とある日の珍事件
♦︎登場人物
娘:高橋魅音17歳(高3)
派手めなピンクゴールドのロングヘアに、つけまつげバッチリ、制服のスカートは短くていつも父に注意されている。
クラスのムードメーカー。
パパに対しては「真面目すぎてつまんない」「話しかけても塩対応」と愚痴るが、本当はパパのことが大好き。
父:高橋 剛39歳
中小企業の社員。
(ねずみ捕り・害虫駆除グッズの開発・製造)。
元柔道部で黒帯、見た目はガタイが良く眼光は鋭い。
口数は少ない。
ママ:高橋 彩花41歳
お淑やかで上品な物腰だが、笑うと目尻に優しいシワが寄る。
同じ高校で柔道部の後輩、剛の強さに憧れていた。
専業主婦。
♦︎学校の昼休み。
教室で弁当を広げながら、いつもの女子トークが始まる。
友人1(リナ)「魅音ん家のパパってマジでお堅いよねー。
この前家に行った時に見たけど、ずっと無表情で座ってたじゃん」
魅音「そうなの!もういつも真顔だし、
私が話しかけても『ふむ』とか『そうか』とかしか言わないんだもん。
会話成立してないよ。だから最近はほとんど喋ってないの。」
友人2(ユイ)「でもさー、柔道めっちゃ強いじゃん?
黒帯なんでしょ?
うちのパパなんて優しいけどひょろひょろで、虫見ただけでキャーって逃げるし。
めっちゃ羨ましいんだけど」
魅音「確かに強いけどぉ・・・。
強いだけじゃなくて、もうちょっと喋ってくれたらなぁって思うよ」
リナ「うちなんか顔はいいけどギャンブルばっかで借金作ってるし。
マジで二人が羨ましい!」
魅音「うちら、ないものねだりかもねー」
ユイ「かもー」
友人リナ「三人を足して三で割ったら、ちょうどいいパパになるんじゃん?」
魅音「あはは!それいいかも!!」
その時、昼休み終了のチャイムが鳴った。
♦︎そんなある日の夕方。
玄関のドアが開く音がした。
いつもなら「ただいま」と小さく言うとすぐに自室に直行する剛だが・・・。
パパが革靴を持ったまま「彩花」と短く呼んだ。
母「あら?あなたどうしたの?」
父「靴がダメになってしまった。」
革靴の後ろを見ると、両方にねずみ捕りシートの粘着物がベタァッとくっつていた。
母「あらまぁ・・・ひょっとしてねずみ取りの?」
父「ああ」
二人の話し声に聞き耳を立てた魅音がリビングからピョコっと顔を出す。
靴を脱いでそのまま靴下で帰ってきたらしく、
足の裏が真っ黒に染まっていて、廊下に黒い足跡が点々と付いている。
母「あなた、靴下脱がないと」
父「あ、ああ、すまん・・・魅音、見るんじゃない。」
魅音「何々、パパどうしたの?」
母「パパね、ねずみ取りにハマっちゃったんだって」
父「こら、言うんじゃない。」
魅音「きゃははははははっ!」
剛は顔を真っ赤にして、ムスッとしながら
「笑うな」と言うが怒りはしない。
彩花は「ふふっ」と穏やかに笑った。
魅音「何それ!!」
母「あなた、どういう状況でこうなったの?」
剛は観念したように、ぽつぽつと説明した。
父「新商品のねずみ捕りシート、粘着力テストしてたんだ。
試作用の強力タイプを床に置いておいたら、
うっかり自分で踏んでしまってな。
靴が剥がれなくなって、無理矢理剥がしたが履けなくなってしまったから仕方なく靴下で帰ってきたんだ。」
魅音「え、何それ!ねずみ取り作っててねずみ捕りに捕まったってこと!?他に人いなかったの?」
剛「いたよ、現場にいた社長が珍しく笑っていた。」
魅音「それは面白過ぎるってパパ!!」
母「本当に面白いわねぇ」
父「恥ずかしいだろう、辞めなさい。」
魅音は笑いながらも、急に目を輝かせた。
魅音「でもさ、いいじゃん?
それで家族がこんなに笑ってるんだから!」
剛はムスッとしながらも、娘と妻の笑顔を見て、
小さく息を吐いた。
父「むむ。まぁ、そうだな」
母「そうよ、怪我が無くて良かったわ」
魅音「ねぇ、それ、SNSに上げていい?」
魅音がニヤニヤしながら剛が持っている革靴を指差す。
父「それは勘弁してくれ。」
♦︎次の日の昼休み
魅音「その時のちょっぴりショボンとしたパパの顔がさぁ!」
リナ「何それヤバすぎぃ!!」
ユイ「魅音のパパ、めちゃ面白いじゃん!!」
魅音「ほんと、最高だったよ!」
次の日、剛のねずみ取りの話はしっかりと友人達の間で話のネタにされていた。
それから魅音と父、剛との間の壁が少しだけ薄くなり、会話が増えたそうだ。




