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預言の災厄より愛をこめて

あと二話で回想編終了とか言いましたが無理でした、すいません!!


あ、あとちょっとですから!!


ホントですから!!!


あ、あと前回の最後にヒートに尻尾着けるの忘れてましたので修正します!!

ここは城。

の地獄と化した城壁内部。

の城の大扉の中。

から進んだ四階。

その廊下。



「ハハハハハハ!!!逃げろ逃げロ!!焼け死にたくなかったら死ぬ気で逃げロ!!」


Dr.フロスト改めMr.ヒートは上機嫌で尻尾を揺らしながら歩く。


その侵攻方向は行き止まり。だが追い詰められた生き残りが必死の抵抗をしていた。

七体のガーゴイルが目から口から翼からと光線を放つ。

その後ろでは弩をつがえたゴブリン弓兵隊が家具や自分達は着ることができないような鎧を積み上げたバリケードを形成し、矢を射掛ける。

その傍らでゴブリン・メイジやリッチ、邪妖精達が魔法を放つ。

リザードマンやファントムナイトは武器や盾を全力で投げつける。


その全てをことごとく無視し、ヒートはただ歩く。


光線は当たっても欠片も熱くない。雷の魔法は威力が足りず、土の魔法による土壁は瞬く間に溶け落ちる。氷の魔法は焼け石に水だし、火の魔法は言わずもがな。それ以外は灼熱の壁に阻まれ届きすらしない。


Mr.ヒートの常時発動スキル〈プロミネンス・フィールド〉。


対抗手段が無ければ最大半径500メートル圏内は焼き払われ、200メートル圏内は溶け崩れ、5メートル圏内は蒸発する。


効果半径はヒートによって調節できるが、それは『圧縮』という形を取るためそれはそのまま絶対無敵の鎧と化す。




「〈アイテムボックス〉。ハハッ!!あったぞコレダ」


白い光が宙に集まり、パンッと弾けると、一枚の歯車がヒートの手のひらに落ちる。


「コイツは俺のお気に入りでナ。本気さえ出さなければこの熱でも溶けン。―――まぁもちろン、ひどい高熱を溜め込める(・・・・・)という意味だがナ」


ドロドロの仮面がニィと笑う。


ヒートは歯車をグッとにぎり、野球選手のように腰、肩を捻り踏み込むように投げつける!!


超高熱エネルギーの塊はその余波で廊下を焼き払いながら直進し、ガーゴイルとバリケードを易々と突き破っていった。


射線上の近くにいた(つまり廊下全て)生物はその一瞬だけで燃え上がり、かろうじて生き延びたのはガーゴイルやファントムナイトのみ。


「ハハハハハハ!!!生き延びた奴がいたカ!ならコレはドウダ!!」



ヒートはカパァという音が聴こえそうなほど、大口を開く。


「スゥーーーーーーーーーーーッ・・・・・」


大きく息を吸い、腹に力を込め、ゲロ吐くイメージで―――――――――



「グルアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」



廊下を埋め尽くす程の極太光線を吐き出す!!


その純白の光はしかし、暖かさなど欠片もない、まさに焼き殺すという冷酷な殺意の塊である。


一切の抵抗をする間もなく全てが蒸発し、後には跡形もなく蒸発し溶け崩れた廊下のみ。


床や壁の赤熱した部分が蝋燭代わりに暗闇を薄く照らす。


「ハハッ!!ハハハハァアハハハハハハァ!!!しまったナァ、ついヤり過ぎてしまっタ。やはりこの状態は調節がきかン。外まで貫いてしまっタ。・・・さテ、そろそろ俺も上に行くとしよウ」


ヒートが夜空のようなその翼を広げると、白い斑点がボンヤリと光りだし、羽ばたいてもいないのにふわりと浮く。


ゆっくりと天井に手を当て、これも熔かして上へと進んでいった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






