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02

魔族本来の姿から、ジャスティスはわざわざ人間の姿に変わって人間サイズの城の自室で魔族についての書類の作成をしていた。他にもエルフ一族からの苦情や不可侵の条約についての確認など、いろいろとやることがある。


「この書類は...俺への不満かよ!?」


机の上に山積みにされた書類を取って読んでいると、こういう物もよくある。魔王として劣っているや、やるべき事ができていないなど様々な苦言や意見があっちこっちから聞こえてくる。


「さすがに()()ティ()()思考の俺もダメ出しばっかりで拗ねるぞ...それに、相手にするのも面倒な“勇者”が来たら“魔王の仕事”はさらに増えるし、今日は来るなよ?」


ジャスティスのセリフに対しツッコミたい事も多々あるが...この150年で仕事が終わらないことは何度もあった。

どうか書類の山を片付けている時に勇者が来ないことを俺はいつも願っているくらいだが、来るものは来てしまうし、書類の整理がやっと終わったと思えば勇者が魔族の領土に侵入して来て、今までの仕事の疲れを隠しながら相手をしたりと...本当に“魔王の仕事”は終わりが見えない。

休憩も休みなど無いほどだ。だから俺はこの忌々しい人間サイズの城から逃げ出すんだ。それに、どうして仕事をするのにわざわざこの城の中で、人間の姿に変わってやらなければならないんだと、いつも思う。


「くっそー!終わんねー!!」


ジャスティスは机の上にそびえ立つ書類の山々を睨み付けながらも、確認した書類に魔王の印を押していくという地味な作業もこなす。何故、本来“力”ですべてを決める魔族が愚かな人間みたいな事をしなければならないんだ!

それを考えただけでもイライラする。


「エヴィルの奴、俺がいない間に書類の山を増やしたな!」


机の上の書類の山が2つ増えているのを俺が見逃すはずがない。

こんなことは俺よりも絶対にエヴィルの方が向いているはずだ。何故、力ばかりの俺がこんなことを...書類に書かれた内容の確認も程ほどに、魔王の印を押す作業のスピードを上げた。


「あーー!!魔王なんてやめてやるーーー!!!」


そんな事をジャスティスが叫んでいると、自室のドアがノックされて扉が開く。この気配は良く知っている。そのためジャスティスは慌てることもなく、ただ嫌そうに何だと低い声で聞いた。


「“何だ”じゃありませんわ。あなたは魔王としての自覚があるのですか?」


扉が開くのと同時に、いつもの小言を言うのは魔王 ジャスティスと同様に女同士で王妃の座をめぐって闘いを勝ち抜いた勝者、リオネリア・クライシスである。

リオネリアはジャスティスにとって妃ではあるが、恋愛感情は無い。ただ次の魔王となるかもしれない子孫を残すのも魔王の仕事でもある。だから、彼女との間にはすでに息子が1人いる。


「たまには息子に闘い方でも教えてやってください、魔王様」


ーーー《お前も我らと同じだ。破壊を求めている》


そんな暇あるかー!とジャスティスはその怒りを言葉ではなく黒の魔力で表した。魔王であるジャスティスの後ろにはオーラのように黒の魔力が姿を現している。

それだけで空気が変わる。周りの空気はピリついて冷めきり、黒の魔力に触れられた物は音をたてながら崩れ落ちていく...が、この城には何のためにあるのか理解できない外部の声や意思を阻害する結界やどれだけ壊されてもすぐにもとに戻る力がはたらいている。


ーーー《早く偽善者などやめて破壊者となれ、その黒の魔力ですべてを壊せ》


「うるさい。今すぐ俺の前から消えろ」


ここに魔族の頂点に立つ魔王がいる。普段の彼からは想像できない声と鋭い視線は、女の戦いを勝ち抜いた王妃でさえも恐れを感じるほどだ。これ以上、ここにいるのは危険だ。それが理解できないほどリオネリアは愚かではない。

出すぎた真似をいたしましたと頭を下げると、リオネリアは一瞬だけ魔王であるジャスティスを心配そうに見詰めると部屋を出た。


「黙れ!!」


ジャスティスは感情に任せて机を叩き付けてひっくり返した。山積みの書類は舞い踊って落ちていく。叩き付けられた机はジャスティスの力に一度壊されはするがすぐに元の形に戻った。

うるさい、五月蝿い!ジャスティスは頭に直接響いてくる声に苛立ち、まるで暗闇の底からきこえてくるような声の主に黙れと言う。


「“星の意思”...お前の好きにはさせねぇからなっ...!」


“魔王”以外に誰にも聞こえない“星の意思”の声は、暗闇の星(ダーク・スター)のためにこの星で一番強い者の心を蝕み喰らう。

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