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軍人、依頼達成する

「おう、そっちも終わったか。もっと手こずるかと思ったが、思ったより早かったな」


俺がゴブリンを倒し終えるのと同時くらいに、ドランも終わったようだ。


「そちらこそ。くたばってたら置いて行くつもりだったぞ」

「ったく減らず口を……まぁいい。では見張りも倒したし、巣に入るとするか?」


洞穴の中に入ろうとするドランを止める。


「おいおい正気か?こんな暗くて狭くて汚い所に入るつもりかよ」

「お前こそ何を言っている。巣穴は深いぞ?中に入らなければ奥に潜むゴブリン共を倒せないだろう」


ドランはのんきなことを言っている。

こんな場所に入ったら不意打ちやら包囲やら、され放題ではないか。

もっと広くて明るければまだしも、あまりに危険すぎる。


「穴に潜った害獣なんて、中に入らなくても倒す手段は幾らでもあるだろ全く……そこらに落ちてある枝を集めてくれ」

「む……構わないが……」


俺とドランは手分けして、木の枝を集める。


「長く太い枝を巣穴の中にこうやって組み込んで……出来た」


作ったのは枝を組み合わせたバリケートだ。

鋭い部分が巣穴の奥がを向いており、出てきたゴブリン共を串刺しにするというわけである。

手軽だが効果的なトラップだ。


「あとは余った細枝や木の葉を燃やし、煙を送り込めばいい」

『シヴィ、頼む』

『了解』


俺はバリケートの外側に木の葉を集めると、シヴィにそう命じる。

備え付けのライターを近づけると、集めた木の葉が煙を出し始めた。


『次は風だ。サーキュレーターを起動させてくれ』

『全く、ロボ使いの荒い人です』


更に、シヴィの送風口が開きますそこから風が吹き出す。

風で送られた煙は、巣穴の中に吸い込まれていく。

そしてジョブを『斥候』に変更、気配察知スキルにより巣穴の中のゴブリンを把握しておく。

煙が奥まで届いていないかもしれないし、他の出口があるかもしれない。

穴の中は……よし、見える。

巣穴の中には敵反応が30。いくつか大きなものがあるが、ボス的な奴だろう。


「驚いた。お前『魔術師』のジョブも持っているのか」


俺の行動にドランは驚いている。

さっきの火も風も、シヴィの機能なんだがな。

まぁ『魔術師』のジョブを持っているわけだが。


「ジョブを二つ持っている冒険者はB級でも少ない。お前ならそのうちB級も夢じゃないかもな」

「馬鹿め。俺が目指すのはあくまでA級。そしてミラちゃんに惚れられ組んずほぐれずの予定なのだよ」

「ハッ、デカい口を叩くじゃないか。だがまぁ、お前が言うと不思議と冗談に聞こえない」

「冗談で言っているつもりはないんだがな……む」


そうこう言っているうちに、洞穴の奥からギャアギャアとゴブリン共の声が聞こえてきた。

穴から飛び出してきた最初のゴブリンが、真っ直ぐバリケードに突進して突き刺さる。

ギャ! と短く悲鳴を上げ、消滅した。

続いて出てきたゴブリンも同様に次々と、バリケードに自ら当たりに行き、串刺しになっていく。

充満した煙は判断力と視界を奪い、目の前の敵にも気づかない。

戦場で防空壕に籠る敵相手に用いられる戦法だ。


ゴブリンを倒した、とのメッセージが流れる流れる。

25……20……10……よし、だいぶ減って来たぞ。


「ギシャアアアアア!」


突如、穴奥から咆哮が響く。

飛び出てきたのは通常のゴブリンより二回りは大きな奴だった。

そのゴブリンはバリケードを破壊し、続くゴブリンたちと共にこちらに突っ込んでくる。

それを見たドランが慌てた。


「奴はトロールだ! ゴブリンの変異種でとんでもないパワーを持っていやがる!デカい巣にしかいないはずなのに、何故あんな小さな巣に……気をつけろ!」

「なるほど、反応がデカい奴がいたが、こいつか」

「ジャアアアアアア!」


巨腕を振り上げたトロールは、バリケードに思い切り叩きつける。

一撃で粉砕されたバリケードは粉々に吹き飛び、俺たちに降り注いだ。


「いでででっ!?」


ドランの身体に木枝が刺さる。

俺は間一髪、岩陰に身を潜めて回避した。


「グルルルルル……!」


唸り声を上げるトロール。

俺たちの周りをゴブリン共が取り囲んだ。


「くそ、やるしかねぇ!おいアレクセイ、お前『魔術師』のジョブがあるんだろう!?俺が前衛に立つから魔術で攻撃してくれ」

「だから命令するなと言ってるだろ」


しかしあのデカいのに正面から斬りかかっていくのは骨が折れそうだ。

そういう危ない役目は任せておくか。

俺はステータス画面を開き、『魔術師』のジョブをセットする。


アレクセイ=ガーランド

レベル86

ジョブ 魔術師

力C

防御C

体力C

素早さC

知力SSSSS

精神SSS

パッシヴスキル

魔術C 鑑定C


これはまた極端なステータスである。

S並びすぎだろ。小学生かよ。代わりに身体能力はずいぶんマイナス補正が入るようだ。

魔術は魔術スキル使用可能、鑑定は物体について情報を表示するスキルで、ランクを上げるとその隠された能力も理解する事が出来るというものらしい。


「くっ! 強い……!」


その間、ドランはトロールと戦い始めていた。

だが体格差は大きすぎる。

喧嘩では身長が10センチ違うだけでもかなり不利になる。

ドランとトロールでは倍以上だ。そう長くはもたないだろう。

懸念通り、早くも防戦一方になっている。

とりあえず魔術とやらで援護してやるか。

魔術スキルに意識を集中させると、使用スキル欄が出てくる。


ファイアアロー

アイスショット

エアカッター


どうやら使用スキルはこれだけのようだ。

恐らくランクが上がる事に増えていくのだろう。

戦士と違って武器ごとに設定されているわけではなく、任意に使えるようだ。

俺はトロールに向け、ファイアアローと念じてみる。


ごおう、と目の前に炎が生み出された。

最初は拳大だったそれは、凄まじい速度で大きくなっていき、早くも直径1メートルを超えようとしている。

ヤバい、そう思った俺は即座にファイアアローを放つ。

炎は一筋の矢になって、勢いよく飛んでいくとトロールの頭に命中した。

ぐらり、と巨体をよろめかせ、トロールは倒れた。


トロールを倒した。1522EXPを獲得。


そして思ったより経験値少ないな。

言うほど強い魔物ではなかったのかもしれない。


「な、なんという魔術だ……信じられん……」

「おい、ボケっとするなよ。残りも片してしまおうぜ」


呆けるドランに注意する。

雑魚しか残ってないとはいえ、戦闘中に油断は禁物だ。


「あ、あぁ……そうだったな……」


俺はドランと共に、残っていたゴブリン共を倒すのだった。


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