軍人、遺跡に着く
馬車に揺られて着いたのは、大きな石をうず高く積んだピラミッドのような建物。
周囲は石が規則正しく積まれており、何か儀式めいた雰囲気を醸し出していた。
こいつかガロンゾ遺跡か、でっかいな。
目の前には大きな穴が空いており、奥へと続いている。
馬車から降りると、領主から付けてもらった案内人が言った。
「アレクセイ様、こちらが入り口になります。長らく放置されてましたのでダンジョン化しており、魔物も多く出現します。危険ですのでお気をつけ下さい」
この世界では基本的にどこでも魔物が闊歩している。
だが人が住めばその周囲には魔物が出にくくなるらしい。
シヴィの分析では魔物を形作る魔素が、人の営みによって薄れるとか。
平たく言うと大量の人が長時間そこにいるだけで魔素が薄れ、それが長ければ長い程魔物が生まれにくくなるとの事だ。
この遺跡も元は人が住んでいたのだろうが、人がいなくなったので魔物が出てくるようになったのだろう。
「ありがとさん。あんたも気をつけて帰りなよ」
ぺこりと頭を下げて去っていく案内人。
とりあえず三日後に迎えを頼んであるし、それまではここで部品の発掘に励むとしよう。
「さて、どうするアレクセイ。すぐ中へ入るか?」
「入ってみないと何もわからんからな」
足踏みしてても始まらない。
ヤバかったらすぐに帰ろう。うん。
中へ入るとすぐに暗闇に包まれ、見えなくなってしまった。
これじゃ進まないな。明かりをつけるか。
『シヴィ、ライトをつけてくれ』
『了解』
パチンと音がして、辺りが煌々と照らされる。
セシルはそれを見て、驚いているようだ。
「おぉ、明るいな。魔術とは本当に便利なものだ」
魔術じゃないんだけどな。
説明が面倒なのでそれで通しておこう。
ジョブに『盗賊』をセットし、歩みを進める。
「敵だ、セシル」
目の前に魔物の気配を感じる。
立ち止まり、セシルと共に武器を構えた。
「ゥゥゥ……」
のそり、と出てきたのは崩れかけの人間だった。
一言で言うとゾンビ、それ以上でも以下でもない。
うえ、気持ち悪いな。
セシルも硬直しているようだ。
近づきたくないし魔術でぶっ飛ばそう。
俺はジョブに『魔導師』をセットして、ファイアランスを発動させる。
炎の槍がゾンビに命中し、一瞬にして消滅させた。
エンシェントゾンビを倒した。1125EXP獲得。
結構強かったっぽいな。名前とEXP的に。
まぁ瞬殺だったわけだが。
やはり魔術は楽でいい。
進むにつれ、どんどん暗くなっていく。
通路には石が乱雑に積まれており、掘る場所など見当たらない。
「ところでゴーレムの部品はどうやって見つけるんだ? そこらに埋まってるのか?」
「地下に埋まっている……とイザベラは言ってはいたな」
そうだっけか。あまり真面目に聞いていなかったな。
だったら話は早い。
シヴィにスキャンさせて、そこ目掛けて行けばいいんだからな。
『シヴィ、周囲のスキャンをしてくれ。下へ降りる階段を探してくれ。地下部分は特に入念にな。部品っぽいものが多く集まっている場所にはマーキングも頼む』
『了解、広域スキャン開始します……地中の解析まで終わらせるには25分42秒かかりますがよろしいですか』
『構わない、やってくれ』
広域スキャンは時間がかかる。地中まで含むとなればなおさらだ。
それまでは適当に歩きながら進むとしよう。
遺跡は広いが中心部に行けば端から端までスキャン出来そうだし、とりあえずそこを目指すとするか。
「ァァ……ゥゥゥ……」
おっ、またゾンビだ。
ファイアランスを一発かまして歩き出す。
ここは魔物が多そうだし、魔導師のまま進もう。
「む、曲がり角か……どうするアレクセイ」
道は二手に分かれていた。
中央部に行きたいわけだし、ここはいっちょ強行突破と行きますか。
俺は壁に手を当て、思い切り押した。
ズズズ、バキバキバキ……と音が鳴り、壁が崩壊していく。
よし、これで通れる。
「さ、行くぞセシル」
「あ、あぁ……」
呆れながらもセシルは俺についてくる。
その後も壁を破壊しながら中心を目指す。
しばらく進んだ俺は、シヴィに声をかけた。
『そろそろ中心か?』
『えぇ、並行して行っていた大まかなマッピングも終了しました。付近に下階層への階段があるようです』
辺りを見渡すと、確かに階段がある。
その前に立っているのは色違いゾンビだ。
金色の王冠をして棺桶を引きずっている。
階層ボスってやつだろうか。
鬱陶しいから先に潰しておこう。
ファイアランス! ちゅどーん! どかーん!
巨大な爆発を起こし、ゾンビは消滅した。
ファラオゾンビを倒した。5254EXP獲得。
よっしゃ撃破。焼け焦げた地面を見下ろしていると、シヴィがピーと音を鳴らした。
『スキャン、完了しました。データ送ります』
『おう、おつかれ』
頭の中に画像データが送られてくる。
……ふむふむ、やはり部品は地下に埋まっているようだな。
どうやらある程度固まって埋まっているポイントがあるようだ。とにかく片っ端から掘っていくとするか。
俺はセシルを連れ、階段を降りていくのだった。




