夢の中に愛をこめて
いつの間にやらお気に入り件数が1100件超え!!
さらに話数が30ですよ!
これもひとえに読者の皆様のおかげ!!
なんかしたほうがいいのでしょうか?
ところで一つ言い訳を。
またストーリーが進行しなくなります。
・・・30話もいってるのに。
あとあと必要なので怒らないでお付き合いください。
何とか二話以内に収める予定です。
あと厨二成分が爆発もします。
それでもいい方はドウゾ。
唐突やけど昔の話すんで?
俺は子供ん時から体が不自由やった。
てか、体のパーツ数が不十分やった。
『とろろ』って漫画知っとる?
魔物と契約した父親が産まれてくる子供の身体担保に力借りる話や。
で、産まれてきた子は魔物によって両目両耳両手両足が無かった。
この子は捨てられ、後に拾われて義手義足義眼義耳(?)、とにかく足りん身体を物で補って成長し、自分の身体を取り返す旅に出るんや。
名作やで?
……ただ俺の場合は、両目両耳両手両足内臓幾つか神経数ヶ所肋骨数本に心不全患ってて、何より血が上手く作られへん体やった。
超巨大総合医療企業『森羅』。
その御令嬢として俺は産まれた。
漫画と違うのは魔物のせいなんかやなくて、親父がお袋に『妊婦に対する新薬の臨床試験(違法)』やっとったからや。
あとは『終生義体実験プログラム』の被験体にされたことやな。
身体が七歳になるまでは自然成長させてそっから義体実験を開始するらしかった。
せやけど、言葉わからんかったら話ならんから割りと早めに“目”と“耳”はついた。
片方ずつやけど。
なんでも全く“ない”状態から“ある”状態になった時の感想が欲しかったんやて。
せやけど俺は、義眼が入る前から何かが見えてた。
丸い丸い、めっちゃキレイな珠と、そっから煙みたいな、水みたいな、焔みたいな、なんとも言えん、むにゃむにゃしたもんが、でもめっちゃ綺麗な光が流れて、生き物の形を作っとった。
義眼入れてからそれは見えんようになった。
せやけど入れとらん方の空洞でやったら見えた。
物体は見えへんかったけど、それでも綺麗やった。
喋れるようになっても、このことは誰にも言えへんかった。
“診察”されんのが面倒やったし、自分だけの秘密を持つのんが楽しかった。
七歳なるまで俺はベッドの上でそんな身体でできる最低限のリハビリと勉強やっとった。
忙しい中親父が様子見に来たり、妹生まれたってお袋が来たり、病練のジジババ達が話しに来たり、あと物好きが俺と友達になったりと、わりと愛されて俺は育った。
ちなみに一応親父の弁護しとくけど、俺、流れる予定やったんやて。
それを新薬で何とか繋いだらしい。
「『森羅』の医療技術は世界いちィイイイィィィイ!!!!」
が標語なんも頷けんで。
そうしてすくすく育った俺は、
立派な立派な切り裂き魔になったって訳や。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は『過剰のブラッディ・ブラック』黒蟻。
魔法少女まにキュアが一人にして『ラヴァーズ』の一員。
今までどんな障害も斬り裂いてきた。
心臓の音が耳に煩いほど響く。
滲んだ汗が目に伝うが気にしている暇はない。
全神経に集中せなサクッと死んでまうようなこの状況。
てか実際走馬灯が走っとる。
あぁ、俺の義手ん中にお年玉突っ込んだジジイが見える……。
そもそもこんな状況になったんはラヴのせいや。
回想入れるんやったらこんな感「見つけたぁあ!!」
「ギャアアアァァァ!!!」
ラヴに蹴りかまして隠れとったロッカーから飛び出す!!
同時に窓割って廊下の壁に着地、ブースターに点火しつつ廊下走って階段にラヴがいた。
「廊下走っちゃいけません!」
逆噴射ァ!!
