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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転移はグルーガンとともに

作者: ゴロタ

誤字脱字はいずれ手直しおば………。

 



 俺があちこちから異臭が立ちのぼる、薄暗い裏路地へと降り立ったのは、今から約10分ほど前のことだった。




 ***




 その日もいつもと変わらず、サービス残業を終わらせると、コンビニで弁当と缶ビールを購入し、安アパートの自分の部屋の扉を開けた瞬間、見知らぬ男が部屋の中央で正座をしており、開口一番こう言った。


「梶田 涼希様でございますね? 特例ですが、貴方にはこれから異世界へ転移して頂きます」

「はっ?」

「つきましては、地球の物をひとつだけ異世界に持ち込めますが、いかが致しますか?」

「はあっ?」

「何でも宜しいですよ。よく皆様がお持ちになられるのはスマホですね。なんと電力は減らないという特別仕様。その他ですと拳銃を選択された方や、地球と繋がる鞄などを選ばれた方も居りました」

「……………えっ? ドッキリ? それとも疲れてて既に夢の中?あー…………もしかして、また駅で寝ちゃったのかな…………」

「残念ながらドッキリでも、夢でも御座いません。 しかしながら貴方は少し、理解能力が衰えているのではありませんか?」

「ううっ…………夢でもディスられる俺って………。 いや、待てよ?別に夢なら気にしなくて良いんじゃ………………」

「日本人って、毎回同じ様な反応ですね。ご自分が理解できない現象が起こると、直ぐに夢扱いですよ。全く困ったものです」


 見知らぬ男は、これ見よがしに目頭を揉みながら、やれやれといった表情で首を振る。

 いや、疲れてるのは俺の方だし、夢の分際で中々ふてぇ事を言いやがるな、コイツ。


「まぁもう夢でも何でもいいです。早く選んで下さるのならば」


 何か態度が投げやりになって来たな。流石俺の夢、所詮この程度のクオリティーですよ。



「よっこいせ」


 俺は声を上げながら、床にドカリと座り込むと、プシュッと音を立て缶ビールのプルトップを開けて中身を一気に煽った。


「んぐっ……んぐっ……んぐっ……ぷはぁっ!」


 くぅぅぅうう…………美味い、生き返るっ!毎日この1本のために働いてるんだよな。


「ちょっと? もしもし? ご自分だけビールを呑むなんて狡くありませんか?私だって早く終わらせて一杯引っかけたいんですよ。なので早く決めて下さいませんか?」


 そう言うと見知らぬ男は、胡乱げな眼差しで俺を見詰めて来る。

 俺も少し考えた。適当に相手をして、直ぐにお引き取り願おうと。相手をしないと帰りそうにも無い雰囲気を男から感じたのも確かだ。




 缶ビールを呑みながら俺が出した答えは、部屋の隅にポツンと置かれた【グルーガン】であった。


 昔同棲していた彼女の置き土産であった。

 それが唐突に眼に入っただけで、グルーガンを特別意識して選んだ訳では無い。



 グルーガンとは、固形樹脂を熱で溶かし液状にして出せる道具で、主にフラワーアレンジメントなどで使用する接着剤である。

 もちろんフラワーアレンジメント以外にも、用途はあるのだろうが、それくらいしか俺は用途を知らない。


「グルーガン……………」

「はい?」

「だ・か・ら!………異世界に持ってく物」

「ええ? グルーガン、ですか?」

「おう。グルーガン」

「………………………………………………………………………」


 見知らぬ男は、部屋の隅にあるグルーガンを見詰めてしばし黙り込んだ。


 そして男は「解せぬ」という表情のまま不満そうに了承した。


「………………………わかりました。 が、ひとつだけお伺いします。 これはグルーガン(・・)と呼称してますが、銃では無いのはご存じですか?」

「あん? んなのもちろん知ってるっつー…………の……ぉ………」


 一瞬、馬鹿にされたのかと思い、男に喰って掛かろうとしたのだが、予想外に男は真面目な表情で問い質して来ていたので、勢いを削がれてしまった。


「では、いまこの時より貴方の転移術式を開始致します。ちなみにグルーガンの固形樹脂である、グルースティックは自動補填となりますのと、その他にも色々と仕掛けを施しましたのでご安心下さい。 **※★♂#%¢∞♂℃¥≦☆§$☆@*…………」