とある一室の壁。


キンッ!!という硬質の音がし、一拍置いて壁がガラガラと崩れ出す。


崩れた壁を踏み越えて血まみれの黒蟻が現れる。


「んーっと?ココどこや?」


肩に担いだ血濡れの刀をぷらぷらさせながらあたりを見ようとすると、



その崩れた壁の向かい側の壁が爆散した。


すさまじい轟音とともに吹き飛んだ。



「開通~ってな!」



土煙の向こうから無反動ロケット砲を懐にしまうルリが歩いてくる。


二人はお互いに近づき、


「おっ、黒蟻!ラヴ知らねぇか?」


「いや?知らへんで?」


「チッ・・・役に立たねぇな」


「ひどない?ソレって。あぁそれよりギルマス殺した?」


「いや、見つけてねぇ。・・・なんか熱くねェ?」


「確かに・・・・下や!!」



地を蹴ってその場を離れる。


二人が立っていた場所がどんどん真っ赤に赤熱し、その熱で白く光り出したかと思うと、今度は沸騰しドロドロに溶け、そこからゆっくりとMr.ヒートが浮いてくる。


バサリと翼を広げ、一度空に浮くと、床に降り立つ。


「フゥ・・・ここはどこダ?」


「ってあっつ!?くぉらヒート!とっとと温度下げるか範囲狭めんかい!!」


「お前らカ。それは無理な相談だナ。折角ボスに許可を貰ったのダ、しばらくフロストはお休みダ」


「だったら圧縮して向き変えやがれ!」


「・・・・・・チッ」


露骨に嫌そうに溶けた仮面を歪ませた後、ヒートの周りが揺らめきだす。


空気の層が歪むほどの高温がヒートを包み込むが、足元だけは燃えもせず熔けてもいない。

尻尾をユラリと振って「これでいいカ?」とヒートは二人を見て、ついでにコーヒーをあおる。


「なんで嫌そうやねん・・・」


「マジヒートって扱いにくいぜ」


「ラヴの言うことは聞くんやけどな・・・」


「アレは言うこと聞いてるんじゃなくて洗脳されてンだよ」


「・・・・・・俺らも似たようなもんやろ」


「やめようぜこの話・・・」


「そろそろいいかな?」


「あ゛?」「は?」「ム?」



三人は声のした方を向く。




三人が集まったそこはどうやら玉座の間だったらしい。



黒く、禍々しい飾り(背もたれに捻れた角のような飾りがあったり)のついた玉座に、2メートルはある真紅の鎧騎士が座っていた。

頭にはまたも漆黒の王冠が兜の上から嵌まっている。


顔は兜に阻まれてわからない。


さらに朱いグネグネとした線が呪いのように全体を左右対称に走り回っている。




「やっとこっちを見たな無礼者ども・・・さて、貴様たちが預言の災厄共か?」



一瞬、ほんの一瞬彼らは仮面の視線を交差させた。



『ラヴァーズ』は総じてノリがいい。


突然振られたネタでも大抵ノる。


何だかんだ言いながらラヴの提案通り仮面つけたり名乗り上げたりするのがいい例だ。


相手の振ってきたそれが仮にネタでもマジでも実は自分たちと関係なくてもとりあえず話を合わせ、滅茶苦茶に引っ掻き回しイイトコ取りしてさよならする。


ので今回も


「ぎゃはははは!!そうとも俺達が『預言の災厄』だ!お前がここの城主かぁ!?」


ノリノリだ。


悪役っぽいポーズを取り、二人が後ろに控える。


僅かなアイコンタクトで意思を合わせ、『襲来!預言の災厄~in魔王城編』を組み立てた。



「くっ・・・やはりか・・。」


かかった。


預言云々はさっぱりだが、どうやら今回は本当に何らかの情報を得ていたらしい。


こちとら戦、争い何でもござれの『歩く戦争』。だから腹の探り合いの“政争”も余裕だ。


相手の嘘を見抜くのはもともと得意だし。


あとはあの激痛の正体だが・・・そこだけ警戒しとくか。


ま、とりあえず



「おいおいシカトしてんじゃねえぞ?」



ぞ?と同時にAKが火を吹く。


薬莢を転がしながら放たれた鉛弾はしかし、玉座に座ったままのそいつの前に立ち上った闇のカーテンによって止められた。


そいつはゆっくりとふんぞり返ると、偉そうな口調で話し出した。



「急かさないでもらいたいな。・・・そうとも我こそがこの城の城主、第94代目魔王クーゲルン・バーン・ゴスペルグ・ディザイジスだ。予言の災厄共よ、遠路遥々ご苦労なことだな。・・・ところで貴様達の首魁はお前か?」


