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鬼畜外道より愛をこめて  作者: キノコ飼育委員
LO☆VE!!
33/77

確認作業お終いっ!!に愛をこめて


ここは彼らが現実で通っていた紫苑ヶ原学園。

模造(コピー)したステージ。

の屋上。


そこから見えるのは闇。


青い空も明るい太陽もない、何もかもを飲み込む漆黒。


見ようによっては恐ろしく、


感じようによっては暖かい。


ラヴそのものと言えるような空間。


そんな闇を見上げつつ、ラヴは独りぽつんと立っている。







君の好きなことを思い浮かべて欲しい。


僕なら例えば、


ショートケーキを食べる時。


好きなゲームをしている時。


毎月楽しみにしてるマンガを読む時。



そんな好きなことをした後、君はどう思う?


ショートケーキのイチゴを最後に食べ終わった時、


ゲームをクリアし終わった時、


毎月楽しみにしてるマンガを読み終わった時、



君は何を思う?



嬉しくなる?


楽しくなる?


幸せになる?



僕はね、



後悔する。



すごく、


すごくすごく、


後悔する。


どうしてやってしまったのだろうって、


何故もっと楽しまなかったのかって、


終わらせてしまったって、


後悔する。



つまりは、


僕は過程が一番好きで、


終わりに辿り着くのが嫌いなんだ。



だから父さんと母さんは、


お互いを最後の相手にして、


終わらせ合ったんだ。



…………僕も終わろうかな。


皆も殺し終わっちゃったし。



手の中を見る。


カード。


トランプカード。


ジョーカーカード。


真っ赤な水玉の服を着た道化師が、絵の中でニタリと笑って跳ねている。



軽く宙を斬ってみる。


遠く離れた壁が大きく裂ける。


それをゆっくりと、首筋に当てる。



目を閉じて、少し息を吸ってから、



横に引いた。



ぽーんと首が落ちて、ころころころり。


視界が回って、


止まる。


自分の体が立っているのが見える。


切り口からは一滴の血も出ていない。


「……?…………ぁ」


突然、首がふわりと浮き、元の位置にぴたりとくっつく。


それからラヴはちょっと恥ずかしそうに頭を掻く。


「そういえば僕、<斬撃攻撃無効>だった……」


やがてゆっくりと、しかしどんどん赤面し、やがて――――



「きゃーーーーッ!!恥ずかしいいぃぃぃ!!!!うわーうわー痛い痛い痛々しい!厨二!厨二病が僕を殺すよおぉぉぉ!!」


ラヴはその場でゴロゴロと転がり出す。


ゴロゴロゴロゴロゴロ………………ロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!


「わーっ!わーっ!!だいたい最初のあれ何さ!!思ってもいないことをカッコ良さそうなんて理由で口走るんじゃなかった!!後悔なんてしたこともないくせにぃ!!!」



食べた時も!


クリアした時も!


読んだ時も!


折った時も!


殺った時も!



後悔なんかしたことない!!



え?父さんと母さん?


プレイが激し過ぎて死んじゃっただけだよ。


若くもないくせに……無茶しやがって……。


ま、すごいイイ顔で死んでたから、良かったんじゃない?


あぁ~それにしても恥ずかしいぃぃぃ……。



あぁ、過程が一番好きで終りが嫌いなのもほんとだよ?


誰だって遊んでる時が一番楽しいでしょ?



バタバタと跳ねゴロゴロと転がり回っていると、ポケットからけたたましいベル音が響く。


手を突っ込んで引っ張り出すと、金の鎖のついた懐中時計が出てきた。



「あ、9分経った。凍くんあと一分でゲームオーバーだ……じゃ、みんな起こさなきゃ」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





ここは城。

の地獄と化した城壁内部。

の城の大扉の中。

から進んだ四階。

その廊下。

の天井に空いた大穴から直通で行ける玉座の間。

の玉座手前の広いとこ。



空間が水面のように揺れ、ペッと三人の人影が吐き出され、ユルンッとラヴが出てくる。


三人はぐったりと床に大の字に寝転ぶ。


「あ゛ー、死んだ死んだぁ、首チョンパで即死やったわ」

「眠るように逝けた俺は勝ち組みだナ」

「俺は………(/////)」

「ハイコレノータッチで行くで」

「無論ダ」


いつも通りぐだぐだと会話する。


その姿はつい先ほど死んでいたようには思えない。


「せやせや、話変わんねんけど……なんやめっちゃ変な夢見た気ぃするわ」


「オォ、俺もダ、怒りのままに何かを粉砕するような夢を見タ」


「俺は気に食わねぇモン潰す夢見たぜ」


各々臨死体験についての話に花を咲かせていると、ふと思い出したように黒蟻がルリを睨む。


「……あぁせやせや、なんやお前にハメられる夢も見た気ぃしてきたから」


「奇遇じゃねえか、俺もお前に後ろから斬られる夢を見たんだ」


「「だからこ(ゾクリッ!)……もとい、握手だ(や)」」


いつも通り過ぎる展開に既視感を感じた二人は、とてつもなく不自然な笑顔で握手を交わす。


ギチギチと異音が繋がれた手から聞こえてくる。


「学習しているナ。あぁボス、おはよウ」


ダベっているうちに回復したのかフロストがラヴに声をかける。


そういえばさっきから一言も発してないな、と思いながら。


「……う」


ラヴはといえば、俯いていたかと思うと、ぽそりと何かを言う。


その様子に妙なものを感じ、再び問いかけるフロスト。



「? どうし「おはようみんなぁーー!!」ヌオォ!?」



ガバァッ!!とホラー映画よろしく突然動きだしたラヴは、ラリアットみたくフロストを捲き込みつつ残る二人も抱き締める!!



