表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/50

軍人、ジョブチェンジする

 視界がすごい勢いで流れていく。

 普段通りの駆け足で。全力ではないが長距離を無理なく走れる程度の速度だ。

 それでも時速40キロは出ている。


『アレクセイ、そんな速度で走ったらドランがついてこれないのでは?』

『いいんだよ。それなら俺一人でやるだけだ』


 08の支援もあるし、俺自身の身体能力も規格外だ。

 ゴブリンとも戦ったし、瞬殺した。

 どう考えても負ける要素はないので別にドランの協力など必要ない。

 微妙に死亡フラグっぽいが、問題ない。多分。


「おっ、中々速いじゃないか」


 そんな事を考えていると、ドランが俺の横を走っていた。


「はっはっは、その足の速さ、『斥候』のジョブを持っていやがるな? だが俺も『斥候』持ちでね。簡単に置いて行かれはしねぇぜ?」

「『斥候』?」


 なんだそりゃ、聞き慣れない単語に聞き返す。


「何言ってんだ。ステータスに表示されてるだろう?」


 ドランの言う通りステータス画面を見て見ると、名前の下にジョブ、なしと表示されていた。

 そこに意識を集中させると、ジョブを設定しますか? と出たのでイエスと答える。

 すると『戦士』『斥候』『魔術師』『僧侶』『商人』とジョブがずらっと出てきた。

 そういえば前に魔物を大量に倒した時、いっぱいウインドウが出てきて、新たなジョブを獲得したとかなんとかあった気がする。

 うっとおしかったのですぐ閉じてしまったが、これがドランの言うジョブというやつだろう。

 早速『斥候』をセットしてみる。


 アレクセイ=ガーランド

 レベル86

 ジョブ なし→斥候

 力A→A+

 防御B→C

 体力A→B

 素早さB→S

 知力SSS→SSS

 精神S→S

 パッシヴスキル

 移動速度上昇C 気配察知C


 途端、身体が軽くなって移動速度が上がり、疲れも全く感じなくなった。

 この移動速度上昇とやらがドランがあれだけ走るのが早かった理由か。

 その部分に意識を集中させると、移動速度が上昇すると書かれている。

 試しに軽く拳を振ってみるが、その感覚は通常と同じだ。

 純粋に移動速度のみが上がるのだろう。


 更に気配察知は周囲の生物の気配を感じられるようだ。

 俺の周囲約100メートルほどが、レーダーのように生物の気配を感じられる。

 元々訓練により敵の気配には敏感な方だが、スキルによる効果で空中も地下も鮮明に感じ取れる。

 これはすごい。これなら不意打ちもされないだろう。


「お、おい! ちょっと待て! こらぁぁぁ!」


 遥か後方から聞こえてくるドランの叫び声。

 土煙を上げながら全力疾走で追いついてきた。


「ぜぇ、ぜぇ……て、てめぇコラ、そんなに早く走ったら……着いたときにへとへとだろうが……もっとゆっくり、走りやがれ……」

「そっちこそ無理しない方がいいぞ」


 スキルによる効果で移動速度は倍近くになっている。

 CでこれならAとかになったらどうなるのだろうか。


「む、無理なんかしてねぇ……!」


 親切心で言ったのだが、ドランの対抗心に火をつけたようだ。

 俺とドランは二倍速のまま、ゴブリンの住まう山へと向かった。


 ■■■


「ふぅ、はぁ、よ、ようやくついたか……」


 がっくりと膝を突くドランの横で、俺は辺りを見渡した。

 山には草木が生い茂っており、よく見れば獣が通ったような跡もある。

 意識を集中させると、北西40メートルほど先に大きな生命反応を見つけた。


『あそこか?シヴィ』

『はい。先刻の巣穴で間違いありません』


 シヴィに確認し、俺はまた歩き出す。


「ゴブリンの巣穴を見つけた。行くぞ」

「ぜぇ、はぁ、……お、おうよ!」


 息も絶え絶えといった様子だが、ドランは何とかついてくる。

 中々根性があるな。軍でもやっていけそうだ。スカウトをするつもりはないがな。

 俺は歩幅を狭め、音を消し近づいていく。

 岩にぽっかりと出来た洞穴の周りに、ゴブリンが五体いる。

 ゴブリン共は俺たちの接近には気づいてないようで、欠伸をしたり、野菜や鶏を喰らっていた。


「あのゴブリンは近くの農家を襲い、家畜や野菜を盗んでいやがるんだ。放っておくといくらでも増える。早く退治しなきゃならん。俺は左の三体をやる。アレクセイ、お前は右の二体をやれ」

「俺に指図するんじゃない」

「お前、『斥候』だろ? 『戦士』のジョブを持つ俺が多く倒してやるって言ってんだよ。……行くぞ」


 言うが早いか、ドランは剣を抜いて飛び出し、ゴブリン共に斬りかかる。

 チッ、勝手な奴だ。

 あのまま放っておいても一人で倒してしまいそうだが、『戦士』のジョブも試してみたいところである。

 俺はステータス画面を開き、『戦士』のジョブをセットした。


 アレクセイ=ガーランド

 レベル86

 ジョブ 斥候→戦士

 力A+→SS

 防御C→S

 体力B→SS

 素早さS→A

 知力SSS→SSS

 精神S→S

 パッシヴスキル

 武具修練C 戦闘技術C


 武具修練の効果は武器防具の扱いが上手くなり、装備した際のステータスが上がるようだ。

 そして戦闘技術はランクが上がると、戦士スキルを覚える事が出来るようだ。

 武器というと腰にサバイバルナイフを差しているが、このパワーで使ったら壊れそうで怖いな。

 結構高かったし、あのゴブリンの持っている短剣で試してみよう。


 俺はドランに気を取られているゴブリンにまっすぐ突っ込んでいき、ナイフを持つ手を捻りあげる。

 バキバキと音がして、ゴブリンの腕が何回転もして千切れた。

 追撃の蹴りと共にナイフを奪い取ると、ゴブリンは消滅した。


 短剣を装備した。

 戦闘技術スキルが発動、短剣スキルが使用可能となります。


 頭の中に声が響き、スキル欄に『連撃』という文字が追加された。

 俺はもう一体のゴブリンに向き直ると、『連撃』スキルを発動させる。


 身体が一気に軽くなり、自然な動きで短剣を振るった。

 自分でも驚くほどのキレで横薙ぎに繰り出した斬撃は、ゴブリンの身体に三つに分断した。

 更に返す連撃で、九つに。

 どうやらこのスキルを使えば身体能力が大幅に上がり、斬撃が二つ生まれるらしい。

 ただ効果はほんの一瞬のようで、身体の軽さは消えてしまった。

 これがスキルか。中々面白い。

 ちなみにゴブリンから奪った短剣は、衝撃に耐えられなかったのか粉々に砕けてしまった。

 サバイバルナイフを使わなくて正解だったな。



いつも読んでくださりありがとうございます。

面白いかも、と思っていただけたら評価ブクマを入れてくださると、モチベーションになってとてもありがたいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