表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

訓練

今回はテオとリアムの剣の訓練回です。

父 ガイアスに立ち向かう二人の少年、果たしてガイアスに勝ったことができるのか!?

 三人はリアムの家の前に立った。

丸太を積んだ外壁は太陽で少し色あせていて、


 扉の中央には小さな顔の飾りが彫られた鉄製のノッカーが取りつけられている。


 リアムはその取っ手をそっと持ち上げ、扉に向かって打ちつけた。


 コン、コン。


 金属と木がぶつかる、くぐもった音が響く。


「ただいまー!」


 すぐに家の奥から温かな声が返ってくる。


「おかえり、リアム」


 三人が家に入ると、ちょうど奥の部屋からリーナが顔を出した。


「リアム、おかえり──あら?」


 リアムの後ろに立つエレナとテオに気づき、ぱっと表情が柔らかくなる。


「エレナちゃん、テオくん。いらっしゃい」


「「おはようございます、リーナさん!」」


 二人はそろってきちんと頭を下げた。


 リアムは少し照れたように肩をすくめながら言った。


「お母さん。エレナとテオが……魔法と剣の指導をしてほしいって。お父さんとお母さんに」


「あらまぁ、そういうことね」


 リーナは柔らかく笑い、奥に向かって声をかけた。


「お父さん、テオくんが剣の稽古をお願いしたいって」


 呼ばれてガイアスが姿を見せる。


「おぉ、テオか!」


 白い歯を見せて豪快に笑いながら近づいてくる。


「今日も剣の稽古に来たんだな!」


 ガイアスは大きな手を伸ばし、テオの頭をわしわしと撫でた。


「えらいぞ。そんなにやる気があるのはいいことだ!」


 撫でられたテオはくすぐったそうにしながらも、誇らしげに胸を張る。


「はい!」


 胸に手を当てるようにして、テオはキラキラした目で言った。


「オレ……将来、リアムのお父さんみたいに、

村のみんなを守れる戦士になりたいんです!」


 その言葉が家の空気を明るく震わせた。


 ガイアスは力強く頷き、笑った。


「よし! じゃあ表に行くか!」


そう言って振り返り、リアムにも声を投げる。


「リアム! お前のことも見てやるぞ!」


「うん! 今日は負けないからね!」


 リアムが目を輝かせて答えると、ガイアスは愉快そうに喉の奥で笑った。


「ははっ、言うようになったな!」


 一方、リーナはそっとエレナの肩に触れた。


「じゃあ、私たちは向こうへ行きましょ?」


「はいっ!」


 エレナは元気よく返事をする。


 リーナはリアムのほうを振り返り、優しい声でひとこと添えた。


「リアム、剣が終わったらこっちに来てもいいわよ」


「わかった!」


 リアムは息を整え、テオと並んで家の前へと歩き出した。


 


