これは攻城戦そのニダ。
ここは超巨大空中要塞『モンストロ』。
の上に突き出てる塔。
の中のブリッジ。
暗い、モニターの光だけが室内を照らすそこ。
黒蟻は天井にぶら下がり、フロストはフラスコから直接コーヒーを飲んでいる。
「あぁやっぱ圧倒的やなぁ」
「ふム、だが兵士の投下実験は成功しタ。喜ばしいことだナ」
「せやけど……あんなかでプレイヤーは何人くらいやと思う?」
「10人いれば多いほうだナ。だがそれを差し引いてもこの数とレベルダ。大した抵抗はできまイ。それに相手のPOPスピードよりこちらが新戦力を投入する方が早イ。なにせかなり溜まっているからナ、制圧は時間の問題ダ」
「それもそやな。……ってウオォ!?」
「どうしタ」
「いやいやよう見てみい!殺られとるやないか!!」
「なんだト!?」
フロストはあわててモニターを覗きこんだ。
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上空でブラックドラゴンが何十体ものマジカル兵蟻に取りつかれている。
その様はまさに獲物にたかる蟻そのものだ。
だが、
「ギャアアアアス!!!」
突然黒いオーラを纏ったブラックドラゴン、それが爆発した!!
バラバラと落ちていくマジカル兵蟻達。
だが爆炎からぬうと姿を現したブラックドラゴンは傷一つない。
黒いオーラも健在だ。
ブラックドラゴンがパカリと開いた口に闇のエネルギーが凝縮されていく。
「ギャオオオオオオォォォォォ!!!」
〈カースブレス〉
暗黒の閃光が照射される。
それは発射と同時に拡散し、マジカル兵蟻を消滅させていく。
動揺するかのように顔を見合わせるマジカル兵蟻達。
それを見たブラックドラゴンはニヤリと笑うように歯を見せると、第二撃の発射準備に入る。
それを止めようと十数体ほどの兵蟻が飛びかかる。だが、刃も弾丸もオーラに阻まれ、爆発で吹っ飛ばされる。
それらを眺めながらブラックドラゴンは悠々とブレスを充電し、口をひら何かが口に突っ込んできた。
間抜けに開いた無防備な口に、マジカル兵蟻が飛び込んだのだ。
ブラックドラゴンは口の中に響く不吉な音を聞くことになる。
カチッ。
まばゆい閃光が己の内側からほとばしった。
頭部の吹き飛んだドラゴンが、ゆっくりと墜ちていく。
だが残ったブラックドラゴンは竜騎士の生き残りに周りを守らせ、200もの邪妖精達に味方を強化させている。
再びブレスが吐かれ、瞬く間に空にいた兵蟻部隊が駆逐されていった。
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「いやはや、レベルたったの280じゃあ480レベルのプレイヤーには勝たれへんか」
「まさかブラックドラゴンがプレイヤーだったとはナ」
「初めて見たで。これはラヴが知ったら悔しがるやろな。こんなおもろいもん見逃したんやから」
「しかし予想はしていたがブラックドラゴンにもなれるとハ……WoR何でもできるに偽り無しカ。羨ましいナ」
「オイ、待てやオイ!お前の種族の方がよっぽど強力でレアやないか!」
「いヤ、あれは属性が気に入らン。しかも特殊能力のせいでこんな仮面を着けねばならんしナ」
そう言ってコンコンと歯車の組合った仮面を指で叩く。
「まったク、こんな属性ほど俺に似合わないものはないゾ」
「いやこれ以上無いくらいお前にはピッタリや」
黒蟻が呆れたように言う。
「ヌ、地上にも動きがあったようだナ」
二人は再びモニターに視線を向けた。
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城壁の一部、割と広めのところに大きな魔法陣が展開されており、その周りを結界が囲んでいる。
その中心にいる魔導師部隊は固まって呪文を唱えていた。
もちろんそれを見逃すようなマジカル兵蟻部隊ではない。
またもドリルが結界を粉砕し、あっという間に蹂躙を行う。
だが。
「―――――よ、目覚めよ、汝の…腕は、敵を……穿つ槍、汝の花弁は……災い阻む鎧…………」
魔術師たちは切り裂かれながらも詠唱を続けていた。
震える口で詠唱を終える。
「さぁ、咲き誇れ……〈フィラメス〉」
途端、城が揺れる。
と、次の瞬間。
「キィィイイイイイーーーーーー!!!」
黒板を引っ掻くような、耳障りな音とともに地面を突き破ったなにかが飛び出し、マジカル兵蟻達に襲いかかる。
その地響きは地を割り、走る罅は一点に向かう。
その一点はみるみるうちに山のように盛り上がり、土砂を降らしながらそれが姿を現す!!!
