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軍人、平和的交渉をする

「さて、どうしたもんかな」


 帝国兵たちはすぐそこまで来ているらしい。

 地下へのエレベーターがあるのは、今は崩壊した屋敷跡。

 軽く隠してはいるが案内人もいるし、入口はすぐに見つかってしまうだろう。


 俺の取る選択肢は三つ。

 ①、兵たちを殺す。だがこいつはあまりに短絡的だ。

 兵を寄越してきた帝国に喧嘩を売る羽目になるし、そこまでやらかすと領主も庇いにくいだろう。

 やるとしても最終手段だな。様子見の方がマシだ。


 ②、力ずくで追い返す。これまた微妙だ。

 連中もそれなりに労力を払っている以上、はいそうですかと帰るとも思えない。

 俺が力に訴えたら、やっぱりややこしい事になるだろう。


 ③、大人しくイザベラを差し出す。

 ま、これはない。イザベラがいないと08の修理もままならないしな。

 ――というわけで俺が選ぶのは選択肢④。

 説得して納得し、穏便に帰ってもらう――だ。


『え? 今何といいました?』

『説得して納得し、穏便に帰ってもらう――』


 シヴィが聞き直してきたので、毅然とした答えを返す。

 二度まで言わせるな。

 ていうか聞こえてただろうが。


『またまた御冗談を。ターゲットを前にした彼らが説得に応じるはずがないでしょう』

『さて、そいつはどうかな。とにかくやってみるさ』

『ご武運を』


 何故武運を祈る。

 俺は普通に話し合いに行くだけだぞ。


 エレベーターに乗って地上に出ると、丁度連中が目の前にいた。

 案内人らしきノームの男は、俺を見るや気まずそうに離れていった。

 あっちはとりあえず放置でいいな。

 まずはこいつらの対応をしなければ。


「いよっ、また会ったな」

「お前……ガロンゾで見た男だな! 何故ここにいる!?」

「まぁその、なんだ。あんときゃシラを切ったが俺はイザベラと知り合いでな」

「本当か!? ではやはりここに……」

「あぁ、いるぜ」


 俺は地下のエレベーターを指差した。


『アレクセイ! 何を正直に話しているのです!?』

『大丈夫、相手も同じ人間だ。誠意をもって話せばわかってくれるさ』

『……本気で言っているのですか?』

『もちろん』


 シヴィは呆れた様子だが、当然勝算はあるのだ。

 俺は帝国兵たちに語り掛ける。


「しかしあいつはもう帝国には居たくないと言っている。だからここらで捜索を打ち切ってよ、国には死んだとでも報告しといちゃくれないか?」

「な……そ、そんな事出来るわけがないだろう!」

「そうだ! ふざけるのも大概にしろ!」

「はぁ、そうなるよな」


 深いため息を吐く。


『当たり前ですアレクセイ』


 シヴィの辛辣なツッコミ付きだ。

 焦るな焦るな、まずは条件の確認だ。

 ここからが真の交渉である。


「まぁタダで帰れとは言わないよ。こいつで手を打たないか?」


 取り出したのは金貨10枚、それを兵二人に各々渡した。

 それを見た兵たちは目を丸くする。

 金貨10枚ってーと一か月は遊んで暮らせる額だ。

 連中の所持金は銀貨数枚なのはシヴィのスキャンであらかじめチェック済みである。

 ガロンゾでも殆ど遊んだり飲み食いせずに捜査をしていたからな。

 鎧もまともに手入れされてないし、下級兵士なのは明らかだ。

 そういった連中は目の前に極上の餌がぶら下がった場合、必ず裏切る。

 二人は顔を見合わせると、俺を見て下品な笑みを浮かべた。


「へへ、中々話が分かるじゃないか」


 よし、食いついたな。計画通り。


「ま、あの女を捕まえても、上から僅かな報酬金と労いのお言葉が貰えるくらいだしな。それならお前から大金貰った方がマシだ」

「だろ? この金で遊んで来いよ。以前に会ったガロンゾは、楽しめる店が沢山あるんだ。特にホラーハウスってのは他にはない珍しい店らしいぜ? すごい美女のゴーストが出るとか」

「ほほう、そいつは楽しみだ」


 ついでに宣伝もしておこう。抜かりはない。


「じゃ、そういう事で頼むぜ」

「ったく、しゃあねぇな。誇りある帝国兵としては民の言葉を無下にするわけにもいくまい」

「そうだな相棒。げへへ。それじゃあこいつは貰っていくぜ」


 二人はニヤニヤしながら金を受け取ると、満足そうに帰っていった。

 行ったか。面白いほど上手くいったな。

 これで連中は上司にイザベラの死を報告するだろう。

 しばらくすれば追跡の手も止むってわけだ。完璧なプランである。


『……な? 平和的に解決しただろ?』

『確かに、それにしてもあんなに簡単に裏切るとは、彼らのリテラシーはどうなっているのでしょうか?』

『人間ってのはそういうもんよ。特に文化レベルの低い人間は、目の前にぶら下がったエサに簡単に食いつくのさ』


 軍人時代もこうやって敵兵を懐柔し、寝返らせたものである。

 禁欲生活を送らざるを得ない兵士には、この手の懐柔はとても有効だ。


『ククク、まぁ自分でも笑うくらいうまく行ったがな。自分の才能が怖いぜ、はっはっは』

『また悪い顔を……』


 勝てばいいのだ勝てば。

 ついでにノームの男も言いくるめておくか。

 手招きをして、イザベラは死んだと口裏を合わせるよう言っておく。

 当然村の仲間たちにもだ。

 全員に賄賂を渡し、念を押しておく。


 結構金を使ったがホラーハウスで稼いだし問題なし。

 やはり金こそ全てだな。

 金があれば大抵のことはどうにかなる。

 宣言通り『穏便』に済ませた俺は、エレベーターを降りるのだった。

この主人公、早く何とかしないと……

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