 リアムの家の前には、村ではめずらしいほど開けた土のスペースが広がっていた。


 草はほとんど刈られ、地面は何度も踏み固められた跡が残っている。


 境界には簡素な木柵があり、端には古い丸太や練習用の木杭が立てかけられていた。


 その中央にガイアスが立ち、木剣を構えたテオをまっすぐに見据える。


「よし、テオ。まずは――基礎から教えるからな」


「えっ、無属性魔法とかは?」


 期待に目を輝かせるテオに、ガイアスは笑って首を振った。


「まだだ。

 無属性魔法は“誰でも持ってる力”だが、

扱うには素振りや足運びみたいな基礎がなきゃ意味がない」


「そっかぁ……」


 テオは木剣を見つめて、少しだけ肩を落とす。


 ガイアスはそんなテオの頭を軽く撫でた。


「物事には順序ってものがあるんだ。

 基礎ができるようになれば、ちゃんと教えてやるさ」


「……ほんと?」


「ああ、約束する」


 テオの目に再び光が戻る。


「じゃあ……がんばる!!」


 小さな拳をぎゅっと握りしめ、

 テオは力強く前を向いた。



「よし!」


 ガイアスが木剣を肩に担ぎ、声を張る。


「じゃあ実践形式で教えてくぞ。テオ、来い!」


「……っ!」


 テオは木剣を両手で握りしめ、構えを取った。


 だが、ガイアスが正面に立った瞬間──

 空気が変わった。


 普段は穏やかなはずの姿が、

 今は“戦士”の気配をまとっている。


「ひ……っ」

 テオの肩がビクリと震える。


 リアムは横でその様子を息をのんで見つめていた。


「うわぁぁぁぁ!!」


 テオが震えを振り払うように叫び、

 勢いよく踏み込んで剣を振り下ろす。


 ──ガキン!


 金属にも似た乾いた衝撃音。


 ガイアスはその一撃を片手であっさり受け止めていた。


「いいぞ!」


 ガイアスが笑う。


「前に比べて速くなったじゃないか!」


 そのまま軽く押し返され、

 テオの足が何歩も後退する。


「くっ……!」


 ぐらつきながらもテオは踏みとどまり、

 再び構え直した。


「はぁ、はぁ……! もう一回!!」


 叫んで飛び込み、

 力任せに剣を振り上げる。


 だが──


「剣の形が疎かだぞ!

力いっぱい振るうな! もっと肩を落とせ!」


「は、はい!!」


 息が上がりながらも、テオは言われた通りに修正しようとする。


 それでも全ての攻撃をガイアスに受け止められる。


「うん。前の時より上出来だな」


 ガイアスの目が細くなる。


「日頃から練習してるんだな」


「っ……そりゃ……がんばってるから……!」


 テオが力なく笑った瞬間──

 ガイアスが木剣を持ち直す。


「よし、今度は俺が攻撃する番だ。テオ、受け止めてみろ!」


「は、はいっ!!」


 構えたテオの腕が震える。


「いくぞ!」


 ガイアスの一撃目がテオの剣に当たった瞬間──

「っ……重っ……!!」

 テオの顔が歪む。


「にっ……」


 ガイアスは戦士の笑みを浮かべ、さらに連撃を浴びせる。


「どんどん行くぞ!!」


「わっ、わっ、わっ!? ちょ、待──!」


 テオは必死に剣を受け止め続けるが、

 足がずるずると後ろに下がり、ついに──


 ──バンッ!


 最後の一撃で、テオの木剣が大きく弾き飛ばされ、空中で回転しながら地面に転がった。


 テオはその場で尻もちをつき、

 肩で大きく息をしていた。


「テオ!」


 ガイアスが近づき、しゃがみ込む。


「強くなったなぁ。前とは比べものにならんぞ」


 息切れしながら、テオは顔を上げる。


「へ……へへ……」


 苦しそうなのに、誇らしげな笑みを浮かべた。


「ただな」


 ガイアスは優しく言葉を続ける。


「実践になると、どうしても剣の形が疎かになる。そこを直すことと……体力と筋力がもっとつけば──」


 少しだけ意地悪く笑って、


「無属性魔法も、教えてやっていいかもな」


「……はい!!」


 テオの瞳が一気に輝きを取り戻した。


 ガイアスは満足げに頷き、

 次に視線をリアムへ移す。


「さて、リアム。今度はお前の番だ。やってみるか?」


「うん! よし!」


 リアムは軽く拳を握り、小走りでテオのそばへ行く。


「剣、借りるぞ」


「うん……分かった……!」


 テオの横に転がっていた木剣を拾い上げ、

リアムは庭の中央──いつもの定位置へ向かった。


 ガイアスが腕を組み、言い渡す。


「今の自分の全力で来い。」


「わかった」


 リアムは深く息を吸い、静かに吐く。

 その瞬間──


 空気が揺れた。


 リアムの周囲に、淡い光の粒がふわりと集まり、身体の表面に沿うように魔力が纏い始める。


 リアムは静かに木剣を構え、息を整えた。


「……行くよ!」


 その声に、ガイアスはわずかに顎を上げる。


「来い」


 次の瞬間だった。


 シュッ──!


