覇王グリード
扉は開かれた
封印者は訪れるだろう
かの玉座に君臨する王に
愚者の冠は知性を代償に、その身に火をともす
覚者の書にて幻影を振り払い、己が無知すらも自覚する
風の鎧は風を起こし、火を大火へと変換す
ここに試練は起こされた
騎士たちの国家、それは覇王によって見出された選ばれし土地
国だけではなく世界をも取ろうとした彼は賢者を愚者に変え、覚者を幻影の底に陥れた
風の加護を受ける一族も、今は病に倒れた
……そう、騎士たちは知っていたのさね
知性の奪い方も、知識の屍と化す方法も、病の広め方も……
それゆえに、国に王は立たず
ただ一人、覇王がいるのみ
しかし、今や世界は別たれず
封印者が世界をつなぎ留めた
ここまではね……
覇王の取り巻きも今は蒸発し、孤独な王とは愚者ではなく、彼のことを指すようになった
そして、争う必要もなくなった剣術に知性はなく……
さらには、恐怖に対する免疫すらなかった
いまや王国は闇の中、最初で最後の夜が来た
それも時期に終わる
その身を焼きこがし、世界を渡った封印者
いまは王とは誰のことを呼ぶのか
それを今から決めるのさね
玉座の前で
かつて世界を別けた剣、封印者を封印者たらしめた剣、覇王はそれを地に差し込み、城の外壁は破壊された
知性を奪う右手によって、掴みかかるも火が回る
幻視によって狂わせようにも、覚者の書がそれを許さない
そして、どれほど距離を取ろうが大火は風が運んでくる
ここに玉座は奪われた
覇王はもはや何もせず、ひざまずいて、灰になるのみ
ここに封印者の名を刻む
封印者とは、封じ込められた者ではなく、封じ込める者
覇王から奪い返した封印者の剣
王の死と玉座を持って、世界の楔とする
死体を玉座に、大火に捧げ、剣を持って楔とす
ここに世界は繋がれた
誰がために剣を持つ 完