第三十二話 答え合わせ
楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
俺はあの日以来、毎日あいつと会っていた。彼の名はヘレン。俺の初めての友達と言っても過言ではない人物だ。
「すまんな。いつも俺の話を聞いてくれて」
「水臭いぜ!それに俺の相談にも乗ってくれているだろ」
「まあ、そうかもしれないが」
「だろ!気にすんな!」
ヘレンはシュタインの肩をバシバシと叩く。誰かがこの光景を見たなら、目を疑うだろう。なんといっても、シュタインは第二王子なのだから。使用人風情が気安く肩を叩くなど言語道断だ。
だが、そんなことは実際には問題になってはいない。なぜなら、シュタインは王子としての立場を隠しているのだから。この城に遊びに来た貴族を演じていた。
「それで、お前の悩みは解決しそうか?」
ヘレンが心配そうにしていた。
「……そう見えるか?」
シュタインははっきりと答えることはないが、暗にほのめかす。それだけで結果は自ずとわかるというものだ。
「ダメだったか……。俺の作戦、“お前の悩みの人物についてもっと知るぞ作戦”は完璧だったはずなんだがな」
「……いや、知れば知るほど益々悩みが増えていったんだが」
そう、先日ヘレンはシュタインの悩みを解決するための案を持ってきた。それが彼が言うところの“お前の悩みの人物についてもっと知るぞ作戦”だった。……この場で彼のネーミングセンスについて討論するのは止めておこう。こればかりはどうこうすることはできないから。
で、内容に入るのだが、それは至ってシンプル。ただ色んな人からその人物についての話を集めるということだ。
シュタインは素直にそのアドバイスに従った。だが……結果は惨敗だった。
誰に聞いてもその人物についての悪い面しか言わない。みんないい面について知らなかったのだ。しかも、シュタインでさえ知らなかった話が出てくるわ、出てくるわ。
そこでシュタインは話を聞くのを止めた。印象がどんどん悪くなり、自分の気持ちとのギャップが広がっていくばかりだから。
「……俺はおかしいのだろうか?」
シュタインは珍しく弱気になっていた。
「大丈夫だって!また何か作戦を考えておくよ!」
「ありがとう」
そこで、シュタインはヘレンと分かれて自分の部屋へ向かった。そんなときだ。彼と出会ったのは。
「シュタインではないですか。こんなところでどうしたのですか?」
「……レクス様」
そう、そこにはこの国の第一王子であるレクス様がいた。
「いえ、散歩をしていただけです。ずっと机についていては体に悪いですからね」
「そうですか。それは邪魔をしましたね。それでは勉強頑張ってください」
レクス様はそう言うと、すぐにその場から立ち去った。
シュタインは疑問に覚えるべきだった。なぜ第一王子とこんなところで出くわしたのか。このとき気づいていたら、あんなことは起こらなかった。
だけど、もう遅い。シュタインは何の疑問を覚えることなく、自分の部屋に向かった。それが事実なのだから。
****
「やはりこの説が有力でしょうか?」
レクスは先ほど聞いた話を思い出しながら呟く。
レクスがあのときシュタインと会ったのは偶然ではない。なぜならシュタインがヘレンと会っていた時、レクスはその二人の会話を聞いていた。
そしてレクスが悩んでいる相手について目星をつけた。それはレクスの想像通りの人物だった。そしてそれこそが真実につながる鍵。
さて、答え合わせといこうか。
レクスは最近準備していた計画を実行する。