「ぎゅーっ!ぎゅーっ!!ぎゅぎゅーっ♪」


「だあぁ!暑苦しいんや離れろや!!」


「ぐええぇっ!絞まる、絞まってる!!」


「ハ、ナ、セエェェ!!」


「ヤダ!〈『護れ紫電の蛇、触れし者を束縛せよ』!スタン・ボルテックス〉!!」


魔法<スキル>を唱えたラヴの体を、電流が薄く覆ったかと思えば即効抱き締めていた三人に襲いかかる!


「「「効くか(カ)!!」」」


しかしそこは全員レベル999、生半可な麻痺呪文なぞ効きはしない。


ルリが液化してその拘束を抜け、黒蟻がその隙間を一瞬でくぐり抜け、最後にフロストが腕力で抉じ開ける。



「ハァ、ハァ、なんやねんいきなり」


「うふふ、これからは何回だって君達を殺せると思ったら嬉しくて!!」


「勘弁してくれよ……」


「やれやレ、それデ?ボス、これは夢か現カ、どっちだと思ウ?」


ラヴはその質問に、爽やかに笑って、


「わかりませんでした!」


「「「…………」」」






〈〈しばらくお待ち下さい〉〉







「むっ!むぐ~~~~~ーーっ!……む、むぐぐ、むぐぐぐ?」


「はいっ!じゃあちょっと脱線しましたが会議を続けたいと思います! ……の、前に、これ外してくださいってよ」


「「却下」」



現在ラヴは手錠と鎖と虹色のロープと目隠しと猿轡で完全に拘束されている。


簀巻きにされ、更にルリがその体を首まで飲み込んでいる。


頭だけルリの着物の懐からぴょこんと出ている。


ちなみにルリは全身でラヴを感じれて凄く嬉しそうだ。


「むぐぐぐ~~ー!」


「もう暴れませんから~ってさ」


「「ダウト」」



もひとつちなみに、通訳は読心技術(と偽ったテレパス)で行われている。


ルリ曰く、人間には『理性の声』と『感情の声』があり、ラヴは後者が強すぎるために読みにくいのだとか。


ようするにラヴは理性より本能が強いということだ。


そんな読みきれない程の愛の囁きが嬉しくて発狂しそうになりつつも、その中に混じる理性の声を聞き取り何とか通訳は成立している。



「あぁ♡なんだろうなこの高揚感に支配感に一体感!!あぁやべぇ……ずっとこうしてたい……」


「デ?これからどうすル?」


「無視かオイ……まぁいい、だが流石の俺も経験したことないからわかんねぇ」


「アレやな、テンプレな展開やったら幾つか予想つくで?」


「テンプレ?何だそりゃ?」


「知らん?『小説を読め!』っていうネット小説サイト」


「む!むむむぐっぐむむ」


「あ!僕知ってますってよ」


「それがどうしタ?」


「いやな?とてつもない量あるからある程度パターンが出来てまうねん。で、その在り来たりなパターンをテンプレ言うねん」


「フム、それデ?このパターンはどんなてんぷれダ?」


「せやなぁ、勿論こういう風に『ゲームの世界に入ってまう』っちゅうパターンもあんねやんか? で、そのパターンやと大体『ゲームそのまま』、『ゲームから数百年後』、『ゲームとは全く関係ない』の三つや」


「で、現時点じゃわかんねぇと」


「結局そうなんな。でもそれ以外にもテンプレパターンがあってな?」


「何ダ?」


「いわゆる『拠点のNPC、飾り施設が本物になる』、やな」


ソレを聞いた瞬間、フロストの頭にピカッ!!と電球が光った(ように見えた)


「オォ!忘れていタ、それは確かに確認したイ!」


「せやろ?今んとこ何も分からんねやったらそこからいくのも悪ないやろ?」


「ま、現状そうなるか……」


「むぐぐ~♪」


「賛成だとよ」


「よシ!そうと決まれば先に行くゾ!!」


言うや否や走り出したフロストは床の穴に飛び込む。


「クハッ!えらいテンション高いなぁ」


「『モンストロ』を隅々まで見て回るな、ありゃ」


「むぐ~、むむむむ……」

「ダメだ♪もう少しここにいろ♪」


「ま、俺もお前らも自分の階層が気になんねやし、はよ追いつこや」


「だな」


そう言うと二人(と半飲まれの一人)は穴に飛び込んだ。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「ところで……何か忘れてね?」


「何かって……何や?」


「いや、そう言われても思い出せねぇけど……」


「むぐ~♪」


「ま、そうだな。その内思い出すか!」


「せやせや。お!フロストおったで、はよ行こ!」



 


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