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魔王様に愛をこめて

イィィィーーーーーヤッフゥゥウウゥウゥイイイィ!!!


感想いっぱいです!

ドーピングコンソメスープですよ!!


・・・でも今回ちょっと強引だったかも。


何はともあれ回☆想☆編!!最終話、ドウゾ!!


あと、今回後書きでお知らせと謝罪があります。

ここは城。

の地獄と化した城壁内部。

の城の大扉の中。

から進んだ四階。

その廊下。

の天井に空いた大穴から直通で行ける玉座の間。



Dr.フロストは<アイテムボックス>を開き、新しい歯車を取り出す。


ドロドロに熔け、形が完全に崩れていたゾンビのようなヘルメットは、カチコチに固まり元通り合金としての硬さを取り戻していた。


そのヘルメットの両側に手を添え、フロストは徐々に力を込める。


あっという間に細かな罅が走りバキバキバキンッ!!と割れ落ち、中から怜悧な美貌が現れる。


が、さっさと新しい仮面で頭を覆い直す。


黒蟻は暇そうに欠伸をしている。


ルリだけはラヴの傍らに控えている。


「~~♪~~~~~♪♪」


行き当たりばったりで適当な鼻歌を歌いながらラヴはゆっくりと玉座に近づく。


ラヴの周りの空間が水面のようにゆらゆらと揺れ、そこから毒々しい紫の、棒の先を鋭く尖らせたような槍が伸びており、30メートルほど離れた玉座に魔王を磔にしていた。


ラヴが近づく度に空間の揺らめきも一緒に移動し、音もなく槍を飲み込んでいく。



根元の方はゆらゆらと水面のように揺れる空間に続いている。




「ぐぅおぉっ!おのれぇ、おのれえぇぇええ!!!!殺してやる!!絶対に殺してやるぞ!!!」


「う~わぁ!可愛いなぁ♡」


その時、激した魔王は頭の中に何かが繋がるような気配を感じた。


(〈念話〉?誰からだ?・・・まさか生き残りがいるのか!?)


〈念話〉を受信すると予想に反して相手はこの城にいない、避難する民を任せた近衛教官にして元六魔将、『破城角』のドリグンだった。


彼も残ると主張していたが、それを何とか頷かせたのだ。


その声は切羽詰まっていた。




(魔王様!!お逃げ下さい!!)


(ドリグン・・・もはや遅い。預言通り『災厄』は来た。そして残るは私だけとなった。だが私は、例え散るだけだとしても最後まで戦う)


(な!本当に『災厄』が来たのですか!?ならばこれは一体・・・!?)


(どうした?何があった?)

(・・・いや・・しかし・・・・・だが現に・・・・そうか、そういうことか!!)


(何なのだ!?一人で納得しないで私にも教えろ!!)

(・・・では魔王様、我々は嵌められたのです)

(嵌められた?それはどういう・・・?)


(その前に魔王様、我々は襲撃を受け壊滅し散々になっております)


(な!!どういうことだ!?災厄はこちらに来るのではないのか!!?)


(いいえ魔王様、相手は『災厄』ではございません。・・・魔皇軍でございます)


(なんだと!?何故だ、いや確かか!?)


(はい、間違いございません。野盗の格好をしておりましたが魔力、練度、武装ともに野盗ではありえません。さらに〈サーチ〉をかけましたところ覚えのある魔力を見つけました。『斬殺公』です)


(な・・・なぜ魔皇軍が?)


(それはおそらく・・・・っ!)


(どうした!!?)