「俺が?んな訳ねぇだろ。もうすぐ会えるんじゃねぇ?・・・ま、それまでテメェが生きてりゃな」



片手にAK、片手にガトリングガンを吐き出す(・・・・)


その銃口を魔王に向ける。


「ふん・・・面白い。ならば貴様らの死体を飾って待つとしよう。」


ゆっくりと立ち上がり、真紅の鎧に覆われた手を前にかざす。


漆黒の炎が床から燃え上がり、それが消えると一振りの剣が浮いていた。


燃え上がった炎と同じ色の漆黒の剣。柄も刃も全て滑らかな黒に覆われ、更に魔王から闇のオーラが立ち上ぼり剣に宿る。



魔王はそれを正眼に構え、頭を真横から蹴り抜かれた。



「ぐほぁ!?」


頸が千切れそうな衝撃が側頭部を襲い、ゴロゴロと不様に転がされる。


それでも剣だけは落とさずに立ち上がる。



「油断大敵やなぁ?クハハハハ!!」


玉座の辺りから声が聞こえたかと思うと、空気から滲み出るように黒蟻が現れた。


玉座の手摺にガッと足をかけてニヤリと笑っている。


魔王がちらりと横に目を向けると、そこには同じ姿の黒蟻がいる。


その黒蟻もニヤリと笑うと、ボヒュンッ!!という音ともに煙となって消えた。



「<忍法・影分身>や。定番やな、クハハハ!!」


楽しそうに笑う蟻は奇妙な杖を持つおとこ(・・・)にこっちを向いたまま呼びかける。



「ルリ!!作戦は何や!?」


「ラヴが来るまで活かさず殺さずなぶりやがれ!!」


「了解しタ、指揮官殿?」


「ぜってぇ殺すなよ?」


「手元狂ったらゴメンなぁ?クハハハハハ!!!」



左手で逆手に構えた紅く煌めく刀が超振動を起こし耳障りな高音が響く。


真紅の粒子が舞う。よくよく見れば刀身についた血が刀の発する妖気を反射しながら散っているのだ。


そんなものを構える黒蟻は黒い忍び装束と相まって死神のよう。


黒蟻が床を蹴り込み黒い風となって突っ込む。


腰をかがめて姿勢を低くし、黒い残像と紅い軌跡を残して魔王に肉薄する!!


対し魔王は剣を構え――――――手の平から漆黒に燃え盛る炎弾を撃ち出す。


かなり近づいてから放たれた黒炎の大玉は黒蟻を覆って余りある。


だが、


「甘いわ!!」


それを軽々と切り裂き、少しもスピードを落とさずに疾り寄る!!



体を捻り回転するように刀の腹で魔王の剣を殴り付けた。



「グッ!!」


両腕を使って魔剣を支える魔王。


自分より若干強い力に兜の奥から苦悶の声が漏れる。


その苦悶の声を聞いた黒蟻はニヤリと犬歯を光らせ、



「ほぉ、出力5%やけど受けれるもんやねんな。せやったら10パーや」


「!!」



突然黒蟻の力が倍になる。

グイグイと刀の腹に手を添え押しかかり


「ここで蹴りや」


グッと突き放しながら回し蹴りを放つ。


「かっは!!」


着込んだ鎧もろとも紙のように軽々と吹き飛んだ。



魔剣を床に突き刺してガリガリと衝撃を殺し、止まった所に


「ビンゴォ!!」


着地地点を予測、廻り込んだ銃弾の嵐が横殴りに突っ込んでくる


「ぐうっ!!」


それを阻むように闇のオーラが立ち上り、次々と弾丸を飲み込む。


しかしさらに


「俺もいるゾ!!」


その右横から灼熱の拳が突っ込んでくる。


咄嗟に左手にある魔剣の切っ先を、体を捻るように突き出す。


拳と魔剣が真正面からぶつかり―――魔剣がグニャリと曲がった。

同時に鎧に包まれた持ち手にまで伝わる熱。


手を離して後ろに滑るように動いて距離を取る。


「〈デッドリーストーム〉×6!!」

「マジカル★忍法・突撃破裏剣(ツッコミハリケン)!!」


すかさずロケット弾に手裏剣が雨霰と飛んでくる。


「ぐう、ぐ、うぅぐ!!」


『やみのころも』を全力で展開し、今はまだ耐えきれているがガリガリと魔力が減っているのが分かる。


(耐えねば・・・奴等の首魁が来るまで耐えねば!)


