表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒波にもがけ、少年  作者: 刻露清秀
黒キ翼の冒険譚〜出会いと別れと一夏の恋〜
72/80

対峙すること⑨

「大虎」


懐かしい声がした。声の主は少年と青年の中間くらいの年頃の、よく日焼けした男。


「見ろよ、あれが皇帝のいる島だ」


黒キ鳳である。三百年以上前のこと。武人たちはまだ南東諸島の蛮族にすぎず、氷上帝国は怨霊と疫病と争いが跋扈する国だった。初代大将軍はそれを憂いて兵を挙げ、鳳と大虎は一介の将に過ぎなかった。


 混沌とした時代だったが、希望に満ちていた。初代大将軍という旗印のもと、なんの躊躇いもなく命をかけて守りたいものを守れる時代だった。


「皇帝さんの役に立って、サクッと領地、頂いちまおうぜ! 」


不遜に笑う鳳は薄汚く、若々しかった。


「鳳、お前……」


そう答える大虎の声もまた若い。これは記憶の断片だ。


「深刻な顔してどうした、大虎? 」


口をついて言葉が出てきた。


「お前は今度の戦いで死んだらどうする? 」


鳳は腹を抱えて笑った。


「そんなの決まってら。生まれなおして好き勝手やるわけさ」


「でも生まれなおして、とんでもない世界だったら? 」


「そんなの俺が叩き直してやるまでよ。だがな大虎、死んだらなんて縁起でもないこと言うんじゃねえ。この世界は命あっての物種さ」


……そうだった。


 消える直前、大虎の瞳が少年を捕らえた。鳳、お前はそこにいるんだな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