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軍人、店を開く

「アレクセイさまぁ、右腕良好ですー!」

「おう、じゃあ左腕行くぞ」

「はぁーい」


 現在、ある程度部品を組み終えたので最終動作確認中である。

 頭部から始まり右手、左手、右足、左足と続き、歩行テストを行った。

 08の指を一本ずつ折り曲げ、そしてまた一本ずつ開いていく。

 高度なマニピュレータである指先は、砂を噛んだりグリスが切れたりと少々のことで異常をきたすのだが、これだけスムーズに動くということは手入れが行き届いている証拠である。

 イザベラの技師としての能力は相当高いな。


「うん、いい感じだ」


 とりあえず今の所、問題はなさそうである。

 たった二人でよくやったと思うぜ実際。


「良かったですねぇ。08さん」


 イザベラは08を撫でながら、嬉しそうに笑っている。

 動作確認を終えた俺はコクピットから降りた。


「サンキューイザベラ、助かったぜ」

「えぇ、えぇ、いいのですよぉ。私も嬉しいですから。それにまだ完全ではありません」


 確かに、まだ動くようになっただけだ。

 普通に動かすだけならともかく、100パーセントの性能を発揮出来ているとは言えない。


「ですがご安心くださいな。これからゆっくり直していきますからぁ」

「ありがたい」

「えへへ、どういたしましてぇ」


 そんなやり取りをしていると、ガラガラと扉が開いた。


「アレクセイ、昼ごはんを持ってきたぞ――……」


 入ってきたのはセシルだ。


「昼飯を作ってきた。食べるといい」

「おっ、サンキューな。丁度腹が減ってたとこだぜ」


 俺は駆け寄ると、弁当の入ったバゲットを受け取りテーブルに広げた。

 入っていたのはレタスとベーコンとスクランブルエッグの入ったサンドイッチだった。

 おお、美味そうだ。

 俺はサンドイッチを丸ごと一個、口に入れた。


「んぐんぐんぐ……ン美味い!」

「それはよかった」


 いつもの野菜スープもいいが、町に帰ってからはサンドイッチやロールキャベツなど、手の込んだ料理を作ってくれる。

 有り難い。そして女子力が高い。

 腹が減っていたこともあり、俺はサンドイッチ3つをぺろりと平らげた。


「ふぅ、ごっそさん」


 満たされた腹を撫でながら、俺は手を合わせる。

 セシルはお粗末様、と言って微笑を浮かべた。

 それからしばし、休憩をしていると不意にセシルが口を開く。


「なぁアレクセイ、あれからずっと地下にこもりきりだが、遺跡の件はいいのか」

「おお、そういやそんなのあったな」


 08の修理に夢中で完全に忘れていたぜ。

 遺跡を温泉歓楽街化して、がっぽがっぽ作戦が実行中だったのだ。


「忘れていたのか……全く呆れた男だ。遺跡の方はとんでもないことになっているぞ」


 ため息を吐きながらセシルは続ける。


「商会の連中が押し寄せて、遺跡の周りに温泉宿泊施設や食事処、釣り堀やラクダ乗り場などの施設を作っている。観光客も他の領地から来て、お祭り騒ぎだ」


 どうやら俺の目論見は上手くいったようである。


「ほうほう、こうしちゃいられないな。早速遺跡へ行こう! イザベラも来るか?」

「いいえぇ、私は08さんの整備がりますので遠慮しておきますぅ」


 一応誘ってみたが、来たくはないようだ。

 無理に誘う必要もないか。人間の事なんて興味ないのだろう。ロボだし。


「アレクセイさま方は遠慮なさらず行ってきてくださいな」

「そっか悪いな。じゃあ行ってくるぜ!」

「いってらっしゃいましぃ」


 イザベラに手を振られ、俺とセシルはエレベーターで地上に上がった。

 善は急げ、とばかりに馬車に乗ってガロンゾ遺跡へと向かう。


「あー、こりゃ確かにすごいな」


 松明が立ち並び、押し寄せる人々の熱気で、夜なのに暑いくらいだ。

 色々な店から呼び込みの声が聞こえてくる。

 ものすごい活気だ。想像以上に人が集まったようだな。


「おお、アレクセイ殿。お久しぶりですな」


 声をかけてきたのは領主だ。

 護衛に囲まれ、辺りを見て回っているようである。


「いやぁお陰様で大盛況ですよ。商会からもすごく利益が上がっていると礼を言われておりましてな。はっはっは」

「そいつはよかった。で、俺の分け前だが」

「おお、そうでしたな。……えーと、こんなもんでどうでしょう」


 提示された額は金貨100枚だった。

 ん、なんか少なくね?


「私は場所代しか取っていませんので」

「ってことはたったの金貨500枚しか取ってないのか? 安過ぎだろ」

「いえいえ、店舗や仕入れ、その他諸々のリスクは向こう持ちなので私としては何もせず稼がせていただいています。それ以上貰えば罰が当たるでしょう」


 何とも欲のない領主である。

 そんなんだから商会に舐められるんだぞ。


「一店舗につき、どれくらい取ってるんだ?」

「金貨5枚前後、ですかねぇ」


 あまりの安さに驚いた。

 これだけ人がいれば、いくらでも稼げるだろう。

 その使用権がたった金貨5枚だと? なら参戦しない手はないぜ。


「じゃあ俺にも土地を貸してくれ」

「もちろん、構いませんとも。とはいっても人気の場所は余っていませんが……」


 領主から渡されたペラ紙には、地図の各所に売約済みという文字と共に赤丸が書かれてた。

 確かに空いている場所は少ないが……一ヶ所ある。

 それは遺跡の内部だ。


「ここはどうだ?」

「遺跡の内部、ですか。魔物が出るかもしれないからと店を開く者はいませんね。ここでよろしいのですか?」

「あぁ、まるごとだ。幾らになる?」

「そうですな。やはり目玉とも言える場所ですので……金貨10枚で如何でしょう」

「買った」


 即断即決で購入する。

 ぐふふ、儲けまくってやるぜ。

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