巨大な植物。
それが人の胴ほどもある根を、触手を振りあげている。
そしてその植物は、その先端に巨大な巨大な極彩色の花を咲かせた。
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「で、でかいなぁ……!」
「なんだあの魔物ハ。見たことがなイ」
「<アナライズ・アイ>でも詳細出ません!完全に未知の敵です!!」
ブリッジは騒然となっていた。
なにせその花は城よりも大きく、もう少しで空にあるモンストロに届きそうなのだ。
そのうえほぼ全てのダンジョンを攻略し、殺して集めたデータは凄まじい量におよぶ俺たちがわからないのだ。
プレイヤーによってクリエイトされたモンスターもベースとなるモンスターがあるので、<アナライズ>ならばそれを見抜けるのだが、できなかった。
つまりそれは、完全に新しい敵ということだ。
「ただのザコにしては大きすぎル。ボスクラスカ」
「いや見たらわかるやろ」
「しかしおかしいナ。我々のような手段を用いない限り拠点の外にモンスターヲ、しかもボスクラスモンスターを配置できるはずがないのだガ」
『ラヴァーズ』のモンスター投下システムはホール・テクノロジーによるものだ。
通常、モンスターは自分から外に出ることができない。
が、例えば掴んで引っ張りだすことはできる。
ボスはこれを利用した。
まず、『モンストロ』を作る際に下部に小部屋|(といってもかなり広い)を作りそこをPOP場所にする。 ちなみにこの小部屋一つ一つを階層として認識させるためにビッミョーーーに、それもドットひとつ分以下程高さが違う。
次にその小部屋の床|(このときは地面に接していた。)を開くようにする。
で空を飛び、ハッチを開ければPOPして溜まっていたモンスターが落ちる。
落ちていくモンスターは敵を認識次第攻撃に移る、というわけだ。
今までのモンスターはこんな感じで発進していたのだ。
ちなみに砲台やミサイルはPOP場所を出現出来ないほど狭く作られている。
ゆえにハッチが開けば飛び出したかのように見えるのダ。
さらに砲台はPOP場所の設定に『POPした一体が倒されるまで新しくPOPしない』と加えているので詰まったりしないのダ!!!」
「テンション高いなぁ……説明楽しい?」
「無論」
「そーか。そらよかったやん。……あ、せや、外に出とったスケルトンはどうなん?」
「……言われてみればそうだナ。これは仮説だが城タイプの拠点は配置できるとカ?もしくは実はこれは運営による何らかのイベント戦だとカ」
もしそうだとしたらさっきボスに“可愛がられた”彼女(名前忘れた)は運営に雇われた……考えてはいけないな。
「ん~、まぁ考えてもしゃあない、あれどないする?」
「ふム、10秒ほど爆弾を投下し、その後投下するお前の部隊の数を上げつつルリのAP部隊を出すのはどうダ?」
「んなん勝手にしてあいつキレへんか?」
「大丈夫だろウ。ボスとアレした後の賢者モードのあいつは多重人格者レベルで別人だからナ」
本当にいつもあれくらいおとなしくて素直ならいいのだが。
まぁあれだけ外面を良くしていたらストレスも溜まるか……俺達に見せている顔が、本性とは限らんが。
「それもそうやな。なら殺ってまおか」
「よシ。そうと決まれ……どのボタンだったかナ?」
「フロスト様、お恐れながらそれは私達の仕事です。」
「皆様は指示を下さるだけでいいのです!」
「座っててください!」
と、いきなりオペレーターどもに邪魔された。
その剣幕に少々たじろいでしまった。
「そ、そうカ。ならよろしく頼ム」
「「「「任せてください!!」」」」
…………そ、そうか!わかったぞ!!
「黒蟻、さっきから何かおかしいと思っていたがわかったゾ!」
「なんや?」
「オペレーターが妙に生き生きしているんダ」
「なんやて!?」
「どうだ驚いただろウ。」
「あぁまさか気づいてへんかったとは」
「表に出やがレ」
「上等や。オペレーターはん、そういう訳やからよろしく頼むで」
「は、はい!了解しました」
「いや待テ、その前になぜこうなのか考えよウ」
「あぁん?んなもんラヴのやつに決まっとるやろ」
「なゼ?」
「こんな無茶苦茶できる心当たりはあいつしかおらん」
「……ふム、確かニ」
たしかに、考えることを完全に放棄した結論だがボスならそのくらいの伝手くらいあ(ドッゴオォォォォォォォォォォン!!!)ヌオォォ!!?
「艦底部に被弾!!」
「本艦に対する損傷は皆無」
「しかし出撃中のAP部隊、マジカル兵蟻部隊は全滅しました!!」
「なんだト!?」
さっきの巨大花か。
どうやらアレの触手の先にあるあの小さな花から雨のように光線が放たれているようだな。
しかしマジカル兵蟻部隊はともかく、ルリの部隊をこの一瞬で殲滅しただと?
それはさすがに無……あぁアレならイけるだろうな。
目の前の映像では、極彩色の花がギュンギュンと力を溜め込み、その巨大な花に見合うだけの光線を発射していた。
ドッゴオォォォォォォォォォォン!!!
なるほど、降下中のAPに真下からあれを当てればいかなSRと言えど大破するか。
しかし参ったな、勝手に使った数少ないAP部隊をこうも簡単に潰してくれるとは。
……ん?これってもしかしてボスに……?
「なぁ、思ってんけどさ……」
「ふム、奇遇だな俺もそう思っていタ」
黒蟻も俺も前のモニターを見ている。
モニターでは怪獣ビオランテ(仮)が爆弾を受け、その傷を瞬く間に治して爆弾を打ち落とし始めている。
「攻城戦の指揮を任されてや、」
「本来5分かからず落とせる城をダ、」
「未だに落とされへんうえにや、」
「製作に割りとカネのかかるAP部隊を三体とはいえ潰さレ、」
「加えてあいつらがメイクLOVEしてんのをここまで聞こえる爆音が邪魔する……と、」
「たしか奴等がセクロスするのは第二階層の道場エリア。ここにも聞こえる爆音ダ、さぞ響くだろうナ」
やれやれ、こいつも俺も同じ結論に達せざるおえんな。
「「……殺されるナ(んな)」」
「と、とりあえずアレ何とかしよ!」
「ソ、そうだナ!今ならまだ間に合うかもしれン!!」
「俺がアレ潰しに……」
「いヤ、お前はああいうデカブツは苦手だろウ。俺が出ル」
「了解や。なら俺はあっちのブラックドラゴンやな?」
「頼ム」
全く、やれやれ。悪魔と契約なんかするものではないな。
……まぁいい、さっさと片づけるとしよう。
テ、テストが・・・テストがぁ!!
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テストがァァァァぁ!!!