「あのオーラが防いでんねやな」

「物理攻撃に対する完全無効化か・・・『エンシェント』クラス以上のアイテムじゃねえと無理だな。」

「だが流石に『オリジン』クラスではあるまイ。限界はあるだろうし弱点もあるだろウ」

「だな。黒蟻、レーザーブレード、ヒート、熱波使え。加減はしろよ」

「了解、マジカル★忍法・ネイルアート!!」

「非物理攻撃カ、了解しタ」


黒蟻がポシェットに刀をずるずると仕舞い、ピンと伸ばした十の爪から白銀に輝くレーザーブレードが伸びる。


ヒートの畳まれていた夜天の翼がバサリと広げられ業熱を放ち始める。


「で、俺はこれだ」


両袖から出ていた計六つのバズーカを仕舞い、代わりに一メートルより少し長い、白い四角柱が出てくる。

キュウン、という音を出して中ほどから四つに分かれ、パリパリと青白い電光を放つ。


「れ~るが~ん♪(新しい方の青狸の声で)」


定番の掛け声とともに銃口を魔王に向け、


「・・を×4だ」


さらに三つのレールガンが袖から飛び出す。



「〈メガ・ジゴワット〉装填っと」

「こんだけやったら死ねへん?」

「よく考えたら殺して生き返らせた方が楽だ」

「確かニ」

「そんじゃあテメェラ、殺せ!!」

「「了解!!」」

「やめなさい!!」



ルリとヒートの攻撃が魔王に迫る途中で掻き消え、駆け出そうとした黒蟻は何かに足を捕られたかのようにステーンと転ぶ。


ついでに金ダライが三人の頭にカーンと当たって爆発した。


ちゅっどーんした。


一瞬だったがタライの上には『DANGER』と書かれたアニメ的爆弾が乗っていた。



「・・・なんだ?」


魔王がそう言ってしまうのも無理はなかった。


もうもうと巻き上がる黒煙が晴れ、何事もなくヒートとルリが姿を現す。


黒蟻だけは自分のスピードで痛い目を見ていたが、爆風は何のダメージにもなっていなかった。



そんな三人の後ろ、正面の扉を開け、堂々とラヴが登場した。




「やれやれ全く何やってんのさ、みんなして・・・弱いもの虐めとか、私は感心しませんよ?」


「やっと来やがったか」

「やれやレ、しばらく暇だナ・・・ム?戻ったナ」

「・・・・ぶっ殺す」


ルリは武器をしまい、Mr.ヒートはDr.フロストに戻り、黒蟻のお面の顎がガチガチと開閉する。


と、黒蟻がフッと消え、


ギャリィイィン!!!



ラヴが不快な金属音とともに両断される。


先程とは比べ物にならない超加速で突っ込みラヴを切り裂いた黒蟻はしかし、顔をしかめる。



「チッ・・・人形(ダミー)か」


「ピンポーン!」


切り飛ばされた上半身だけでラヴは笑う


「という訳で〈起爆〉!」


目と口から光が迸り、轟音を挙げて爆発した。


ルリとフロストはラヴが斬られた瞬間から既に動き始めていた。


ルリは体から5メートル四方の防弾ガラスを吐き出しその影から少し離れ、フロストは〈凍結結界〉を張る。


二人とも爆風はなんとかなるが絶対何かセットで飛んでくる。




その予想通り爆風と共に数十本もの黒針が飛来してきた。



彼らの張る壁に飛来した黒い針がほんの少し、ミリにも満たないほど刺さり――――瞬間的に伸びて反対側まで貫通して止まる。


黒蟻が居たところには7本の黒針に貫かれた丸太が転がっている。



だがただ一人、魔王だけはその鎧を11本の黒針に貫かれていた。


「がっ・・!ばか・・・なぁ」


穿たれた孔から体を覆う全身鎧(フルプレートメイル)に亀裂が走り――――



ピシ・・・ビシビシ・・パキンッ!!