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





ここは魔王城から数千キロ離れたとある荒野。


二人の男が対峙している。



方や巨漢のミノタウロス。深緑の魔力を放つバトルアックスを杖のようにつき、左腕が斬り飛ばされている。


そしてその正面にその男は立っていた。


血に濡れたサーベルを右手にだらりと構え、右目にざっくりと銀色の古傷が走っている。


黒く平たい、つばのある帽子とケープのようなマント、スラッとした感じの服装。

残っている左目は、この世のすべてに興味が無いかのように冷めていた。


ドリグンは憤怒に満ちた怒声をあげる。


「斬殺公・・・貴様ぁ!!」


それに対して斬殺公は冷たく、どこか造り物めいた声で応える。


『相変わらず勘のいい男だ』


「何故だ!?何故こんな真似を!!」


『貴様のことだ、見当はついているのだろう?



・・・だがソレをお前に言う必要も』



唐突に視界が変わる。


(何が、飛んでいる?、違う、空が、下に、奴は、あそこに、サーベル?、アレ、は、私の、体)



『・・・伝えさせるつもりも、ない』



ごとんっ。




一瞬で首を刎ねた斬殺公はサーベルを一振りして血を払い落す。


そこへ小汚い格好の男たちが集まってくる。


「将軍、周辺に散った残党の処理が完了しました」


『御苦労、コレを片づけしだい撤収しろ』


「はっ!」



正方形に隊列を組み、四隅の隊員が転移と書かれた紙片を破る。


途端、巨大な転移陣が敷かれいくつもの部隊が光に包まれ消えていく。



ただ一人、斬殺公だけはその場に残っていた。


その瞳は、はるか彼方、地平線を覆う、遠近感が狂いそうになるほど巨大な何かを見ていた。


『・・・眉唾だと思っていたが・・・・フン、たしかに奴らは災厄、いやむしろ最悪に違いない』


そう呟くと、サーベルを帯刀した学生服(・・・)の男は転移符を破って消えた。



後には物言わぬ死体さえ残されていなかった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「おい!!どうしたのだ!!ドリグン!?ドリグン!!?」


「どんぐり?誰ですソレ?」


「うるさい!!お前には関係無い!!」


「・・・・・ええまぁ関係無いですけどぉ、目の前にいる僕を無視してお電話なんて、寂しいなあ」


ぐいと顔を近づけ目を覗き込んでくる。


クマの仮面の目がいつの間にか落ち窪み、黒々と影がぐるぐると渦巻いている。


だが魔王の目はそのさらに奥を見ていた。


仮面の中の恐らく素顔の目。


影より濃い、闇より深い、全てを飲み込んでいく穴。


目を逸らそうとしても動かせない。


魂を飲み込まれそうな感覚に、ひどく目眩がする。


それにしても随分綺麗だ。いやこのうえなく美しい。こんなきれいなものは見たことがない!

こんな絶世の美人に殺されるなんて最高だ!!むしろ是非殺されるべ――――――


「寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあこ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあろ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあす寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあよ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ寂しいなあ?――――――あ、そうだ、(ころ)そう」




「な・・・!」



スイッとラヴが離れると、仮面は元通りになっていた。


魔王は突然溢れだした狂気の瀑布に、そしてたったいま考えていたことに真っ青になる。


(私は今、何を考えていた・・・!?)


ラヴはそんな魔王をよそに両手を広げてくるくる~と踊るように回りながら、まるで舞台の上のように言葉を紡ぐ。


「やっぱり愛してもらいたかったらまず自分から愛しに行くべきですね!!僕を見てくれない人にも、僕を嫌う人にも憎む人にも殺そうとする人にも!まずは自分から愛を示さないといけません!!その努力を惜しまなければ必ず相手に気持ちは伝わります!現に僕はそうしてたくさんのお友達(・・・)を作ってきました!!