 はあ、どうもお世話様でーす。

 やれやれ。何やら呪文?みたいなものを唱え始めたから、もうそろそろこの茶番も終わりそうだなっと。


 今日の弁当は俺の大好物の焼肉弁当だ。

 ピリッと辛いタレが食欲をそそる一品で、付け合わせのポテトサラダを肉で巻いて食べると、口のなかで絶妙な美味しさのハーモニーが奏でられる。


 俺が胸を高鳴らせて弁当の蓋を開けた瞬間、見知らぬ男の声も同時に終わった様だ。


 パカッ……………………………。

「………¥★※§☆@ 術式解放!」



 ピカッと光ったと思ったら、俺は見知らぬ野外で棒立ちしていた。




 しかもまっ()で、だ。



 そして現在の俺の状況は、どうしたらこうなるのか理解不能なほど最低だった。



 何故かお情けの様に、靴だけは履いていたのだが、手にはグルーガンのみ持っていただけで、他は何も装着していなかった。


 うん。

 この格好、完璧変態だ。


 俺には露出癖は無かったはずだし、靴だけは履いているという、更に変態を極めた感あふれる姿に、絶望を覚える。

 現実逃避したい状況に、俺は下半身のとある部分を無意味に回転させたりしてしまう始末。


 正にこの場は混沌(カオス)と化していた(ただし俺の中だけで)



 そんな微妙な空気感を引き裂く悲鳴が辺りに響いた。



「キャーーー!!」



 女性の悲鳴で直ぐに正気に返った俺は、グルーガンを持っていない方の手で、回転させていた己の股間を覆い隠した。見知らぬ女性に、俺の奇行を目撃されてしまったのだと思ったからだ。


 俺のジュニアの片手で事足りる大きさに、若干男としてのプライドを削られたのだが、猥褻物陳列罪で警察のお世話になるよりましだと思い直し、そのまましっかりと握り込んだ。



「ちょっと放してよっ!」

「へへ、いいだろニーナ?1回ヤらせろよぉ……」

「ふざけないでよ!誰があんたになんかヤらせるもんかっ!」

「ケッ! 無料(ただ)じゃヤらせねぇってか? 娼婦のくせしてお高くとまってんじゃねえよっ!!」


 バシッ………。


「痛っ! や、止め、止めてよ!」

「大丈夫だ。直ぐに好くなって、お前の方から欲しがるようになるからよぉ…………」




 ひっ………ひえぇぇぇぇ…………。

 な、なんか目の前でとんでもない事が始まったぞ、おいぃぃぃぃ?

 こんな野外で女性を襲い始めるって…………世紀末も過ぎ去って等しいのに、日本はいつからこんな無法地帯になったんだ?


 えっと……助けないと。け、警察に電話を…………。

 って、待てよ? 不味いっ!!ちょっと冷静になろう。己の現在の状態を思い出せ!


 …………………………………うん、うん、あっ! 俺、まっ裸だった。


 警官呼んだら、速効捕まるの俺の方が先なんですけどぉぉぉぉおおおお!!!

 猥褻物陳列罪で牢屋で臭い飯とか嫌すぎるっ!

 テレビのレポーターとかに家族が声変えて、コメント求められるパターン!

 断言するが、まず間違いなく妹の菜摘は調子に乗る!ノリノリで「ええ、いつかはやると思ってましたぁー」って、絶体言う!そういう愉快犯的思考の持ち主だから!

 そんな事言われたら、俺は社会的に抹殺されるっつーの!

 ってことは、ここはひとつ全力で見なかったふりをするのが、ベストなのでは無いのか?



