プロローグ〜ライカ その一〜
これは、赤城カミトが主人公の物語です。ヴィクちゃんの登場があるかどうか、今は未定です。
「魔王様!ご結婚、おめでとうございます!」
うん、俺への祝いは一つもない。
「ライカ様、魔王様に幸せにならないと知らずぞ!」
そしてこれは俺への警告に間違いない。
「まさかこの私が魔王の結婚式に見証をするなんて思ったことないわ」
俺と魔王ファーゼロッデの前に立っている人は、この星の超神である星の見証者であるのフェエナス・トトリオン。
本来この星の経歴しか見証しない彼女は俺とファーゼの結婚式に見証を取ったのは、曲げた星の裁き者は俺が倒したからだそうだ。そしてこの世界でも救世の勇者になってしまった俺にささやかなご褒美の意味でもありそうだ。
「あなたに見証され、この星の記録の一つになれて、本当に感謝してます」
魔王ファーゼロッデは素直に彼女に礼を言った。
「いいえ、これはこの星を救った星の守護者様の結婚式でもありますから、紛れもなくこの星の歴史に違いない、だから私は仕事をしただけですよ」
そう、その星の守護者は俺のことだ。その責任を背負うから数多い世界を巡って戦った。そして今に至った。
それはもう一千五百年前からの事だな。
「新郎、カミト・アカギ、あなたはファーゼロッデさんを妻とし、星の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富めるときも、貧しいときも、相手を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「本名でいいの?」
ファーゼはこっそり俺に聞いた。
この世界に来たから今までずっとライカ・G・シオンの名前を使っていた。本名ではないがそれも偽名ではない。それは俺の師匠から俺への卒業祝いだから、もう一つの本名である。
でもファーゼとのこの結婚式、俺は生まれからずっと使っていた名前でここにいたい。
「あなたとなら」
俺もこっそりファーゼに答えた。
「新婦、ファーゼロッデ・ジェシカ・シニアース、あなたはカミトさんを夫とし、星の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富めるときも、貧しいときも、相手を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
迷わず応えたファーゼは涙を流れた程嬉しかった。
「では、お互い約束の印を」
フェエナスの宣告で、俺とファーゼはお互いの薬指に指輪をかけさせた。この瞬間、俺とファーゼの間は正式に指輪の絆が生まれた。
これは俺の世界の儀式だったけど、ファーゼに言ったら、彼女はこれでいいと言われた。
今のファーゼはアースの伝統に従って、真っ白なウェディングドレスを着ている。とても綺麗だ。
「新郎新婦、最後に誓いのキッスを」
俺とファーゼは真正面に目と目が合った。
ファーゼの瞳は菫色、それはとても高貴な人だけにある瞳色だ。その瞳を見て、俺はファーゼの手を取った。
「わたくしから言うのは変だけど、本当にわたくしでいいの?ラキアさんに未練がないの?」
ラキアは俺の妻として一緒にこの世界に来た人、でも彼女はこの世界にいる間に天命の果てに歩いた。
「彼女は俺をあなたに任せたから、逆光の錠もあなたに渡したじゃないか?」
逆光の錠は俺の光の力の解放を制限する道具だ。その力を貰った同時に俺の大切な女の子に渡した物。もし俺が暴走或は光の力を悪用したら、その錠を持ってる人は逆光霊剣になってしまう同時に俺を消滅する。だからその物にファーゼにある事は、彼女は俺の大切な人になった事だ。
ファーゼは何かを言いたいが、それはわかっているから、俺は彼女の口を止めた。
「ファーゼだから、あなただからこそ、俺とずっと一緒にいてほしい」
俺の言葉を聞いた、ファーゼが霧が晴れたのような顔をした。
「愛してる。これから先も、ずっと」
俺はファーゼにキッスをした。
「わたくしもあなたを愛しています。この繋いだ手が決して放すことはないと誓った」
ファーゼは俺に答えた。
「魔王様、おめでとう!お幸せに!」
「魔王様、おめでとうございます!」
「みんなありがとう、わたくしはきっと幸せになるわ」
うん、俺への祝いは一つもない。
それは当然なことだ。俺はこいつら魔族の王を横取りっぽい事をしたからな。
「ファーゼロッデ様、ご安心を。これからは私に任せてください。どうかお幸せに」
この人はテンジル、ファーゼと俺が選んだ次期魔王になる人。実力面は少し心配しているが、基本的にはいい人だから問題はなかろう。
それに四天王も健在している、みんなもいい人だ。
「ライカよ、もしまたこの世界に来たら、一緒に飲もうじゃないか!」
その四天王の一人は俺に声をかけた。彼は内政担当のレイドン。
「ああ」
「儂らもご一緒じゃの」
同じ四天王であるの外交担当、ミントファも笑って会話に参加した。その隣にいるのは治安担当のルリダン、同じ四天王だ。
「シックリダーは?」
俺がここにいない最後の四天王の事を聞いた。
「シックリダー様は軍隊を訓練している」
ルリダンは答えた、同じ四天王なのに、敬語を使うのは、シックリダーはただ一人の魔族公爵だから。
「彼女もここに来たいと言ったが、あなたと魔王様に安心できるようにしたいから頑張っている」
俺と四天王が仲良くしているのは、俺が魔王軍に入りたい時、反対している魔族のみんなを説得したのは四天王だった。
実力がある者には問題ないって言って魔王軍を説得できた。
まあ、それも俺がそのシックリダーを倒したからな。
ギリん。
ギリん。
何かが鳴いている。
星の羅針盤。
それは俺の次の目的地を指示する星の守護者の道標である物だ。
「もうちょっと話したいが、どうやらもう時間切れのようだ」
俺の発言によって、四天王から周りの全ての人までが大騒ぎした。
「全員、整列!」
テンジルが発令した。うん、なかなかの威厳さではないか?どうやら心配する必要がはなさそうだ。
星の羅針盤を手から離れた瞬間、ゲートを開いた。俺とファーゼが立ているところからゲートまでの間、この場にいる全ての魔族が綺麗な隊列で立ている。
どうやらこいつらはこっそり練習したようだ。
「みんな、ありがとう!」
ファーゼは魔法で着替えたから、俺と共に歩き出した。そして歩きながら手が振り回している。その行儀、さすが王だな。
まあ、俺を見たい奴がいるわけがないけど、ここでファーゼと華麗な舞を踊ってみんなに見せよう。
俺とファーゼ最後見たのは、心配は不要そうな魔族の人たち。
「さよなら」
手が最後の一振り、俺とファーゼがゲートの中に消えた。
よろしくお願いします