床も蹴って後ろに跳び、自分から槍に突き刺さった。
「ゴボッ!!」
腹から突き出てんのは毒々しい色合いの、先尖らせただけの槍。
壁の小さな穴から飛び出しとる。
(グングニルの槍……厄介やな)
やばい勢いで力が抜ける。
<HP吸収>が付加されとる。
意識が落ちる前にポーチから抜いた小太刀で槍を斬って引き抜く。
(ッ!……この程度やったら問題ない、すぐ〈自己再生〉する)
取り合えず、
「<影分身>!!」
ポポンッ!!と煙の柱が二つ立ち、俺が二人中から現れる。
「お前ら足止めせぇ!!」
「マジで!?」
「死ねと!!?」
「ええから死んでこい!!」
傍におったヤツをラヴの方に蹴り込む。
……バラバラんなった。
よく見ると空中がキラッキラッと輝く糸が大量に設置されてた。
「死なばもろともや」
「一人で死ね!!」
「逃がさなぁい!!」
鬼ごっこ、もとい『鬼』は始まったばかり……。
ここは希望ヶ峰学園。
ではなく、
ここは彼らが現実で通っていた紫苑ヶ原学園。
を模造したステージ。
別名ラヴの箱庭。
つまりは携帯式処刑場。
光すら飲み込み消化する暗黒の空間、そこにポツンとその学園は浮いていた。
そんなところになぜ彼らがいるのか。
どうしてこんなことになったのか。
それはほんの数分前に遡る。
それは少女に提示した条件通り彼女の仲間を生き返らせようとしたときだ。
「あ!」
「あ?」「なんや?」「どうしタ?」
「そういえば僕、これが夢かどうか確認してませんでした!」
「あぁ?俺らがきっちり確認しただろ」
「しっかり殺られへんかったな」
「それに『真名』の命令で確認しただろウ?」
「それは君達の確認。夢の中の人が『これは夢じゃない』って言ってるようなものだよ」
「じゃあどうやってかく……ちょっと待て、嫌な予感がする」
「……あいつは次に」
「“殺して確認する”と言ウ」
ラヴはそれはもうキラッキラした笑顔を浮かべ、
「ぶっ殺して死ななかったら夢じゃない!!」
「「「逃げろ(ロ)!!!!」」」
全員が床に空いた穴めがけて走り出す。
「うふふ」
ラヴがニッコリ笑って
「逃がしませんよぉ♡!!」
パチンッと指を鳴らす。
途端に床が壁が天井がキランッ!!と光り、薄い硝子のような膜が部屋を包み込んだ。
一番先に穴に辿り着いた黒蟻が硝子に手刀を繰り出すが非常に硬質な音ともに阻まれる。
「クッソ!!罅ひとつ入らん!!」
「どけッ!!〈貫通力12倍〉、〈フルオート〉!!」
袖から長大な対戦車ライフルを構え一気に全弾を
「チョコ、ザイ、ナ♡」
嫌な予感迸る〈キー〉を聞きフロストはほんの少し振り返る。
ラヴが両手を合わせ、開くとそこから真っ黒な球体がブワッ!!と膨れ上がり―――――
ここは元・魔王城。
の地獄と化した城壁内。
そこに整然と整列する部隊。
そこに一体の四脚戦闘ロボットが辺りを警戒していた。
その上空、『モンストロ』の底部ハッチにもう一機、四脚が待機しており広範囲を警戒している。
地上の四脚、SR兵器であるAP、そのコックピットで気の抜けた独り言が呟かれる。
「……暇だな」
『私語は慎め』
「お堅いねぇ、もっと肩の力を抜けよ」
『お前死にたいか』
「へっ!上等だオラァ!!」
『いい加減にせんかバカ共!!』
回線から怒号が飛ぶ。
周辺の警戒に行っていた隊長機からのものだ。
『Dα01二等!!無駄口叩かず真面目にやれ!Dβ01二等!!いちいち突っ掛かるな!』
「う……」
『ぐ……』
『返事はどうしたァ!!』
『「Yes,ser!!」』
『よし』
そういうと、また周囲の警戒に戻る。
(とは言ってもよぉ……やっぱ暇だよなぁ……)
そうDα01二等は考える。
頭部のカメラを通して写る景色には破壊された城壁、一纏めに積まれて焼却された死体、崩れた幾つものゴーレムの残骸、そしてずらりと並ぶ突撃部隊。
一言も発さず、微動だにしない、まるで呼吸すらしていないかのような沈黙の兵士達。
いや、
実際呼吸はしていない。
何故ならばそのGIジョー人形みたいな格好の下には呼吸を必要とする器官はなく、体を揺らすような心臓すらない、骨onlyだからだ。
ボロボロの迷彩服とヘルメットにスコープゴーグル、防弾チョッキや突撃銃を装備した寡黙な兵士達。
ルリの〈クリエイト〉したモンスター、レベル280、リビングデッドソルジャー。
いわゆるガイコツ兵士だ。
(相変わらず陰気な連中だぜ……)
たまに全員揃ってカラオケ合唱しているのを見るが。
いつも思うがどうやって声を出しているのだろう?