 いや、しかしっ………あの女性を見捨てるってのは、どうにも寝覚めが悪い。俺みたいな小者は、スルーした後の良心の呵責に耐えられそうも無い。


 よ、よーし。

 警官を呼ぶのは中止しよう。スマホも持っていないこの状況下では、俺が自分で呼びに行かねばならんが、そしたら俺の方がお縄につく事になりかねん。それだけは避けなければ。




 俺の現在の装備は靴とグルーガンだけだ。

 後は生まれたままの姿の、貧弱…………とまではいかないと思うものの、俺の外見って強そうには見えないんだよなぁ………。その上まっ裸かぁ…………。最悪な結果しか想像でき無いんだがなぁ………。


「いやあっ! 止めてっ!だ、誰かっ!誰か助けてっ!」

「もう諦めろよぉ……。こんな萎びれた裏路地、誰も居やしねぇぜ………」


 俺がグダグダ考えている最中も、事態は最悪な状況へと進行していた模様で、女性を襲っている男はカチャカチャと音を立てながらベルトを外している様だ。


 クソッ!

 もうこれ以上グダグダやってる暇は無いっ!


 俺はグルーガンを片手に構え、女性を襲っている男の頭部に狙いを定めて思いっきりトリガーを引いた。


 すると内部で熱せられて、液状に溶けた固形樹脂が、勢いよく男の頭部へと降り注いだ。


「うぎゃぁぁぁぁぁ!!! 熱い熱い熱いっっっ!!!」


 溶けた樹脂はめちゃくちゃ熱いらしく、男は頭を押さえたまま地面をゴロゴロと転がりながら悶絶した。


 その隙に襲われていた女性を助け起こす。


「大丈夫ですか? 早くこちらへ!」

「きゃっ! だ、誰だか知りませんが、助けて下さって有り難うございま…………す……………?」


 助けた女性の声が尻窄みになった。


 …………………………………………………うん。


 しょうがない。助けてくれたと思った相手が、まっ裸だったらそりゃあ新たな危機かと危ぶむよね。


「こ、こんな格好ですが怪しい者では無いんですっ!」

「…………………………………………」


 一応弁明してみたが、すればするほど怪しさは増していく。うぐぐっ………き、気まずい。




「ぐっ…………痛っ……ちく、しょ…………」


 助けた女性と無言で見つめあって居ると、グルーガンで攻撃した男が、頭部を押さえながらも立ち上がろうとしていた。


「や、やばい……………」

「きゃあっっ!」


 俺は女性の手を掴むと、無我夢中で男から逃げ出した。

 さっきは男が背を向けていたから、グルーガンを浴びせられたけど、正面からじゃ避けられるだろうし、男は筋骨隆々なマッチョマンであった。



 俺じゃあ勝てる気がしねぇっ!!



 片手にグルーガン、もう片手に女性の手を握り爆走する俺。


 うん。今の状況、何も知らない人に目撃されたら1発でお縄を頂戴する事態になりかねない危険を孕んでいる。


 だって……………ねぇ?


 大事な部分、丸出しだぜ? 俺の慎ましげなジュニアは、ブルゥゥンブルゥゥンと上下左右に舞い踊っている状態だ。


 落ち着かない…………だ、誰かぁ………ギブミーパンツ!!!




 ***



 裏路地裏路地を走り抜け、たどり着いたのは少し開けた空き地の様な場所であった。


「ハァハァ…………ふえっぐ………もう……もう無理だ。走れない……………」

「そ、そうですね。…………………私ももう無理です…………で、でも………何とか逃げられました………」

「ハ、ハハッ…………。良かった」

「はい。た、助けて下さって………有り難う………御座いました」

「いやいや、あの状況で助けないって選択は無かったからさ」


 女性が襲われていた時に、若干迷った事など少しも出さず、調子の良い事をつい言ってしまう。


 だってさっきは夢中で気付かなかったけど、助けた女性はものすっごい美女だったのだから。

 そりゃあこんな時間に出歩いてたら、劣情を催された男に襲われちゃうって!