 リアムの姿が一瞬、視界から消えた。


「えっ……!?」


 テオは思わず目を見開く。


 その刹那──


 ガチィンッ!!


 鋼のような衝撃音が庭に響き渡り、

 リアムとガイアスの木剣が真っ向からぶつかり合った。


 ぶわっ──!


 ふたりのぶつかった瞬間に生まれた風圧が、

 テオの前髪を大きく揺らす。


「うわっ……!」


 息を呑む暇もない。

 リアムはそこからすぐに連撃へ移っていた。


 ガン! ガキン! ガッ!!


 剣と剣がぶつかるたび、まるで鉄塊を叩きつけ合うような重い音が響く。


 踏み込む音、跳ね返る衝撃、風の流れ──

 全部が速すぎて、テオの目では追いきれない。


「す……すご……っ!」


 テオの喉が、かすれた声を漏らした。


 目の前で戦っているのは、

 自分と同じ年のリアムとは思えなかった。


 ガイアスは連撃を受けながら、豪快に笑った。


「いいぞ、リアム!」


 その声に呼応するように――

 リアムの足元で風が巻き起こる。


「はぁ……っ、はぁ……っ……まだいける!」


 リアムの身体にまとわりつく風の流れが一気に濃くなり、次の瞬間、彼の姿がまた“線”になった。


「おっ……!?」


 ガイアスの目がわずかに見開かれる。


 そして――

 ガガガガガッ!!


 先ほどよりもさらに速い連撃が始まった。

木剣がぶつかり合う音が、まるで連打のように響く。


 リアムの呼吸はすでに荒い。

 息を吸うたび、風が胸に巻きついて震える。


「はぁ……っ、くっ……!」


 それでも、目は決して折れていなかった。


「よくやる……!」


ガイアスはにっと笑い、受け止めながら言う。


「リアム、お前も強くなったな!」


「……これなら!」


 リアムは叫び――

 木剣を振り抜く直前、手のひらに微かな光が集まった。


「光魔法……っ!?」


 テオが言うより先に――


 バッ!


 眩い光がリアムの手元から弾ける。


「うわっ!!」


 テオは思わず目を強くつむった。


 世界が真っ白になり、

 一瞬、音すら消えた。


 ──数秒後。


 テオはゆっくりと目を開けた。


 そして息を呑む。


「り、リアム……?」


 リアムは地面に倒れていた。


 肩で大きく息をしながら、動けずにいる。

 木剣は彼の手を離れ、数歩離れた場所に転がっていた。


 その前に立つガイアスは、

 倒れたリアムへ木剣の先端を向けたまま、

 戦士の目をしていた。


 しばしの静寂。


「……ま、負けたぁ……!」


 リアムが息を切らしながら、

 悔しさと達成感が混ざった声を漏らす。


 その瞬間、ガイアスは豪快に笑い声を上げた。


「ワッハッハッ!! よく言ったリアム!」


 木剣を肩に担ぎながら続ける。

「強くなったなぁ、お前。


 特に最後の光魔法は危なかったぞ!」


「はぁ……っ、はは……っ」


 リアムも倒れたまま、どこか誇らしげに笑った。


「リアムーっ!!」


 テオが駆け寄り、膝をつく。


「大丈夫!? めちゃくちゃすごかったよ!」


「お、おう……ありがと……」


 リアムがゆっくり起き上がると、

 ガイアスは二人を見渡し、満足げに頷いた。


「よし。今日はこれで終わりだ。

 また時間がある時に、二人とも見てやるからな」


 そう言って背を向け、家の方へ歩き出す。


 広い背中。

 太陽の光を浴びて、影が地面に長く伸びる。


 リアムには、その背中が

 いつもよりずっと大きく見えた。


       続く

     



ここまで読んでくださりありがとうございます。

テオもリアムも頑張ったけど、やはりガイアスは強かったですね(笑)

父の背中はおおきい!!


次回はエレナとリーなとの魔法の勉強会になります!

お楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