粉々に砕け散る。


兜に嵌まっていた王冠もろとも。



割れた鎧がガランガランと落ちていき、砕けた宝石はキラキラと弾け、包みこんでいた華奢なその体が晒される。


サラサラと流れる、目も眩むような黄金の髪は腰まであり、幼さの残る顔は可愛いと言うよりかは美しいと表すべき美貌だ。


全体的にほっそりとしており、月並みな言葉だがお人形のようだ。


ギリギリと歯を食い縛って身体中に刺さった針を力任せに抜いていなければ。


ズチュルッという不快な音ともに針が引き抜かれ、少女は苦悶の顔をあげる。


そこには、絶望が群れをなしていた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






どろりと鉛のように重い汗が流れる。


最初に来た三人、そいつらは圧倒的、いや絶対的強者としての圧力を放っていた。



一目で勝てないと判断できた。

一人にすら勝てないのにそれが三人。さらにコイツらを纏める首魁がいるというのだから何かの冗談かと思ってしまった。


いきすぎた現実は夢に似る。


やはり預言者の忠告通り、逃げればよかったのか。



・・・いや、私は所詮『魔王』だ。


『魔皇』の命に背けば民はどこからも受け入れられず、野垂れ死にするだろう。


だがろくに説明もしないで残した兵卒達には悪いことをした。


無為に殺される寄せ餌として残されたと知ったら彼等は私を呪うだろう。


避けられぬ“死”へついてきてくれ、最期まで希望を捨てなかった六魔将の面々。


彼等には感謝しても仕切れない。



あとは私が最後の発動を行えばいい。


発動すれば私は―――消える。


魂ごと分解され魔法の礎にされるだろう。


だがそれは私への罰だ。


民である兵を捨て石にし、家族ともいえる仲間を見殺しにした、私への。



だが問題は、その首魁が来るまで生き残れるか?ということだ。


一応私はここの城主だ。


だから恐らく奴らの首魁に引き合わされるだろう。


だが相手は預言の災厄。

世界中に破壊と理不尽をばらまくとされる存在。


一城主を気にするだろうか?


いやそもそも常識が通じるのか?



と心配していたがどうやら首魁が来るまでなぶるつもりのようだ。



・・・下種どもめ。


しかし悔しいかな、実力差ははっきりし過ぎている。


現に私は防戦一方。


我が王国に代々伝わる『やみのころも』が無ければすぐに殺されていただろう。

だが魔力が凄まじい勢いで消費されていく。


間に合うだろうか・・?



いや、無理なようだ。


明らかに先程とは違う雰囲気だ。


一人は指先すべてから凄まじいエネルギーを放つ魔剣を、一人は太陽のごとき熱を放つ翼を、最後の一人は神の武器と見違うような純白の雷光放つ杖|(?)を。



・・・意味がわからん、お伽噺かこれは。


ていうか殺す気だろう、あれは。


ええい!!


確実を期すために首魁が来るまで待ちたかったが、発動させるか!?


と思ってたら今度は何だ!?


誰だコイツは!?


それは至って普通に現れた。


壁を切ったわけでも、吹き飛ばしたわけでも、ましてや溶かしたわけでもない。


ただ扉を開けただけ。



最初に思ったことは『何か普通』だ。


確かに白黒の奇抜な恰好だがほかの三人も似たようなものだ。



そして私は次の瞬間目を疑う。


蟻が一瞬にしてそいつを真っ二つにしたのだ!!


それだけでも意味が分からなかったが更に状況は意味不明になる。



斬り飛ばされたそいつが笑い、爆発し、体中に走る激痛。


視界が滲み、鎧が割れ、無敵の殻から引きずり出される。


苦悶とともに体から針を抜く。



魔族の強靭な肉体で体を再生しながら顔を挙げると、天井からさっきの蟻がスタッと降り立つ。



そして、そいつが出てきた。


何もない空間から、まるでそこに入り口でもあるかのように。


空間を水面のごとく揺らして出てきた。



それだけで、わかった。


それだけで確信した。



おぞましいくらい神々しい光。


涙が零れるくらい美しい闇。


意味不明にちぐはぐででたらめなこの存在感。



こいつが、こいつこそが『預言の災厄』だ!!




