表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒波にもがけ、少年  作者: 刻露清秀
黒キ翼の冒険譚〜出会いと別れと一夏の恋〜
64/80

対峙すること①

 川の神の案内で、怨霊が通るという場所まで移動すると、センジョ一行は草むらに隠れた。足が痺れ我慢の限界に達しかけたとき、


「来たぞ! 」


とシイ神さまが言った。


 整然と隊列を組み、川に突き進んでくる怨霊の群れを川の神が阻んだ。


「死者は蘇らぬのが世の定め。墓に帰れ下郎ども! 」


川の神は多面多臂の巨大な姿へと変化し、腕を一振りして先頭から三列分の兵士を吹き飛ばした。


 兵士たちは果敢に槍や刀で立ち向かったが、たちまち薙ぎ倒されて消えていった。怨霊の群れは総崩れになり、川の神を倒そうと駆け寄る兵士と、逃げ戻ろうとする兵士の間で押し合いへし合いの大騒ぎとなった。


 その間にも川の神は兵士をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、ある者は地面に叩きつけ、ある者は川に引きずりこんで、兵士の数を減らしていった。


 その時ある声が聞こえた。


「弓兵構え! 」


指示を出しているのは、長ノ海嶺であった。翼とやり合った青キ大虎の部下である。


「放て! 」


これには流石の川の神も閉口させられた。斜め上に向かって放たれた矢は、鏃の重さで放物線を描く。一つ一つの命中率はさほど高くなくとも、雨のように降らせることで、敵を仕留める作戦だ。


 川の神は後ろに隠れているセンジョとシイ神さまを守るため、あえて矢を受けた。血が川を赤く染めた。が、川の神は動じなかった。涼しい顔で、弓兵に向かって手を伸ばす。可哀想に、勇気ある兵士から犠牲になっていった。


 その時である。甲冑の男が、川の神の指を切り落とした。


「化け物が」


そう不遜に言い放ったのは、青キ大虎に相違ない。その姿は彼にまつわる言い伝えそのものだった。


「今だセンジョ! あいつだ! あいつに向かって刀を投げろ! 」


川の神に任せきりで、大人しくしていたシイ神さまが叫んだ。


 全く。都合が良いように使いやがって。内心舌打ちしつつ、センジョは刀を投げた。刀は真っ直ぐに大虎へと飛んでいき、胸当てに当たった。


 刀はたちまち光を放ちながら、人の形になっていく。時が止まったように、誰も身動きしなかった。首が体目掛けて飛んでくるという珍事もおこしながら、光は半透明の人間になった。


 翼は地面から浮かんで、目を閉じていた。いつもの紺色の衣服ではなく、大虎のような甲冑をつけている。甲冑は漆黒に鳥の装飾。ところどころに金の飾り。羽を模した腕飾り。頭帯は鮮やかな牡丹色。甲冑の下の衣服も牡丹色である。煌びやかであるのと同時に、全体的に淡い色の衣服を着た怨霊たちと対照的である。


 翼は目を覚ました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