 と、いう様な容貌をしている。かくいう俺も、息を乱しながら上目使いでお礼を言われると、あらぬ部分がおっき(・・・)しちゃいそうで不味い。


「あっと! そ、それでその、君は前を隠した方が良いじゃないかな?」


 目を逸らしつつ、彼女の服の乱れを指摘してやる。 彼女のためだって言いたい所だけど、実際は自分のためだ。魅惑のボディを、そんなに無防備にさらされると困るんだよ……………主に俺の隠すこともままならない下半身が。


「あ、きゃっ! ごめんなさい……………」


 可愛らしい悲鳴を上げると、女性は慌てて開きっぱなしの上着を掻きあわせた。


「………………い、色々と有り難う御座いました。 あの、良かったらこれ………………」


 恥ずかしそうに差し出された物は、女性が頭に被っていた白い布であった。


「えっ? これ貰っても良いの?」

「は、はい。 助けて頂いてこれしかお渡し出来ないのは忍びないのですが、この布を腰に巻いて隠されたら、と思いまして…………」

「あっ! どうも有り難う~。これで警察に通報されないと良いけど…………」


 上半身裸はままあるよね?

 暑い日とか………いや、常識的に考えて普通は道端では脱ぎませんが、通報とまではいかない…………筈だ。


「…………あの、警察とは一体何の事でしょうか?」

「えっ? し、知らないの?」

「ええ、初めて聞きました」


 なっ……何で? 警察知らないとか、一体この女性はどこの人なの?

 確かに彼女の髪は、この薄暗い中でもわかるくらいの金髪だから、日本人じゃ無いのはわかる。でも流暢な日本語を喋っていらっしゃるので、在住歴は長いと感じたんだけど。


「えっと……貴女は日本に住んで何年目ですか?」

「? 日本? それってどこですか?」

「ええっ? 日本を知らないの? めっちゃ今、日本語喋ってんのに???」

「…………おかしいですね?私が喋っているのは、大陸で共通であるクライム語ですし、貴方だってこのクライム語で私と会話をしていますよ?」


 な、何ですと!?

 クライム語とな? どこの原語だ?聞いたこと無いぞ?

 それに日本を知らないって…………どゆこと?


 その時、俺の脳裏にとある言葉が思い起こされた。


【特例ですが、貴方にはこれから異世界へ転移して頂きます】


 んあっ!?

 確か、俺の部屋に不法侵入して来た見知らぬ男が、異世界がどうとか言ってたけど、まさかここの事じゃないだろうな?

 しかしこの女性がわざわざ俺に嘘を付く理由は無い。


 って事は………本当にここって異世界!?


 キョロキョロ周囲を見回すが、薄暗いせいでよくわからない。ただ、飛び抜けて高い建物が無いのと、電柱や電線も無いのは直ぐに確認できた。


「マ、マジか…………………。屈折5年、漸くブラックな会社の勤務時間にも慣れ親しんで来た矢先にこれか…………………」


 俺の声音が心底途方に暮れた声だったのだろう。女性が微笑みながら、目の前にスッと差し出してきた物が目にうつる。



 ……………………………………白い布であった。



 ああ、はい、すみません。

 いまだにまっ裸でしたね。お見苦しいものをぶら下げながら落ち込んでてさぁーせん。


 無言で受け取り、腰に布を巻く。

 うん。やっと隠れたよ。俺のジュニア。


 しかし………しかしだ。

 女性が頭に被っていたという事を加味しても、あり得ないほどの緊急事態が発覚してしまった。


 この布……………………ちと短すぎはせんか?


 俺のジュニアは、片手で覆い隠せる程度の大きさですが、布の面積からいって、歩くだけでチラチラと布の端からこんにちはしてしまいませんかね、これ?