だから!!」



ピタッと止まりピシッとポーズを決める。


「皆さんお待ちかねの、いわゆるスペシャル処刑のお時間です!!〈転送・ミンチス〉!!」


ラヴの前の床にヒィンッと蒼い、直径一メートルくらいの魔方陣が出現し、そこからゆっくりと顔、胴、足と出てきたのは、のっぺりしたツルツルのマネキン人形だ。


白い白磁器のような顔は俯いており、両腕もだらんと垂れ下がっている。


ただし、その両腕がミキサーで両肩両脇から追加の腕が生えているのでただのマネキンとは口が裂けても言えないだろう。


『繰操術師』の派生最上級特殊職業『ドールマスター』。


『確認されている中で最も悪趣味な職業ランキング』で常に上位のジョブだ。


〈キャッチ〉というスキルで殺したモンスターから経験値を取得する代わりに『魂』を奪い取る。


それを〈人形創造〉で作った様々な人形(ステータスは作製者のレベルと素材に反映される)に〈憑依〉させる。


そうすることによって殺したモンスターのステータスが人形にプラスされ完成する。

ラヴの発想から生み出される人形達はもはや人形ではなく兵器だが。


で、これのどこが悪趣味かというと、


「ミンチス〈起動(オン)〉!!」



ビクッとミンチスと呼ばれたマネキンが痙攣する。


気持ち悪いくらいに滑らかに手足が動き、つるりとした顔を上げるとその顔が隆起し、窪み、顔を形取り髪も生える。


それは美しい女の顔。


目は空洞なのか真っ暗だがそこからぼうだの血涙を流している。



「あは♪可愛いでしょう?『天界』に行ったときに捕まえた守護天使ちゃんです!」




入れた魂の苦悶の表情が浮かび上がるのだ。

しかもその人形のレベルが上がるにつれて表情は狂気じみた笑顔に変わる。


一説では内蔵された魂が力を吸いとられる激痛に耐えかねて発狂するのだという。


ちなみに特殊職業とは転職方法がはっきりしてないということで、中でもこのジョブはラヴのみだ。


ミンチスと呼ばれた哀れな人形はカップのようなミンチ機の刃を回転させる。



「さて、トマトジュースを作りましょうか♪」



ラヴ流トマトジュースの作り方


材料


魔王、一つ


麻痺毒、適量(キャッシュパラライズがオススメ)


