ハイポーションに愛をこめて
ここはどっかの城。
の玉座の間。
の玉座前の広いとこ。
の床。
そこに3人は半円になるように向かい合っていた。(やはりあぐらで)
が、顔は玉座の方を向いていた。
玉座には、少女が座っていた。
少女はぐったりとしピクリとも動かない。
その少女の腹は赤黒く変色していた。
「~♪、うん? ん~、<解析>……おっと死にかけてる。いけないいけない。死んだらもうどうにもならないよ?希望を持って強く生きるんだ! うん♪ちょうどいいからここらで実験ついでに回復薬を使ってあげる!」
頭の中で「メニュー」と念じる。
と、目の前に薄青く光る半透明な、様々な項目が表示された。
そこには<アイテム>や<スキル>、<クリエイト><メッセージ><フレンド>などの項目があった。
ラヴはその項目の中の一つ、<ログアウト>に目をとめる。
(いまだにこの項目があるから、イマイチ実感がわかないんだよねぇ…)
苦笑しつつ<アイテム>からハイポーションを選択する。
すると手に光が集まり弾けた。そこにはまさによくある回復ボトルといった感じの物が握られていた。
それを彼女の頭から振り掛ける。
びちゃびちゃと不快な音を出しながらハイポーションが体を伝っていく。
すると少女の赤黒かった腹がみるみるうちに治り、体中に刺さっていたナイフや舌の針が新たな肉によって押し出された。
瞬きするうちに元通りきれいな姿になる少女。心なしか顔色もいい。
「おぉ!! ほとんどゲームと同じですね!! ……ん?よく見てなかったけどなんでナイフと針がぬけたんだ? 貫通してたのに? ……まぁいっか」
とりあえず忘れていたことはした。待たせていた振り返り、一応謝罪する。
「いや~、この大変な時にうっかりしていてホントすいませんでした(ん?何かボーッとしているな。どうしたんだろう?)」
実際はいつも通り過ぎる展開に若干引いていた彼らだが、ハッと我に返るとあわてて返事を返す。
「いやいや気にせんでええで?ミスは誰にでもあるからなぁアハハ……」
「そうそう大丈夫大丈夫、全然大丈夫だからハハハ……」
「そんなことよりこれからのことを相談しようカ!!」
「(んん?なんかギクシャクしてるような…?)……まぁそうですね。ではまず現状を確認しましょう」
ここでラヴは一度言葉を切った。なぜなら彼自身あまり認めたくないことを言わなければならないからだ。
それは余りに非現実的で、突拍子もなく、かなり深刻な事態。
「…………我々はMMORPGの中に来てしまった……ですね?」
そう、彼らはゲームの世界に取り込まれていたのだ。
彼は思い出す。さっきまで自分たちが何をしていたのかを。