対峙すること③
センジョと翼は引き離され、お互い怨霊に囲まれている。
センジョを取り囲む怨霊たちは海嶺に、翼を取り囲む怨霊たちは甲冑で顔を覆った青キ大虎が中心にいる。翼と甲冑の男の目が合った。男は寂しそうな顔で笑っていた。
そんな顔しないで欲しかった。笑う時は心から笑って、寂しい時は泣けばいいのに、大人たちはそうはしないのだった。翼は俯いた。
俺、まだ大人じゃないから、そういう難しいことわかんないよって思ってるのに、世界はいつだって難しいことだらけ。難しいことを難しいまま、曖昧にしている大人を見ると焦ったくなるけど、たぶんそうするしかないって気づいてる。もう子どものままじゃいられないから。
子どものままでいたいな。なんでそれじゃダメなんだろう。みんな仲良く、自分がされて嫌なことはしちゃいけませんって言われて育ったじゃないか。その時からもう間違えてたのかな。仲良くできてるってのは建前で、みんな子どもの頃から我慢に我慢を重ねて生きているんだろうか。……そうかもね。
「翼! 」
センジョが叫んでいる。
「センジョさん」
センジョは怨霊を押しのけるようにして、懸命にこちらに近づこうともがいていた。
「俺を置いて逃げろ!お前は助からなきゃいけない!お前は俺とは違う。俺は恥知らずだ。この手で何人も殺したくせに民族の統一だの夢だの喚いてる偽善者だ。でもお前は「センジョさん」
翼はセンジョの言葉を遮った。
「もういいです。ありがとう」
少しだけ、翼にもわかってきたことがある。
「自分で決めました。関係ないふりはしないって」