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竜砂少女は世に立つ  作者: 由喜坂由樹
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竜砂日記7 秘密を守るために

「んー?…これって警戒されてる感じ?……けど、まずは自己紹介…私は【ヒルファンド・ナート】……よろしくね」


 

 おそらくは軍人であろう女性は、気兼ねなく名前を名乗る。

 サンドラスの様子に理解を示しつつフランクな態度でヒルファンドは、ピースサインを出す。

 ただ、その態度が返ってサンドラスの警戒心を増やしたのは言うまでもない。



「私はサンドラス・フレンフード……ナート……エクスの母親?」



「血は繋がっていないよ…形式上は里親ってところかな……まあ、そんなことは置いておいて……サンドラスちゃんの話って本当なの?」



「先生、聞いていたんですか……盗み聞きは良くないですよ」



「ゲームで物陰に隠れて話を聞くシチュエーションってあるんじゃん…一度やって見たかったんだよね」



 ヒルファンドのゲームと言う単語にサンドラスは部屋に置かれているゲーム機に焦点を当てる。

 この部屋の主が彼女であると飲み込んだサンドラスは女性にしては珍しい趣味だと思った。

 そんな、サンドラスの思考の中、エクスがヒルファンドを窘めるが彼女はお構いなしに話を進める。



「それで、サンドラスちゃん……もう一度聞くけどさっきの話は本当?」



「……それは」



 エクスが恩人と慕う人物である以上はヒルファンドが、悪人ではないのは確かだ。

 しかし、サンドラスは本能的に彼女に真意を話すのを躊躇ってしまった。

 


「先生。サンドラスさんは、意識が戻ってそんなに時間が経っていません……だから」



 エクスは、ヒルファンドが恩人とは言えサンドラスが委縮してしまっていると思い一度話を中断させようと言葉を挟むが、エクスよりも早くヒルファンドの口は驚くべきことを開いていた。



「だったら質問を変えるね。サンドラスちゃんは――人間じゃないよね?」



「――!!」 



 瞬間、ヒルファンドの口が三日月状に歪む。

 先ほどまで感じた自身の中の本能――第六感とも言えるものがサンドラスの体を動かし、気づいた時には窓の近くまで彼女の体を突き動かしていた。

 自分たちが竜であることは決して口外してはならない。

 竜と言う人類にとって未知の存在が白日となれば、人類によって隅から隅まで研究され危険な存在と認定されるだろう。

 そうなれば人間として生きていくことは愚か、過激な人間によって村の竜全てが滅ぼされる可能性もある。

 村長から何度も聞かされた話が記憶に蘇り、サンドラスは危機的状況に置かれていた。

 


「人じゃない?…先生何を――ッ!?」



「邪魔だよ、エクス」



「エクス!!……何やってるのあなた!!」



 エクスの腹に拳がめり込み一撃で意識を奪い去る。

 恩人と慕ってくれるエクスに容赦なく攻撃を加えたヒルファンドにサンドラスは声を荒げる。

 


「この子は優しいから、私からサンドラスちゃんを庇うでしょうね……だから、眠ってもらったよ……さて、この国では警察はなく軍が国の治安を守っているからテロとかの危険分子の排除も仕事も内なのよね」



「……私をテロリストって言いたいわけ?」



「サンドラスちゃんの体を見た時、明らかに人間の肉体を超えている異常な体だった。現時点でのサンドラスちゃんはテロリストとは言い過ぎたけど拘束対象ってところかな――二十年前の戦争以降、この国から戦闘技術を盗もうとする危険な輩も多いし、中にはテロを起こそうとする輩もいた。後者は国際平和機構に属した、【あの人】への恨みごとが大半だけど……」



「(エクスのことは気になるけど……ここから逃げないと……)」



「いずれにせよ、トレンは何度も危険にさらされて来たけど私たち軍人が阻止して来たの……サンドラスちゃんの話を聞いていたけど意識を失ったらここに居たなんて怪しすぎるよね。肉体の強さのこともあるし、悪いけど職質ってことで一緒に軍に来てくれない? 安心して、言えないことがあるなら言えるまで傍にいてあげるから」



「傍にいる? 吐かせるの間違いでしょ……人間じゃないって言葉もゲームのやりすぎね。あとエクスにカレーライスありがとうって言っといて!!」



「……カレー作ったのは私なんだけどなぁ」



 ヒルファンドを無視して、サンドラスは窓から飛び降り地面に着地する。

 通常の人間が飛び降りれば大怪我は避けられないが、竜であるサンドラスの肉体の強度は人の人知を超えており、三階程度から飛び降りても怪我などしない。

 そのまま、サンドラスは凄まじい速度で疾走し、近くの街を目指す。

 訓練で使われていたであろう荒れ果てた大地も、砂漠を駆け回るサンドラスにとっては走りやすいものだ。

 ヒルファンドが追いかけて来る前に近くの街に出て、砂漠の村に連絡して迎えに来てもらう。

 村長であれば、遠く離れたこの地であっても渡りの力で、一瞬で来れるとサンドラスは考えていた。

 本気で走るサンドラスの時速はゆうに100キロを超える。

 その足で早急に街に着くはずだった――目の前の人影を視認するまでは。



「サンドラスちゃん…いや~、速いね」



「!?」



 サンドラスは驚き足を止める。

 そこには、初めから待ち構えていたかのようにヒルファンドが、サンドラスの前に無情にも立ち防がっていた。


 

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