使用器具


ナイフ、数本


ミンチス、一体


回復魔法、適量


強化魔法、適量


☆作り方☆


1、まずは材料の皮を剥きます。顔は面白いので残します。

☆ポイント☆

材料が暴れるのでミンチスに補助腕で押さえさせましょう。 あらかじめグングニルのヤリなどで固定しておくのもいいでしょう。


2、恐らく死にかけているので回復魔法をかけます。

☆ポイント☆

皮を剥いた意味は特にありません。


3、いよいよミンチにかけます。材料がこれ以上なく暴れますがここで麻痺毒を打ち込みます。

すぐに動かなくなりますから腕、足の順になるべくゆっくりミンチにしていきます。

☆ポイント☆

ショック死しないように強化魔法をかけましょう。




魔王ちゃんが「アアァーー!!ァアアアァァアーーーーー!!!!」とか叫びながら泣いている。


あは♪可愛いな


もっと、もっともっと鳴かしたいなぁ♪


流れる涙を指先ですくって舐めてみる。


甘いなぁ♡、おいしいなぁ♡










食べちゃお♪











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「あ~ぁ、ドSゲージ振り切ってやがる」



両手に握ったデカいナイフを達磨に何度も何度も何度も何度も振り下ろすラヴを見て、ルリが呆れたように溜め息をつく。


「・・・なぁ、聞きたいんやけど」


「んだよ?」


「アイツの性癖は?」


「超々ドSの超カニバな両刀でもちろんノンケもいろんな意味で“喰っちまう”けどどんな時でも“受け”ずにガンガン“攻め”まくるAルティメットドSだ」


「・・・・・・・・・で、お前は何で無事なん?」


「理由知ってるだろ?」


「いや、まぁ、せやったな」


「俺は幸せだぜぇ?アイツに愛されるための身体で、さ」


「狂ってんなぁ、ククククク」


「上等だぜ、アイツと居られるならなぁギャハハハ!!」



ルリは歪んだ笑みを誇らしげに浮かべ、黒蟻はどことなく共感しているようにニヤリと嗤う。



「あっ死んだ」

「だが生き返らせたナ」

「いつまで殺んねやろ」

「知るか、いや待て、〈メッセージ〉が入った」

「誰からダ?」

「ラヴからの暗号命令だ」

「なんて?」

「あぁ、俺達は今から――――――」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




魔王は目隠しをされ、肌をナイフがツツツッと斬れるか斬れないかの力でなぞって行き、いつまた刺されるか切り裂かれるかの恐怖に震えていた。


無くなったはずの両手足は気絶した間に嘘のように元通りになっていた。


だが喜べない。


そこは新たな拷問箇所として自分に恐怖と痛みしか与えてくれないからだ。


体中を裂かれたのは何度目だろう。


時に焼かれ、時に凍らされ目の前で砕かれた。


何度目かの激痛が腹の中を食い荒らす。ナイフが腹の中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜている。


意識が飛び、再び目を覚ますと体はまた元通り。


彼女の頭の中は幾度も訪れる激痛、すでに自分は独りという強烈な孤独、守りたかった者を守れなかった虚無感、自分の無力に、敵の凶悪さに、目の前の鈴を転がすような笑い声に感じる逃げ出したくなる恐怖、そして相手が飽きるまで死ぬことも許されないという絶望。




それらがぐるぐると頭の中で渦を巻き――――――――――








折れた。








「・・・・・さい」



「きゃははは・・・ふぇ?何か言いましたか?」


「・・・るしてください、もう許して下さいぃ!!謝ります!謝りますからぁ!!ごめんなさい、封印しようとなんかしてごめんなさいぃ!!だから助けてくださいぃ!!!もう痛いのいやです・・・いやぁ・・・・もう死ぬのやだぁ・・・・・ヒック、うぅうぅぅ、ひっくひっ・・・・」



「・・・へぇ~、降参するんですかぁ~」


「は、はいぃ!!何でもしますからもう許して下さい!!」


「ふ~ん、だってさ。六魔将の皆さん?」


「・・・へ?」



ハラリと目隠しが解かれる。


明るくなる視界に、捕らえられた六魔将、その内四人が顔中に絶望と失望を浮かべて転がされている光景が映った。


真っ白の小さな頭骸骨と三メートルくらいの巨大な兜が並べられている。


漆黒の獣人は手足が無惨に変形している。


竜の将軍は極太の鎖に巻かれて跪かされていた。




「うそ・・・やだ、やだやだやだやだやだ・・・・いや・・いやぁあああぁぁぁ!!!!!見ないで!!私を見ないでぇ!!!ちがっ、違う違うの!これはそうじゃなくて!!そうじゃ・・・くて・・」



ぶつぶつと呟く魔王を楽しそうに、愛しそうに撫でるラヴ。


その手にも気づくことなく魔王は顔を覆い「違う違う」と呟き続ける。


(生き返らせて何人か連れてこいとか・・・悪趣味だぜ)


そんな茶番をルリは冷めた目で見る。


その時、六魔将の一人、黒龍ゼファーが口を開いた。



「預言の災厄の首魁、ラヴ、と言ったか・・?」


「何ですか、ロマンスグレーなおじ様」


「頼みがある。」


「聞くだけ聞きますよ?」


「・・・どうか我ら全員の命をもって魔王様だけは助けて貰いたい」


「なっ!?何を言「<サイレス>。静かにしててね~♪」・・・!!」


魔王は口を開き何かを言おうとするがパクパクと口が開閉するだけで音が出てこない。


「・・・(ピーン!)ふむふむそれで?彼女のために命を捧げると?」



ラヴの雰囲気から何かを感じ取ったのか『ラヴァーズ』三人は同時に思った。


(((・・・また何かろくでもないことを)))



