いつかなる冒険者∼ただの勇者に憧れる初心者冒険者は平凡能力で勇者へと進んで行く。∼
いよいよこの時が来た。ついギルドの受付まで走ってしまう。
「お姉さん!」
「はいはい、ユウくん、今日はどうするの?」
「ゴブリン退治をお願いします!」
そう言うとお姉さんは目を見開く。
「ゴブリン!?え?もう研修は終わったの?」
「終わりました!」
モンスターの討伐を受けられるようになるには15歳になって、研修を受けることが必要となる。先輩冒険者とゴブリンや虫系の巣穴をいくつか攻略するのが研修だ。別に嘘をつくはずもなく、僕は完璧に終わらせたのだ。
すると、お姉さんは「ちょっと待ってて」と言ってギルドの奥へパタパタと行ってしまう。
それから少し時間が経って、またパタパタと戻ってきて顔は明るい。
「いや~ユウくん、ホントにもう終わったんだね。」
お世辞かわからないが、褒められて嬉しくなってしまう。
「じゃあホントにゴブリン退治でいいの?」
村を助けてくれた勇者様のように強くてかっこいいなるためにこんなところで足踏みしてるわけにはいかないんだ。
「はい!」
「……じゃあ、このゴブリンが畑に2、3匹出てるっていうクエストに向かってもらってもいい?」
巣ではないのは残念だが、初めはこんな感じなんだろう。でも少しずつ強くなれって勇者様も言ってたし。
「はい!じゃあ行ってきます!」
「……あっ。」
「どうしましたか?」
「いや、なんでもないの。いってらっしゃい。危なかったらすぐ退くのよ。初めてなら失敗も当然なんだから。冷静にね。」
「はい。ありがとうございます!」
その心配がうれしかったし、もっと頑張ろうという気持ちになった。
「よし!行くぞ!」
武器や荷物をちゃんと持ってそのクエストの場所へ張り切ってこの万全の足で向かった。
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怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いなんでなんで
畑にはゴブリンが2匹いた。ゴブリン達は追い詰められると森の中に逃げていった。すると、もう一人のゴブリンが集まってきた。余裕のはずだった。2人でも問題なかったし、3匹でも変わらないはずだったんだ。
合流したゴブリンは剣を投げてきた。目の前まで来たが、反射で避けた。怪我はしなかった。でも足がすくんだ。怖い、傷一つついていない。なのに怖い。なぜか怖い。
僕は逃げた。木に隠れた。走って逃げればよかった。でも足は動かない。
ゴブリン達は僕が攻撃を食らってチャンスだとでも思ったのか探している。聞こえもしなかった足音が雷のように大きく聞こえる。
「はっはっはっはぁはぁ」
息すらできなかった。足にもどこにも力は入らなかった。
いつの間にかゴブリンはいなくなっていた。ようやく自分の下半身が濡れているのに気づいた。探すことなんてできなかった。役立たずの足が今更動いて全速力で走った。
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それから少し時間が経った。あの後のことは思い出したくもない。
最近は採取のクエストばかり受けている。それとパーティを募集してまたクエストをゴブリンや他のモンスターの討伐クエストを受けようと思っている。
すると、朝の新聞が送られてきた。勇者様が雷の力を持つ国指定害獣のライガンの巣を攻略したことが書いてあった。昔の新聞の内容を思い出した。勇者様はいつも、どこかで村や町を救っていて倒せなかったなんて聞いたことがない。
あの時を思い出す。怖くて足がすくんだあの時を。そして、僕は…あれ?なんだっけ?思い出せない……あぁ、羨ましかったんだ。そのことを思い出すと、自分の顔にゴブリンの斧が叩き付けられた。




