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城壁制圧完了だゼ!!に愛をこめて

超展開☆な部分は無視してくださって結構です。


マジで意味ないんで。

「ギャハハハハハ!! 見ろ! 人がゴミだ!!」


ルリはキーボードをバンバン叩きながら爆笑する。


画面には焼け野原に逃げ回るモンスター、追いかける兵士たち。


正に虐殺だ。


それを見ながらルリは笑い転げる。



そして、



「……あーツマンネ」

いきなり部屋の空気が凍った。


「超ツマンネェ、カス過ぎんだろ」


その声はゾッとするほど冷たく、仮面の奥の瞳は道端の石でも見るかのよう。


(相変わらず無意味で無価値で無意義なカスどもです。あまりにも弱いし、動きも単調。防衛の仕方もわからないのですか。もし“プレイヤーはいなかった”なんて言い訳する気ならなおさらガッカリです。城内なら安全だとでも?自爆特攻が効くってことは破壊不能オブジェではないということでしょう?殺ろうと思えばこの艦を降ろすだけでもいいんですよ?彼我の戦力差もわからないですか?残された道は降伏、撤退の二択しかないとなぜわからないのでしょう?)



「……あ~やっぱ戦争するなら『ラグナロク』の旦那がよかったぜ。さ、ラヴの悔しがる顔を見に行くか、ギャハハハ。」


彼女は、またも唐突に雰囲気を戻し、ケタケタと笑いながらコックピットから出ていった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





さて、今日は俺の話を少ししよう。

俺はある武術道場の跡取り娘として生まれた。

そこは最強の戦士を造るという妄執に囚われたカスの巣窟だ。

そうは言っても幼少の頃からの地獄の訓練と、妖怪やら荒神やら凶悪犯罪者やらの処分とかで、それなりに修羅場をくぐったことがある。


おかげで野生の勘的なものが鍛えられた。


それにまぁ、言ってしまえば俺天才だし。 ぶっちゃけリアルでも俺ビルくらい真っ二つにできるし。てか一人で中級神くらい殺せるし。

つまりジジイの妄想は既に叶ってるのさ。気づいてないがね。

まぁそれは好都合。ジジイは正義の味方(笑)側だからな。いづれラヴの―――――月光(つきひ)の邪魔になる。だからその時こそ、ジジイを、あのカスどもを踏み潰す。ククク、今から楽しみだ。



おっと、話が逸れたな。


まぁ俺の隠れたムダ設定だ。日の目を見ることなんかねぇよ。


長々と語ったが、つまり結局何が言いたいのかというとだ。




この扉を

開 け た く ね ぇ !!


ルリの前には内から外に爆発したかのような丸い穴の空いた扉がある。

その穴から中の惨劇がチラ見できる。


なんだこの嫌な予感は!?思わずアッチの世界に行きかけたぜ!?この扉を開けたら確実にヤバい!何かわからないけど何かされる気がする!!

俺は別にルール違反してないよな!?アイツにお仕置きだべぇ、な目に合わされる覚えはねぇぜ!?


……いやいや落ち着けオレ。俺はルール違反はしてない。だから攻撃されない。次に俺の防御力は絶対。不意討ちさえ気を付ければ“防御”できる。

さっと中に入り、攻撃を防いで、こちらの正当性を主張する。アイツはアレで結構説得が効く。畳み掛ければなんとかなる!



覚悟を決め、いざ中に入らんと一歩足を踏み出し――――






「あ♡!おかえりなさい♡」


至って普通に挨拶された。


「お、おう。ちゃんと言われた通りに制圧してきたぜ。」


「フフフ、さすがルリ、いい子ですね!頭を撫でてあげます♡」


「お、おいよせよ!」


そうはいいながらもルリはまんざらでもないのか、されるがままに仮面を剥がされ、頭をナデナデされた。


先程の嫌な予感は気のせいか?


そう思っていると、



「じゃ、ご褒美です♡」



そうきたか!!


