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おちこぼれ王女とアルビルの書  作者: kymmt
第一章 キーナ国
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第八話 亡命の協力者

ブクマありがとうございます!

今回は新しい登場人物が出てきます。

楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

「それで、今どこに向かっているのかしら?城下町の中心に来ているようだけど?」

「ああ、それはこっちに入り口があるからな」

「……こちらに?一度ディオースから出るのではないの?」

「いや、出ないさ。だからこそ、今までばれていないのさ。……おっと、そこだ」


 そう言って指さした先にはありふれた店があった。


「え?ここ?」

「……兄さん。騙されてるんじゃないの?」

「いやいや、ここだぞ」

「でも、だって……」


 そう言う二人の目に見えているのは、お店で普通に買い物をしている客だ。


「まあ、お前たちが疑うのも無理はないさ。俺だって最初は半信半疑だったからな。まあ、取り敢えず店の中に入ろうぜ。……ここにいたら目立っちまうしな」


「そうね」

「確かに……」


 そう言って恐る恐ると店の中に入ると、そこには所狭しとガラス細工が置かれていた。


「すごい……」


 シルヴィはポカンと口を開けて辺りを見まわしていた。

 一方、イリニは……。


「まさか……」


 何かに驚いていた。


 ロクはそんな二人を放置してカウンターに向かう。


「いらっしゃいませ」

「すみません。ガラス玉を2個頼んでいた者なんですけど……」


 ロクがそう言った途端、カウンターにいた人の目が変わった。


「……お客さん、名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「ロクです。……あ、あとガラス玉を1つ追加しても大丈夫ですか?」

「そうですね。店主のお眼鏡に合えば、ですかね。でも、ここのところ失敗続きで。最近はめっきり数が減っているんですよ」

「そうですか。……でも一応お眼鏡にあうかどうかは試してください」

「了解しました。……準備にもう少し時間が必要ですので、奥の部屋でお待ちください。もちろん、お連れ様もご一緒に」


 ロクはその言葉通りにシルヴィとイリニを連れて奥の部屋で待つ。


「すごかったですね。あんなに綺麗なもの見たことないです」

「ええ、この店には素晴らしい職人がいるようね」

「やっぱり、イリニ様から見ても?」

「ええ、そうよ。あれは人の領域では作れないものだもの」

「そうなんですか!そんなモノを見れたなんて幸せです」


 シルヴィはうっとりと先ほどまで見ていたガラス細工を思い出す。

 一方、イリニは何か真剣な表情を浮かべて先ほどから気になっていたことをロクに尋ねる。


「ねえ、あなたって、一体どこまでわかっているの?」


 そんな意味不明なことを尋ねられたロクはキョトンとする。

 

 ざっと5秒ほどだろうか?ロクとシルヴィはじっとイリニを凝視していた。イリニもロクのことをじっと見ていた。静止。この場の誰もが動きを止めていた。


 そんな場を壊したのは、大きな笑い声だった。

 アハハハハ。


 その声に釣られて声が聞こえてきた方を見ると、そこには1人の若い男が立っていた。


「ユナンさん……」


 またかと、ロクが呆れたような声を出すが、その若い男は相変わらず笑ったままだった。


「ユナンさん。取り敢えず、妹たちを紹介したいので、笑うのをやめてもらえませんか?」

「アハハ。ごめん。ごめん。でも、君たちが悪いんだよ?……だって僕が扉を開けたらみんな固まっているんだもの。これが笑わずにはいられると思う?」

「はいはい、そうですね!こっちも本当に意味不明でしたからね!」

「えっ、そうなの?なんでそんなことに?」


 ロクが先ほどイリニに尋ねられたことを言う前に、イリニが答えた。


「『ねえ、あなたって、一体どこまでわかっているの?』って私が言いましたの」


 そう言うや否や、ユナンは一瞬驚いたような顔をした。


「国にばれない亡命の協力者。ヴェニアス国内からキーナに行く方法。そして、ガラス細工の店。……ヒントはたくさんあったわ」


 そんなユナンの様子にお構いなく、イリニは核心をつく。


「そうでしょう?妖精族ユナンさん」


 そう言うや否や、ロクとシルヴィの目が大きく開かれた。一方のユナンは顔を下げてこちらには見えない。驚いているのか、そうでないのか……。


「妖精族だと?」

「妖精族ってあのおとぎ話によく出てくる?」


 二人の驚きも最もだ。妖精族がいたとされるのは今から何百年も前のことだ。今ではヴェニアス神の逸話と一緒に語られるような話にしか出てこない。神から不思議な力を賜った人が進化した存在。年を取らず美しい。……だが、そのおかげで、昔、不老不死を目指すために実験材料として妖精族が滅びるまで行われたらしい。

 だから、今現在、妖精族がこんな場所にいるなんてあり得ないことなのだ。


「すごいね。これだけでわかるんだ」


 そう言ったユナンの声は先ほどとはうって変わり冷え冷えとするものだった。


「ええ、そうね。あなたが全くと言っていいほど隠していないようだから。言っても大丈夫かなと思ったのよ」

「それで、さっきの質問なわけだ。彼が僕の正体を知って僕の力を利用しているのか、はたまた何も知らずに利用しているのか、知りたかったわけなんだ」

「そうよ。だって、あなたの力はむやみやたらと使ってはいけないモノだから」

「……そこまで知っているのか。君は一体何者なんだ?」


 ユナンがそう言うと、ロクやシルヴィは心配そうにイリニを見る。どう答えるのか心配なのだろう。

 彼に会った時からどう答えるのかなんて決まっているわ。そう考えながら、イリニにユナンの質問にあっさりと答える。



「この国の第二王女よ」


「はああああ!」


 イリニの言葉を聞いた途端、ユナンは飛び上がって叫んだ。

 後にこの時のことをイリニに聞くと、彼女は珍しくこう答えた。「すごかったわ」と。


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