「あぁ~ん?声のわりに随分可愛らしいじゃねぇか」

「オッサンと言うべきプレイヤーも居たからもっと歳いってるかと思ったガ・・・どうでもいいナ」

「いやそれより明らかに鎧のサイズに合わないでしょ、アレ」

「クハッ!クハハッ!!人間、いや魔族か!?どっちでもええけど俺殺りたい!!」


和気あいあいと、およそ今から命を殺そうとしているようには聞こえない、その軽さ(・・)に自分たちとは決定的に何かが違うと思い知らされる。



今、自分を支配するのは恐怖、そして――――



――――――――歓喜だ!!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





突然魔王|(?)が立ち上がる



「ふ、ふははははは!!!この時を!この時を待っていた!!」



魔王が腕を横に振るう。


硝子が砕け散るような音と共に床いっぱいに耀ける魔方陣が敷かれる。

大円の周りを小円が六つ、さらに小さな円が数十、目まぐるしく回る。

円は床から壁へ天井へ移動し数を増やす。

その円一つ一つに力ある呪文が書かれている。

高速で動くそれらは複雑な軌跡を描いて更に陣を構成していく。



「これは・・・!」


「お前達用に開発された封印結界だ!もう我ですら止められぬ!!」


「な、何だって!!」


ラヴの焦りを含んだ声が響き渡る。



「さぁ!預言の災厄共よ!!お前達は未来永劫ここに封じられるのだ!!」


「な、何だってぇー!!」


ラヴの驚愕に彩られた声がひび「おい、」


ルリが酷く冷たい声音で言う。


「何です!?早く何とかしないと僕た「いやいやいいから、そういうのいいから。そろそろメンドイ」・・・えぇー、空気読みましょうよぉー」



ラヴがいかにも「やれやれ仕方ないなぁー」的に肩をすくめ、スキルを発動させる。



大嘘憑(オールフィクショ)・・・もとい、〈万物解除(オールキャンセラー)〉!!」


瞬間、部屋を覆い、城を取り囲んでいた魔方陣の澄んだ発光音に酷い雑音(ノイズ)が、プラスチックを割るような、黒板をガリガリと力の限り引っ掻くような音が混じり、やがてそれしか聴こえなくなる。


目まぐるしく動いていた円陣は見えない手に捕まったかのようにググ、グッ・・・と止まる。


そして突然、やかましい雑音がピタッと終わり、


最後はその美しい光が、不吉な静寂の中、白と、黒の、モノクロに侵食され―――――――


ぐずり、ぐずりと泡が弾けるように消えた。



「は・・・え・・?」


ぽかんと魔王は周りを見渡す。

さっきまで聖なる封印を構築していた魔方陣は消え失せ、巻き戻したかのように元通り、蝋燭の魔光が部屋を薄暗く照らしていた。



「・・な・・・そんなばかな!?あり得ない!!なぜ、何故発動しない!!?」


「ん~?それはね~、僕のジョブが〈トリックスター〉だからさ!!」


ラヴは、まるで舞台の上に居るかのように自らの胸に手を当て、高らかに謳う。


「いろいろとトリッキーなことのできる〈トリックスター〉だけど、その最たる特長は〈手品(トリック)〉や〈絡繰(ギミック)〉や〈(トラップ)〉に関することなら何でもできるってことかな?」


「何を・・・何を言っている!!?何が言いたいのだ!!!!」


「だからぁ、」


ラヴは仮面の下で微笑む。


右手の薬指に嵌めた『ラヴァーズ』のマークにクリエイトした『アトロウシス・ラヴ』というルビーのついた指輪をキラリと光らせ、邪悪に、極悪に微笑む。



「無駄な努力ご苦労様(笑)ってこと♡」



「ふ、ふざ・・ふざけるなぁあああ!!!」


こちらを完全に嘗めきった態度に、変わらず此方をバカにしきった声に、言い返せない自分に、魔王は目の前が真っ赤に染まる。


全ての魔力を右腕にのみ込めて走る。


あの刃が、熱が、光線が邪魔しようとコイツだけは!!


腕一本になろうとコイツだけは!!!



「絶対に、殺す!!」





全力で、生まれてきて初めて我を忘れて、後先考えずに特攻した魔王は、



「うわぁー助けてーグングニルのヤリー!!(棒読み)」



ラヴの周りの空間から飛び出した、幾本もの毒々しい槍に全身を貫かれ、その勢いで後ろに吹き飛び、玉座に磔にされた。







作者は感想をガソリンに小説を書きます。


・・・感想いっぱい欲しいです。

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