「て、〈てモゴァっ!?」


スキルを発動させる前に口の中に手を突っ込まれ、指が舌に絡みつく。

コイツ指細いよなぁなんて場違いなことを思いながら、着物の袖からデザートイーグルを取り(プシュッ)しそれを取り落とす。


「ひゃえ?」


体から力が抜ける。カクンと膝から崩れ落ち、ラヴに受け止められる。


ガシャンと銃の落ちる音が耳に響く。


「ぁ……っ…」


声がでない。いや顎や舌からも力が抜けているのだ。



ラヴは相変わらず無邪気な笑顔で 。


「さっすがキャッシュが持ってくる薬は効果が違うなあ。こんな速効性なんて」


その手に握られているのは空の注射器。


(麻痺系の毒か!くそっ、動けよこのぉ!!)



わずかに動く体でのろのろと懐の状態回復ポーションに手を伸ばす。


が、それをラヴはぺしっと払い、さっさと回復薬を抜いてしまった。


動かない口で説得を試みる。


「……っか……ぅ?」

「ん?なぜこんなことをって?ん~、君が大好きだから?」


なるほど、話が通じない。どこの世界に恋人に薬をもるやつがい……ここにいるな。


脱出は……無理っぽい。


「ていうかね、ぶっちゃけ僕限界なんです。オモチャはすぐ壊れたし君とのHは邪魔されるし二人はすぐダウンするし君はカッコいいし可愛いしイケテルし犯したいし」


あ、やばい。目がイッちゃってる。


目だけがぐるぐると濁り、腹の中の欲望が覗けるような、むしろ欲望そのものがこっちを視ているような。


「これだけオアズケ食らったらもう我慢できませんよぉ♡」


ギィと無邪気な笑顔を歪めて彼は嗤う。


ひょいとお姫様だっこされる。


そのままコツコツと足音を響かせて、ルリを抱いてブリッジの外へ。


その間ルリは、


(脱出、無理。反撃、したくない。防御、する意味がない。……ハァ、もういっかぁ。何だかんだ言って、その、俺も、嫌いじゃねぇし)


ぐったりとしたまま、少し熱っぽい目をラヴに向けていた。



ラヴとルリは完全に二人の世界に行ってしまい、その間黒蟻とフロストは忘れられていた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





ここはどっかの城。で、玉座の間。の、玉座前の広いとこの床。



スクリーンセーバーがブチっと消える。


黒蟻が首をかしげる。



「ん?続き無いん?」

「ねぇよボケ!!」

「あ♡、見ます?」

「見せるなよ?」


ゴリッとラヴの頭にリボルバーを突き付けるルリ。


「え、えへへ(汗)」


「てかよぉ・・・アレ、いいのか?」


ルリはそう言いながらもう片方の腕でP99を連射し、這って移動していた黄金の髪の少女を撃ち抜いた。


「っ!!あ、ああああああ!!!」


綺麗に両手足を撃ち抜かれれ悲鳴を上げる少女。


「あ♡、意識を取り戻したんですね!よかった!!」


ラヴがホッとした顔で彼女に近づく。


「ひっ!!」


だらだらと血を流す手足を引きずり、必死に距離を取ろうとする少女。


そんな彼女にラヴはつかつかと近づき、スッとしゃがんで目線を合わせる。


優しく微笑み、そっと乱れた黄金の髪を持ち上げ、耳にかける。


だが少女はガタガタと震えながらその腕を見る。

一瞬でも目を離せば何かをされると恐怖する。


「あ~あ、逃げようとしてたから折れてねぇのかと思ったのに、ツマンネェ」

「そら無理やで、あそこまで酷い…てか惨いことされたんや。ブチ折れとるやろ」

「しかしあそこまで啖呵を切ってたのニ、呆気ないものダ。俺でももう少し抵抗したゾ」

「だからそれは言ったんなって。少なくとも逃げる気概は残ってたんやろ?」

「ハイハイ、みんな酷いこと言わない!彼女が怯えてるでしょう?」


軽く手を叩き注目を集めるラヴ。


「それよりみんな、スクリーンセーバー出して!最後の確認するよ!」


そういうとラヴはひょいと少女を、脇の下に手を入れて持ち上げ、玉座の前に連れてきて、自分の膝の上に座らせた。


やれやれと三人が準備を始める。


震える少女に優しく、安心させるように、耳元でラヴは囁く。



「さぁ、君の仲間がいかに勇敢に戦ったか、一緒に見ましょうか♡……魔王様(・・・)?」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ここは城。