「あぁ、そうだ」


「他の皆さんは?魔王様のためにその命を捨てることができますか?」


「もちろんだ!!」


「ーーー!!ーーーーー!!」


「元よりこの命、」

「魔王様に捧げたもの」


巨大な兜とされこうべが言う。


「・・・というわけだ。預言の災厄よ、どうか我らの命をもって魔王様だけは助けてもらえんだろうか」


「ん~、うん!いいですよ!!」



黒龍ゼファーが言う。


「魔王様、きっと貴女様は否定なさるでしょうが、我らにとって国とは魔王様なのです。そして残された民にも魔王様が必要なのです。どうかご無事で」


「・・・!・・・・・!!」


違う、もう民はない!!



黒豹の獣人、ベルルーシカが言う。


「魔王様、貴女様に拾って頂いたご恩、お返しすることなく死ぬことをお許しください」


「・・!・・・・・・!!・・・!!」


いやだ、そう思うなら逃げてくれ!!



巨大な兜、小さな頭蓋骨、テイル夫妻が言う。



前に横薙ぎの竜巻が二人を飲み込んだ。




「長くなりそうだったので省略~♪」


金属が割れるバキバキという音と軽い何かが(・・・)砕ける音がして、竜巻の大蛇が消えると、そこに小さな白と大きな黒の破片が散らかっていた。


わなわなと震えながら横を向くと、


ミンチスがその両腕のミキサーのスクリューブレードをこちらに向けていた。



「でもなかなかいい威力だね。もう一回やって!」


「イエス・マイ・マスター」


がしょんっ!


ミキサーカップがベルルーシカとゼファーに向く。


「――――――!!!」


叫んだ声は音にならない。


ゼファーはもう一度魔王を見、静かに目を閉じた。


ベルルーシカは笑っていた。



スクリューブレードが回転を始める。


「―――――――――――――――――――――!!!!」


空気が掻き回され真空の渦が二筋の道を型どって、風刃の竜巻が二人をぐしゃぐしゃに混ぜてさらっていった。


凄まじい風が魔王の髪を揺らし、一瞬目を覆う。


ビシャッと頬に何かが当たる。


視界が開けるとそこには誰も居なかった。


ばらばらに飛び散った何かが血の海に沈んでいるだけだった。


視界がぐらぐらする。


突拍子もない事態が続き、頭が追いつかない。否、理解を拒否する。



さっきまで確かに目の前に皆が並んでいたのに、いない。


壁を伝い、床を這い、肌を何かが滑る。


気持ち悪い。





突然過ぎる終りにゆっくりと首を振り、何かを呟こうとし続ける彼女の目にはしかし、何も映ってはいない。


そんな彼女の頭に影が差す。


のろのろと上げた目に写ったのは裁きを体現したかのような白いナイフを振り下ろすラヴの姿だった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「うん♪完成っ!」


