突撃銃を振り上げて唸り声を、|四脚戦闘ロボット(AC)のスピーカーからも勝鬨が上がる。


ルリが手を振ってそれを静める。


その姿には眩いほどのカリスマが耀く。


『しかし諸君、我々はこれより激動の時代を迎える!

これからはより強く!より圧倒的に!! ……勝たねばならない。


故に諸君!驕るな!止まるな!進み続けろ!!


そして勝利を!


『ラヴァーズ』に捧げるのだ!!』




ウォオオオオオオオオォォオオオ!!!!!



『うむ!では撤収!!』



颯爽と袖を翻して〈転移〉を発動、銀光放ってルリは消え去った。


「クハッ!相変わらずカリスマやな」


黒蟻が皮肉気にニヤリと笑う。


「いつものことだろウ」


フロストは当然とでも言いたげだ。



「……あん? ラヴどこや?」


「アイツの腹の中に入ったままダ、カンガルーみたいにナ」


「さよか、せやったら俺も戻んな」


「アァ、先に行ケ。俺は『仁ー七号』を回収してから行ク」


「おう、ほな後でな。マジカル★忍法キャッチ・ザ・スカイ!!」


黒蟻は足のブースターに点火し、さらに背中の肩甲骨あたりからジェットブースターが飛び出し戦闘機のような透明の羽根を生やしドウンッ!!と風圧をフロストにぶつけながら空へ飛び立った。


ちょっとした衝撃波をくらいながら小揺るぎもしなかったフロストは撤収用のヘリに乗り込む兵士たち、その隣にそびえ立つビルのようなモノに近付く。


分類的には樹氷になるであろうその氷山のごとき氷の塊は、あの巨大花『フィラメス』である。



「フム……フッ!!」



ペタリと凍りついた巨大な花の(もはや幹レベルの)茎に手を当て、少し何かを考えた後、拳を叩きつけた。


あっという間に亀裂が走り粉々に崩れていく。


最後に触手の塊がそのまま落ちてくると、城壁に当たってバカリと割れる。


そこにはほぼ無傷で凍りついた『仁ー七号』があった。


その前でフロストは〈アイテムボックス〉を開き、あるアイテムを選択する。


(旧青狸の声を若干真似て)


「モ○スターボー……もとイ、格納カプセルー(棒読み)」


〈アイテムボックス〉から手の平サイズのカプセルを取り出す。


薄緑で、中心の継ぎ目にボタンのついた、某捕獲ボールを色変えて細長く引っ張ったようなこのアイテムは、SR兵器を含む『乗り物』を一機だけ格納できるという代物だ。


一度格納するとパスワードを言わねば開かない。


これを使って泥棒行為を働くプレイヤーも勿論存在するが、『乗り物』自体鍵かパスワードが無ければ使えぬ仕様なので、盗んだとしてもそれをそのまま使用することはできない。

が、それでも売ることはできるので、盗人が滅ぶことはない。


ちなみにフロストはこのカプセルをあまり好まない。

なぜならパスワードを


『○○! 君に決めタッ!!』


に設定するようラヴに『命令』されているからだ。


「パスワード設定、『仁ー七号、君に決めた』…………解せヌ」


今日もまた、体が勝手に動く。


「何もこんなことに『命令』を使わなくてモ……まあいイ、土産も回収できタ、戻るとしよウ」



そう言うと、フロストは『転移符』を破り、今度こそ『モンストロ』に帰還した。



今回部下の心理描写が上手くいかなかったです・・・。


忠誠心って、何ですか?

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