ブグワッ。
「は?」
いきなり目の前に黒い壁が出来た。
自分の乗るAPの持つマシンガンが半ばまでその黒い壁に飲み込まれている。
その上ズブズブと沈んでいっている。
「ちょ!う…お!?」
慌てて腕を引くが少しも動かず、むしろ飲み込む勢いが増す。
『馬鹿者!手を離せ!!』
「りょ、了解!」
隊長に言われた通りパッと離すと、マシンガンはそのまま壁の中へと消えていった。
『こちらDβ01二等、敵城塞中心部よりドーム状の結界を確認』
『それは違う、ドームではなく球体だ』
確かにその壁は離れてみると横から見ても円であり、上から見た報告を照らし合わせるとどうやら球体のようだ。
「隊長……これは…」
『あぁ、将軍閣下夫君の『箱庭』だ』
「これが出たということは……」
『うむ、どんな敵だろうと“終わり”ということだ』
回線から聞こえてくる声は、多分に緊張をはらんでいた。
それはそんなものを出さねばならない状況への戦慄でもあった。
いや実際のところ、いつものことなのだが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここは彼らが現実で通っていた紫苑ヶ原学園。
を模造したステージ。
の八階建ての校舎。
の四階の教室の一つ。
そこにある監視カメラやら罠やらを破壊し、追われる三人はそこを一時的な休憩場所にしていた。
「つー訳で、『第36回丹生月光くん何とかしないと(首が)ポロリもあるよ!(俺らの内臓)全部見せます!!致死率100パーリアル鬼ごっこ!!』が始まった訳だが……どうする?」
「どうしようもなイ」
「諦めたら殺し合い終了やで?」
「……過去35回に渡ったこのラヴ対我々+時々その他の鬼ごっこ、戦績はどうだっタ?」
「リアルとゲームん中全部足して35回中32回は全滅、3回はゲームん中で始まったから逃げ切れたけど代わりにリアルで襲われて……実質全敗だな」
「更にゲームの中で始まった鬼ごっこでこの空間に閉じ込められた後助かった覚えがなイ」
「……落ち着こ、とりあえず落ち着いてタイムマシン探そ」
「お前が落ち着ケ」
「てかよぉ、どのレベルで殺されると思う?」
「全殺しか死かって意味やんな?」
注)全殺し・ほんの少し生きてる、ほぼ死んでる、虫の息の意。
「リアルでは全殺シ、ゲームだったらしっかりとトドメが入るからナ」
「ていうかやな、あの全殺し普通やったら全治一年はかかるんやからな?おい聞いとるかチートども」
「実家に再生医療カプセルがあるお前が言うな逸般人ガ」
「やめろ、今はそんなことより生き延びる方法を考えろ!」
「やかましいわこの人外チート女!!」
「んだとテメェ!ラヴに殺られる前に俺の手で引導渡してやろうか!!」
「おう上等やゴルァ!かかって来んかい!!」
「君たちほんと仲良いよねぇ、嫉妬しちゃうよぉ♡」
「「一時休戦逃げるぞ!!」」
脱兎のごとく走り出した二人は示し合わせたように別々の方向へ。
ちなみにフロストは二人が叫び始めた辺りからとっくに離脱している。
「だから逃がさないってぇ♡!!」
パチンッ!とラヴが指を鳴らすと廊下の天井から次々に鉄格子が降りてくる。
だが二人ともそんなのはモノともしない。
スライムであるルリは鉄格子に突っ込むがぬるぬると隙間を潜り抜ける。床壁天井から飛び出すグングニルの槍は当たった瞬間に硬化した肌でへし折られる。
黒蟻は鉄格子が降りきる前に廊下を走り抜けた。さっきからいくつも仕掛けれた地雷を踏んでいるが爆風よりも速く走り抜けるので問題はない。その他のトラップは全て斬るか躱すか。
彼らのいなくなった教室で独りラヴはたたずんでいた。
ぶっちゃけ探そうと思えば幾つか手は無いわけではない。