 いや、だが、目の前の破れた服を片手で押さえてる女性に、もっと他の布をくれとお願いするのは、流石に鬼畜の所業だろう。


 うん。諦めよう。両足を擦り合わせながら歩けば、何とか見えないだろ。多分。


「布………どうもありがとう」

「いえ、困ったときはお互い様ですし、貴方には危ない所を助けて頂きましたので、ささやかですが、その布が私からのお礼の品です」


 その後俺と女性は、お互いにペコペコとお辞儀をしあいながら別れたのだが、さて、これからどうしようか。


 現在の俺の装備は、以外と攻撃力のあるグルーガン、なんの変鉄もない靴、そして心もとない白い布の3点のみだ。


 ははっ。

 これ、詰んでね?

 俺の未来野垂れ死にじゃね?



 そんな俺が未来に悲観しながらトボトボと歩いて居ると、突然背後から大声が聴こえた。


「おい、そこのお前! 少し止まれ!」


 うるさいなぁ………。

 まぁ、今度は誰かが襲われるって感じじゃないし、俺も一応下半身の露出には至っていないはずだから、関係ないだろ。


 呼び止められている筈がないので、更にトボトボ歩いて居ると突然強い力で肩を掴まれた。


「おい、貴様っ!! ブレアルド様が止まれとお命じであったのに、何故止まらぬ?」

「はっ?」


 えっ?

 誰? てか、何? さっきのあれ俺に言ってたの? 知るかよっ!こちとら未来に希望を持てなくて悩んでんだよ。ブルーデイってやつ何だからほっといてくれよな。


「はっ? とは何事だ? 貴様………もしや大侯爵家であられる、ポンポコピー侯爵家のブレアルド様を知らぬ訳ではあるまい? ご悋気に触れれば恐ろしい扱いを受ける事にもなるのだぞ?」

「ポ、ポンポコピー?」


 ぶふぁっっっ!!!

 まさかポンポコナーとかジュゲムとかは出て来ないよね? ぶははははははっ。


 や、止めて!

 腹筋がっ………俺の貧弱な腹筋が打ち震えちゃうからっ!


 下を向きながらカタカタプルプルと、笑いの波を我慢していると、何を勘違いしたのか、近寄ってきたオッサンが諭すようにこう囁いて来る。


「大丈夫だぞ。逆らわなければ、金払いは良いお方だ。貴様のような男娼にも、ちゃんと事が済めばお金を支払ってくださるだろうからな」

「はっ?」


 俺の聞き間違えか?

 目の前のオッサン、何て言いました?

 男娼とか何とかって…………………どゆこと?


「あの? 男娼って?」


 オッサンに聞いてみる。聞き間違いであってほしいと思いながら。


「うん? 貴様、男娼であろう?」

「ええっ? 何をもってそう断言する?」

「何をもってって…………。貴様のその格好からだが?」


 俺の格好………………って、うわぁ…………うん、納得だ。確かに現在の俺の格好じゃあ、男娼と間違えられても不思議じゃ無かった。

 しかもここ、異世界らしいからね。


「上半身裸で尚且つ、その様な短い布を腰に巻き、歩いておる貴様のナニがチラチラ見えるそのふしだらな姿を、ブレアルド様はいたくお気に召されたご様子である」


 おぎゃあーーーーー!!!

 そんな姿をお気に召すなっ!むしろ不味いものを見てしまったと、目を逸らす位の気遣いと常識をプリーズ!!!


 高速で首を左右に振り、思いっきり拒否の意思を伝えているが、オッサンは一向に退かない。


「ええい! 何をカマトトぶっておるのだ!その様な格好で彷 徨(うろつ)いておったのだから、それ目的であろうに、お金は必ず支払うと申しておろう? ブレアルド様をこれ以上お待たせる訳にも行かぬのだ! ゼップ!こやつを担ぐのだ!」

「はっ! 了解であります!」


 意地でも着いていかない姿勢を崩さない俺に、業を煮やしたのかオッサンが鎧を着たムキムキマッチョマンに、俺を担げと指示している。てか、さっきの強姦魔といい、この鎧の男といい、この世界って、体格の良い奴ら多すぎない?