の地獄と化した城壁内部。

の城の大扉の前。



空から『ラヴァーズ』の面々が降りてくる。



踵から轟々と青白い炎を噴出しながらゆっくりと降りてくる黒蟻。

その顔|(といっても顔の下半分だが)はどこか憔悴しているように見える。

「あ~死ぬかと思たで」



ドオォン!!と明らかに異常なほどの音を出して地面に落下したのはDr.フロスト。

陥没してクレーター化したところから普通に歩いて出てきた彼は、どことなくグッタリしている。

「死ぬかと思っタ」



着物の両袖から飛び出した太いジェットブースターでバランスを取りながら降下するルリ。

スタンと地に降りるとガションとひっこめる。と、少したたらを踏んだ。すこしやつれたような雰囲気は気のせいではないだろう。

「……死にかけた」




「〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪」


適当な、行き当たりばったりな鼻歌をあげながら、純白の翼を広げて降り立つラヴ。

すごく……ツヤツヤしてます……。

「死ぬかと思った」

「「「嘘つけ(ケ)!!」」」



三人が即効突っ込みを入れる。


対してラヴはキョトン?とした顔をしている。



「……テメェは……もういいつかれた。」「突かれた?」

「殺す!!」

「おや?続きのお誘いですか?」

「ッ!!ーーーッ!!!クソッ!!」

「俺何で生きとんかわからへん……」

「俺もダ。あの野郎、ご丁寧なことに爆弾に貫通針仕込んでタ」

「まぁまぁ皆さん過ぎたことは忘れてwww」

「「「…………」」」


パンパンと手を叩き、話題を変えるラヴに呆れ諦め達観した三人。


「さ、フロスト。頼んだよ♡」


いつも通り無邪気な笑顔のルリに対し、


「……まぁいイ、任せロ」


フロストは重厚な黒鉄の扉に近付くと、左手をトンと数秒間当て、腰を捻り右手を振りかぶってガシャアン!!と扉を叩き割った。


超低温によって冷やされ、脆くなった鉄はガラスのように砕け散りガラガラと音を立てて崩れていく。


「脆い扉だナ」

「さっすがフロスト、いい仕事してますね!」

「お!ラヴ、お出迎えだぜ!!」


扉の中には隊列を組み、大きく反った三日月刀と体を覆えるほど大きな丸盾を構えたリザードマン達が目の前の光景に唖然としている。ラヴァーズの面々は知らなかったが、この扉も魔法によって強化され、呪いまでかけられていたのだ。

それかあっさりと破壊され、今まさに敵が侵入しようとしている。


と、ここまで至った彼らは正気を取り戻し、


「「「「シャアアアアァァァァァァ!!!」」」」


一斉に飛び出してきた。

それを見ながらラヴァーズの面々は、


「ふム、SRを喚ぶのは後にするカ」

「とりあえず突っ込むで?全部切り裂いてええやんなぁ?」

「俺の射線に入らなけりゃな」

「私のナイフにもね♡」

「当てへん努力は?」

「当たらない努力をして♡」

「当てる努力はしてやるぜ?」

「……流れ手裏剣に気ィつけや」

「おい来たゾ」


言うや否やフロストは手近のリザードマンをぶん殴り、何十メートルもぶっ飛ばし、その線路上の敵も巻き込みながら壁に叩きつけた。

しかもその拳圧の余波で氷の道ができる。


「相変わらず滅茶苦茶ですねぇ。それ、〈種族スキル〉だけでしょう?」

「『狂科学者』は生産職だゾ、当然だろウ」

「サブスキルは?」

「サブスキルも全部生産系ダ」


二人の会話の隙を突いて周り混んできたリザードマンが丸盾で体ごと突進をかます。


そのまま何もない空間にユラリと消えていった。

一瞬の空白の後、リザードマンが消えた辺りの空間からダラダラと血が流れ出した。


「一名様ごあんな~い♡」

「相変わらず無駄にエグいナ。一体どれだけ張ってる(・・・・)んダ?巻き込まれてはたまらン」

「ん~、たくさん?あ、大丈夫!開閉は私の自在だから」

「ならいイ。ム、もう我々の出番は無いナ」

「え?あっホントですね」


二人の視線の先には、両袖からギッチリと、まるで銃の花束のようになったでできたなモノを振り回し、竜巻のように暴れまわるルリと、身体中から刃物を生やし、斬り上げ斬りつけ斬り下ろし、一太刀で真っ二つになった敵もわざわざバラバラにして、存分にはしゃぎまわる黒蟻の姿。