だが出し惜しみしていては彼らを殺せないのも事実。
「あ~ぁ、また逃がしちゃった……ん~、やっぱこの装備じゃ全力で動けないか」
そう言ってラヴは自分の白黒コートを見下ろす。
この装備はどちらかといえば防御型で、近づいてくる敵を抹殺する為のものだ。
ラヴは〈トリックスター〉の〈スキル〉で自分の装備自体に大量の罠を仕掛けている。
故に攻撃を仕掛けられれば即カウンター攻撃が開始される。
例えば切り裂かれたコートから発射された鉄球。
さらに『聖天使』の種族スキル〈時空〉とのコンボにより、周りの空間そのものに罠を仕掛け、時には罠がギッシリ詰まった拷問部屋に引きずり込む。
例えば飛び出すナイフ。
例えば突然出現する地雷。
例えば門番リザードマン。
例えばグングニルの槍。
だがこれらは逃げる敵には効果が薄い。
もちろん空間内の自動攻撃兵装や人形達を使えばその限りではないが。
ちなみに『ラヴァーズ』メンバーはこのことを知っているが、それ以外のプレイヤーはラヴが何らかの『ホールテクノロジー』を使用していると思っている。
ある意味自分に罠を仕掛けるなどと思わないだろうからそう思うのも無理はない。
だから、
「えっと、〈メニュー〉、〈装備〉……〈マイセット装備〉選択…………これでよしっと」
いくつかの操作を終えるとラヴの姿が蒼白い光に包まれる。
「おぉ!ゲームと一緒だ!!」
そういった僅かな点に喜びつつ、変更された自分の姿を見る。
「流石にこの姿で武器が鎌っていうのはネタ過ぎるからなぁ~」
と言いつつもメイン武器はトランプ、ナイフ、針である。
「あっと、仮面も換えなくちゃ」
そう言って今被っているクマの仮面を脱ぐ。
それはすぐに蒼い光になって消える。
そしてラヴは己の手の平の仮面に目を落とす。
白黒に二つに別れているのは同じだが、仮面の右の黒地に白、左の白地に黒の三日月に笑う目、口は横線が一本だけ。
そして黒目の目尻の下辺りに『ラヴァーズ』のシンボルが紅いアクセントを添えている。
それをカチャリと顔に嵌める。
「クマの仮面も好きなんだけどなー、最近じゃ何かと文句着けてくる人が多すぎるよ!『わろスポ』はアナログマの怨念とか新聞に書くし、“しっと”はパクりパクりはうるさいし……」
すこし愚痴りながらもラヴは手を休めない。
次々と『メニュー』操作しこの学園の制御画面を開く。
実のところ、この学園はラヴのスキル〈建造師〉と〈トリックスター〉の複合によって創り上げられた罠そのものといえるような施設なのだ。
まず建築スキルで建物ユニットを大量に作成。
その際、ラヴはわざわざ黄色い工事ヘルメットをかぶり、工事現場の人っぽい格好をしていた。
もちろんラヴが自分の手で造る訳ではない。
材料か所持金を消費すれば勝手に完成するのだ。
要するにただの気分である。
次に完成したそれらを〈時空〉で作った空間に繋げて設置。
最後にビッシリと仕掛けを施し、フロストに“蟻でもできる!初心者用プログラミング講座”を受けてそれを施して完成である。
その後もちょくちょく改造を重ねたりしていた。
ちなみに似たような施設があと幾つか他の空間に仕舞ってある。
「監視カメラは……うんうん、ちゃんと破壊してるね。それに罠もしっかり発動してる。お陰で彼らの動きがはっきりわかるなぁ」
そう言う間にも次々に罠が作動、カメラの破壊、それらの交換がなされていく。
ラヴは画面を眺めニッコリと嗤う。
すると仮面も一本線の口がにぃやりと動き、ギザギザとしたキバを晒して笑う。
「さぁ、第二ラウンドの始まりだ!!キャハハハハハハ!!!」
哄笑が学園中に響き渡った。
変身って、いいよね。
感想お待ちしております!