玉座に魔王、いや、ただの“少女”を磔にしたラヴは上機嫌で振り向いた。


「オイオイ、約束はどうなったんや?」


黒蟻が呆れたように聞くのに対し、ラヴはキョトンとした顔をする。


「へ?ちゃんと殺してませんよ?」


「虫の息だがナ」


「コラ!一寸の虫にも五分の魂ですよ!」


「んなことどうでもいいから早く行こうぜ?もっと戦争のしがいがある奴と戦いによぉ」


そう言うとルリはとっとと背を向けて歩き出した。


「あぁちょっと待って下さい、その前に皆さん質問です!」


「なんや?」


先に行きかけた三人が振り返る。


ラヴは首をひねって腕を組み、いかにも疑問だというポーズで口を開く。


「・・・・・いろいろ楽しくてつい後回しにしてましたが、今日何かおかしくないですか?」


「おかしいって・・・黒蟻に付いた血がいつまで経っても消えず、どころか乾いてこびりつき始めてることか?」


「うんうん」


「それとモ、『モンストロ』のNPCのAIが異常に進化しておリ、まるで生きているみたいだったことカ?」


「そうそう」


「あとは~・・・何やろ。万桁の掛け算が秒間二兆回暗算できるようになったことは絶対(ちゃ)うやろ・・・?」


「あぁ君には期待してないから大じょうってえぇ?!!」


「せやから~えっと~、アカン、思いつかへん」


「・・・黒蟻、3149×4361ハ?」


「13732789や」


「・・・・・・いや待て、確かコイツは理系じゃなかったか」


「ルリ、理系でも無理ですよ」


「あとは何ガ・・・ア、」

「どないしたん?」


「・・・ラヴからあのオーラが出てル」


「・・・うぉマジだ!!」

「いつものことやから気付けへんかった!!」


「へ?オーラ?何それ??」


「お前は気にせんでええんや」

「つまり結局どういうことか何となく理解してるが是非とも否定して欲しいから続けてくれるか?」



「残念ながら否定はできなイ。まだ可能性の段階だが――――――俺達はいわゆるMMORPGトリップを果たしたと思われル」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・一旦全員沈黙(フリーズ)


再起動。



「とりあえず、夢かどうか確認しようぜ(混乱中)」


そう言うとルリは腰に差してある太刀を、懐からは深紅の回転式連発拳銃(リボルバー)を抜く。



「せやな、まずそっからや(混乱中)」


こちらは全身から刃物が次々に飛び出し高速で震動を開始する。


「殺せたら、(混乱中)」


「「いつも通り(混乱中)」」


「夢や(混乱中)」



大☆激☆突!!



そしてラヴとフロストは、


「・・・・・ラヴ、俺ニ、そノ・・・」


「・・・・どうしたの?」


「・・・俺に『自分を思い切り殴れ』と『命令』してくレ!!」


「え、ええぇ!!?何で!?君ってマゾだったっけ!?」


「違ウ!!俺もやりたくないが確認のためダ!!」


「ま、まあいいけど・・・『命令』するんだね?」


「そうダ」


「じゃあ、フロスト、『自分を思い切り殴れ』!!」


途端、少しの間抵抗するように震えたフロストの右腕がまるで別の生き物のようにフロストの顎の辺りを打ち抜いた。


歯車同士が擦れあって嫌な音が出る。



「グ、グハァ・・・!」


「大丈夫、フロスト?」


「モ、問題なイ。真名(まな)の理は有効らしイ。ではもう一ツ。今度は『夢を見ているなら目覚めろ』と命令してくレ」


「これまた変な命令だね」

「頼ム」


「まぁ分かったよ。・・・『夢を見ているなら死ね』」


「オォイ!!?・・・ナ、何ともないナ・・・・よかっタ」


「・・・・じゃあ現実?」


「恐らくナ」



玉座には磔の少女、後ろで凄まじい破壊音、目の前にソレっぽい証拠。


こうしてラヴも一時混乱。


再起動まで、あと一分。



それはこの確認作業の終わりと――――――――――――





世界の終焉への秒読み(カウントダウン)を表していた。



はいっ!!!


というわけで長かった回☆想☆編!!はお終いです。

今まで書いた奴のびっみょーな修正とか設定書いたりなんかしたりするので少し更新が遅れます。


すいません!!



あとひとつ・・・ほんの少し、言い訳させてください。


最初からラヴは基本人形と(ホニャララ)で戦うつもりだったのです。


で、意気揚々と書き上げ、推敲していたときにハタと気づきました。


「AKUMAじゃねぇか!!」


で、でも変身とかオ腹スイタとかチョコザイナとか僕レベル(ふぉー)とか隠された意味とかはないです!!


あくまでただの人形です!!


・・・えーちょっとご意見ご感想をお待ちしております。


場合によっては変更するかも。


12月3日追記/とくに無いようですのでこれで行かせていただきます。

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