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わたしを攻略するなんて聞いてないんですけど!?  作者: 藤乃意
一章(転生、わたしがヒロインですか!?)
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4

「エット? ……と、そちらは」


 神は不正を許さないらしい。

 丁度ガイダンスが一区切りついたのか、生徒達がめいめいに講堂から出てくるところだった。そして、一番顔を合わせたくない人物と遭遇してしまうのだった。


「ご、ごきげんよう? ルナ様」

 

 アメリアとわたしの取り合わせに、ルナはわずかに困惑しているようだった。だが、そんな素振りもほんの一瞬、自然な流れで跪くとルナはアメリアの手を取っていた。


「こうしてきちんとお話をするの初めてかもしれませんね、聖女様」

「そうですね。モントルヴァル卿……お父上にはいつもお世話になっておりますわ」

「僕のことは気軽にルナとお呼びください。まだ家督も継いでおりませんので」

「では、ルナ様と。私のことも気軽にアメリアと呼んでくださいませ」

「仰せのままに。Sainte(聖女)-アメリア」

「おふたりはお知り合いなんですね!」

「ああ、教会本部で何度かね。それよりもエット」

「うっ! ……はい」


 怒られる……!

 キュッと目を瞑って言葉を待っていると、おでこに手を当てられる感触がした。


「熱はないようだね。それに顔色もいい。元気になったんだね、良かった」 

「……ごめんなさい」

「? どうして謝るんだい?」

「それは……色々といいますか……」


 おい、わたし。こんな真摯な人を騙してする散策は楽しいか?

 ……はい、楽しくはありました。ただ物凄く後悔しています。

 

「ところで、君たちこそ知り合いだったのかな?」


 ルナが小首を傾げながら聞いてきた。

 正直にいきさつを説明するのも、何だか罪を告白するようで憚られたわたしは、もにょもにょと歯切れの悪い回答を口にする。


「知り合いだったというか、つい先程知り合ったといいますか……」


 同意を求めるようにアメリアに視線を向けた。目が合うと、アメリアはふわりと微笑みを返してくれる。


「ノネット様、知り合いなんてよそよそしいです。私達はお友達ではありませんか! 私とは遊びだったのですか?」

「ええっ!?」

「エット……?」


 首肯を期待していたわたしは思いもよらぬ言葉に驚愕する。

 しかも、何かおかしな勘違いをされてしまったようで、わたしは手をブンブンと振って全力で否定をした。

 けれど彼女は肩を落とし、両手で顔を覆いながら涙声で続ける。


「ノネット様……私はとても、とても悲しくございます」

「神に誓って、アメリア様とは真剣にお付き合いさせていただく所存ですから!」

 

 ってなに告白みたいなこと口走ってんだわたしぃ!! 焦った勢いで意味不明なことを叫んでいた。


「……うっ……ぐす……」

「アメリア様、ルナ様、違うんです、あの、あの……」

「……くっ……あははは!」


 そんな居た堪れない空気を破るかのように、ルナが笑いを漏らす。


「ルナ様、笑い事じゃないんですが!? 誤解なんですよ!」

「いやいやすまない。エット、君が愛らしくてつい、ね」


 笑いながら肩をすくめるルナに、わたしはますます混乱する。


「一緒にアメリア様の誤解を解いてくださいよ! お願いします!」

「我が姫君にこれほど懇願されては断れないな……アメリア嬢、そろそろ満足されませんか?」

「ルナ様、ネタばらしが早すぎますよ」


 先程まで悲しみに打ちひしがれているような様子であったアメリアが、気づけばくすくすと笑っていた。


「その様子だと、ここに来るまでにも随分楽しまれていたのでは?」

「はい。次はどんなリアクションをしてくれるのか……とても心躍る時間でしたわ」

「あの……?」

 

 ふたりはしたり顔で笑っていた。いったい何だというのだ。


「エット。からかわれているだけだよ」

「なっ! どどど、どこからどこまで!?」

「さあ。君にちょっかいをかけては面白い反応をするのを楽しんでいたんじゃないかな?」

「そんな!?」

 

 わたしはアメリアのことをよく知っている。性格や身長、体重、好物、BWH、彼女の略歴からある意味その将来だって知っているというのに。

 確かにイタズラ好きな人物ではあるのだが、それは心許した相手に見せる愛情表現的な顔であり、主人公と親しくなるにつれて徐々に垣間見せてくれるものだ。

 

 つまりこれが、女の子同士の距離感……ってこと!?


「バカな……」

「こらこら。言葉遣いがはしたないよ、エット」

「ノネット様。どうか気を悪くされないでください。お友達になれたのが嬉しくて、ついはしゃいでしまいましたわ」


 なんだか嬉しいような、悔しいような。なんとも言えない気持ちになる。

 しかも、アメリアにそんなふうに言われたら怒るに怒れない。

 

「ところで、レディたち。午後の予定はお決まりかな? ガイダンスは終わりで以降は放課になるそうだよ。良ければ昼食がてらこの辺りを案内させてもらえないかな?」

「まあ素敵。そういえば、ここはモントルヴァル領にほど近いですものね。ぜひご一緒させていただきたいですわ」

「エットは?」


 今後の彼女らの関係性を思えば断る理由はない。

 

「お願いします」

「良かった。色々と準備もあるだろうから30分後、迎えに行くよ。女子寮で待っていてくれたまえ」

「はい。さ、ノネット様参りましょう」

「だから腕を組む必要あるんですか!?」

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