最後の勇者は如何にして最後となったか
『 目の前が真っ暗になった!
「勇者」は、命からがら逃げ出すことに成功したが、
代わりに装備と仲間を失った!』
目の前のフレーバーテキストを見ると、昔ながらのドット文字でそんなことが書いてある
「ふざ…け……な」
呂律が上手く回らず、最後まで言い切ることが出来なかった。
重く錆び付いた体を引きずり当たりを見渡すと、血の池を作り倒れている仲間たちが見える。
今ならまだ間に合うのだ! 今助ければ!
そう思いながらも瞼は重くなり、体はだんだんと動かなくなっていく。
思考が停止しようとする中、男、勇者と呼ばれる青年は神に縋りながら、ただ願う。
己の命は良い。 仲間を救って欲しいと。
しかし無情にもフレーバーテキストの文字は変わらずそれどころか目の前は暗くなってゆくばかり。
装備などあってないようなもの、もう一度手に入れれば良い。だが、これはなんだ!
この世界で初めて出来た悪友、
辛い時も苦しい時も自分を支えてくれた恋人、
いけ好かないイケメンだとからかっていた貴族の子らしからぬ騎士、彼等は一体どうなるというのだ…
何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ!!
あぁ、そうかそういうことか…そういうことだったのか…
思わず顔に笑みが浮かぶ。
何もおかしいことなどないのに…何も嬉しいことなどないのに…
ただただ世界が憎くて、運命が憎くて、
それ以上に己の無能がただただ憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くてニククテニククテニククテニククテにくくてニククテニククテニククテニククテたまらない。
勇者と呼ばれる青年は狂ったような掠れた嗚咽を出しながら、最後に声を絞り出した。
「必ず…助けてみせる…まって」
言い切ることはなく目の前は完全に真っ暗になった。