「うふふ、楽しそうですね」

「この間にSRを喚んでおこウ」


そう言うとフロストは左手首に嵌めた腕輪型の端末にスイッチを入れた。


「来イ!テンパランスⅡ!!」



……。


…………。


………………。


……………………。




「……長いね」

「『モンストロ』が巨大すぎるのダ」


と、反重力装置の特徴的な、反響するような駆動音が聞こえてくる。


ルルルルル・・・。


5メートルくらいの白い立方体が小さな立方体をいくつも従えて飛んでくる。

白磁のような色合いの20㎝くらいの立方体(小)がいくつも、何十と重なり、形を造り上げ、立方体(大)に合体していく。

ゴツゴツした両腕、ゴツゴツした八本の触手脚。根元は太く、先は細く(先端は四角)。

そして最後に立方体(小)が八つ重なってできた立方体(中)が立方体(大)の上にゆっくりと接続される。


「なんか……パッとしないね」

「ククク、まぁ見ていロ。ハッチ・オープン」


フロストが手首の端末を操作すると立方体(大)の前面がパクッと裂ける。

中は真っ暗だったが、フロストは特に気にすることなく飛び込む。

フロストを飲み込むと裂けた穴は閉じ、跡も残らなかった。


一拍置いて機体がブルリと震えると、頭部が変型した。

内側から重なった四つの立方体(小)が四隅に向かって裏返り、押し退けるように赤いモノアイが中央に現れた。

同時進行で身体中が変形していく。

ゴツゴツしたところは角が取れ滑らかに丸く。触手の先端の平面は盛り上るように鋭く。ぎこちなかった触手の動きは滑らかに。


パイロットによって命を吹き込まれた姿がそこにあった。


テンパランスⅡの拡声器からフロストの声が聞こえる。


『フハハハハハ!!見ロ!パイロットの搭乗による常識を超えた変形!!これぞまさにSRの醍醐味!おっと浪漫だけじゃないゾ!装甲は俺の〈錬金術〉スキルによる『38式合金』デ、衝撃に強く特に耐熱性に優れているシ、操作は精神感応式!』


精神感応式とはイメージで動かすということだ。操作性は格段に上がる、というかどんなバカでも操作できるが、その代わりに機体のダメージが最低60%フィードバックする。

ようはメチャクチャ痛い。

頭とか潰されたらショックで死ぬ、イメージの反映性能がいいほどフィードバックも上がるからなお死ぬ。


「前回の|テンパランス(節制)は出来る限りの経費削減がコンセプトでしたが今回はなんですか?」

『今回も同じダ』

「では何を削ったんです?」

『塗装費ダ』

「……そうですか」

『装備も充実しているゾ!試しニ……ム?敵はどこダ?』

「君が興奮している間に全滅しましたよ。ルリも黒蟻も中に入っちゃいましたし」


ラヴが呆れたように肩をすくめる。


『やれやレ、空気の読めん奴等ダ。では俺もコイツのテストに行ってくル』


そういうとテンパランスはズルズルと蛸足を蠢かして破壊された城門から中に入っていった。


そして誰もいなくなり、静かになった空気の中、悲鳴のような風が吹く。


ラヴはその場に一人佇む。


咳き込むような硝煙の薫り、むせかえるような血の匂い、目に鮮やかな紅と死体のコントラスト。


それらを眺め、ふんわりと笑うと、ゆっくり歩いて城の中に入っていった。


鼻歌が遠くに聞こえた。


あと二話くらいで回想編終了です!!


な、長かった・・・。

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