愚者の王
頂に円盤
そこに至る者、愚かさを冠する者と対峙するだろう
王の名を賭けて
遠い昔、名前も文字も存在しない時代
北の果てに国が興ったと聞いた
国の名は、王国
騎士たちの国
それ以外の伝承は無かった
騎士の王は世界に覇を唱え、支配する制度を整えた
支配を拒否する者たちに、団結し、王を立てよと、命じた
それを聞き、のちに愚者の国と呼ばれるモノが起こった
誰よりも強きもの、それが王になる条件と信じた
愚者たちは互いに戦い、滅しあった
最後に残ったものだけが王を名乗ると信じ
されど、王には臣が必要だ
愚かな彼は戴冠した後に気づき、その後、愚者の王と呼ばれた
岩塩の剣、それはただ、世界と共に大地に刺さっていたものだ
遠く語られる製法は、それ自体が彼の伝説である
世界と大地を揺るがし、稲妻にうたれた岩、それを剣として用いた
人の手に触れられていない岩の塊が稲妻を受け熱せられた
愚かな彼はそれを海に沈めた
かつて大地だった岩の塊は戦いの中で、稲妻を受け剣のようになった
海に沈めたがために、詳細不明の合金は塩の結晶をまとっており、今の物になった
しかし気づくだろう
王になったのも、王国の伝承を聞いたのも、彼が愚者であったことも
その体躯で大地を震わし、落雷を受けてもなお孤独
巡礼者と戦場の円環を掬い、海に飛ぶ
四肢を切り裂き、巨体が地に沈むとき、世界を別けた剣が、再び大地に刺さる
大地の裂け目から光が飛び、彼の王冠に雷鳴を落とす
ここに戴冠は為された
愚者の王冠だ
王国の知らせを聞いた者たちはすぐに王を選別した
王を名乗ると信じられた者たちも、今は王国の支配下
世界を割ったのは、全てを知った彼なりの苦肉の策だったのだろうか
大地の裂け目へ入る