プロローグ
かつて俺は、誰かを助けようとして――見捨てられて死んだ。
もう一度生きられるのなら、今度こそ手を伸ばす側でいたい。
そんな願いを抱いて、この世界に転生した“ただの村の少年”。
今度こそ俺は、ヒーローになる。
――これは、ひとりの少年が勇気を選び続ける物語。
ここはエルド村。
山に囲まれた草原に、小さな家が並ぶ。
土と青草の匂いが風に混ざって、鼻くすぐるような爽やかさがある。
畑では汗を拭うおじさん。
馬を引きながら市場から帰ってくる男。
川辺で洗濯物を叩くおばさん。
そんな日常の中――
「リアムーーー!!いるかーーー!?」
甲高い声が青空を突き抜ける。
子どもたちが振り返って笑う。
村中が知っている、あの元気な声。
家の中から、母の明るい声が響く。
「リアム!テオが呼んでるわよ!」
リアムは思わず笑みを浮かべて、外へ顔を出した。
「テオ!ちょっと待ってて!」
戸口の前には、鮮やかな緑の草原と、どこまでも澄んだ青空が広がっている。
テオは腕をぶんぶん振り回しながら、僕を待っていた。
――僕の名前は、リアム・アーデンウッド。
このエルド村で生まれた、ただの村の少年……のはずだった。
だけど僕には、誰にも話していない“秘密”がある。
それは、前の世界の記憶を、今でもはっきりと覚えていること。
――俺は前の世界で、誰かを守ろうとした。
いじめられていた友達を助けた。
それだけのはずだったのに。
気づいたら、次に狙われていたのは俺だった。
毎日、傷つけられても。
教室の誰一人、手を伸ばしてくれなかった。
助けた友達も。
仲良かったはずのヤツも。
みんな、見て見ぬふりをした。
それが孤独で、寂しくて、悔しくて……
僕は、自分で自分を終わらせた。
長い間暗闇に沈む意識の中で、
『誰かを救えるヒーローになりたい』
その願いだけは、消えていなかった。
もしもう一度、生きられるのなら。
今度こそ――手を伸ばせる自分でいたい。
その叫びが、どこか遠くへ響いた気がした。
次に瞼を開けた時。
俺は、お母さんの腕の中で泣いていた。
温もり。
光。
やわらかな声。
世界は、やり直すチャンスをくれた。
――なら俺は。
今度こそ、ヒーローになる。
そう僕は小さなこの手で、強く拳を握った。
続く
ここまで読んでくれて、ありがとう。
リアムは、一度は裏切られて、孤独の中で終わった。
だから誰よりも痛みを知ってて、「助けたい」という気持ちが強く転生してきました。
この物語は、
誰かを救おうとする“勇気”の物語です、
次回、リアムの“初めての試練”が訪れます。
彼がどう動くのか、ぜひ見届けてください!