「ひえぇぇぇぇええええ!!!」


 うん、わかってた。

 この世界のマッチョマンとくらべると貧弱であろう俺じゃ、まず間違いなく力で敵うはずがないって事を。


 簡単に肩に担がれて、まるで荷物の様に運ばれる俺。


「ひっ……人拐いっ!犯罪者っ!変態っ!放せー!」


 ムキムキマッチョマンに担がれながらも必死に抵抗した。敵うはずがないって悟っていても、一縷の望みに賭けた諦めの悪い俺。



 大方の皆さんはわかってらしたと思いますが、結果はやはり無駄骨であった。



 豪奢な馬車に無理矢理連れ込まれると、あろうことか、中で待ち構えていた若い男の膝に座らされた。


「ふふっ……。男娼にしては余り慣れておらん様だな。 調教のし甲斐があるな」

「ちょ、調教!?」

「うん? ふふっ………。その様に上目使いで見て来るとは………さては待ち遠しいのか? 大丈夫だ。期待には答えてやるぞ?」


 ぎゃひーーーーー!!!

 期待なんてこれっぽっちもしてないっ!

 上目使いなのも、俺よりあんたの座高が高いせいだったつーの!



 逃げたい…………この空間、いやこの危険人物からめっちゃ逃げたいのだが、いかんせん俺の貧弱ボディでは、背後からガッチリとホールドされてしまっているこの状況では、まず振りほどけない。それにより逃走は不可。


 これは隙を見て脱出を図るしか無さそうだ。


 プリズン○レイク並の脱出計画を、大至急練らねばなるまい!!



 俺の後ろの貞操のためにも!!!





オマケのその後


涼希⇒イケメンのブレアルドに後ろを狙われ続ける。 ポンポコピー侯爵邸より逃げようと計画するが、すべて挙動に出るため、直ぐにバレる。

ブレアルドに美味しく頂かれてしまう未来しか見えない。


ブレアルド⇒男娼だと思った涼希が、初物だと知って狂喜乱舞。

最初は黒髪黒目が珍しかったから、手駒に拐わせたのだが、涼希の魅力ブレアルドにしかわからないにメロメロで溺愛している。

それまではヤり捨て上等の、ヤリチン野郎だった。


ニーナ⇒涼希に助けられた後も、元気に娼婦ライフを送っている。

護身グッズも購入して、今後襲われても万全の様相を呈している。


オッサン⇒金が全て。金のためなら犯罪も辞さない。金があれば決して裏切らない。

だが裏を返せば金で裏切るとも言える。




オマケの小話


「く、くらえっ!!」


俺は唯一持っていたグルーガンで、ブレアルドのやにさがったイケメン面へと、攻撃を仕掛けた。


「うわっ! リョーキ! 危ないな。 それが凄く熱いモノを先っぽから出すのは知っているだろう?」

「ううっ………」


もちろん知っている。だからぶっかけようとしたのだ。

ブレアルドが熱さでのたうち回っている間に逃げようと計画したのだから。


「ふふっ………。そんなに熱いモノが好きなら、ほら私のここも熱くなっているよ?」

「ぎゃあーーー!! こんなまっ昼間からそんなモノを露出させるなよっ!?」

「おや? ではまっ昼間では無い夜ならばいいのかい?」

「誰もそんなこと言ってねぇーし!」

「ふふっ………そろそろ私のコレが欲しくなったんじゃないか?」


ぶええっ………。

ブレアルドの奴、そんなモノを俺に擦り付けて来るなっ!

欲しくなるわけねぇーだろがっ!!


グルーガンを今度はブレアルドの手に向かって発射する。


「うっ…………熱っ!」


ふははは。

今度は見事に命中したぞ!どうだ!熱かろう?これに懲りたら、俺に変なモノを押し付けるのは止めるんだな!


「ふふっ………。熱いなぁ…………でも、このプレイも回数が増えると結構気持ちよくなって…………」


「おぎゃあーーーーー!!! お巡りさーーーーん!!! ここでーーーーーーす!!!」



最初は熱さで顔をしかめていたブレアルドであったが、何度も熱さを体験していると、何かに目覚める兆しを見せ始めてしまった今日この頃であった。




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