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おちこぼれ王女とアルビルの書  作者: kymmt
第二章 王族
32/36

第三十二話 答え合わせ

楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

 俺はあの日以来、毎日あいつと会っていた。彼の名はヘレン。俺の初めての友達と言っても過言ではない人物だ。


「すまんな。いつも俺の話を聞いてくれて」

「水臭いぜ!それに俺の相談にも乗ってくれているだろ」

「まあ、そうかもしれないが」

「だろ!気にすんな!」


 ヘレンはシュタインの肩をバシバシと叩く。誰かがこの光景を見たなら、目を疑うだろう。なんといっても、シュタインは第二王子なのだから。使用人風情が気安く肩を叩くなど言語道断だ。


 だが、そんなことは実際には問題になってはいない。なぜなら、シュタインは王子としての立場を隠しているのだから。この城に遊びに来た貴族を演じていた。


「それで、お前の悩みは解決しそうか?」


 ヘレンが心配そうにしていた。


「……そう見えるか?」


 シュタインははっきりと答えることはないが、暗にほのめかす。それだけで結果は自ずとわかるというものだ。


「ダメだったか……。俺の作戦、“お前の悩みの人物についてもっと知るぞ作戦”は完璧だったはずなんだがな」

「……いや、知れば知るほど益々悩みが増えていったんだが」


 そう、先日ヘレンはシュタインの悩みを解決するための案を持ってきた。それが彼が言うところの“お前の悩みの人物についてもっと知るぞ作戦”だった。……この場で彼のネーミングセンスについて討論するのは止めておこう。こればかりはどうこうすることはできないから。


 で、内容に入るのだが、それは至ってシンプル。ただ色んな人からその人物についての話を集めるということだ。


 シュタインは素直にそのアドバイスに従った。だが……結果は惨敗だった。


 誰に聞いてもその人物についての悪い面しか言わない。みんないい面について知らなかったのだ。しかも、シュタインでさえ知らなかった話が出てくるわ、出てくるわ。


 そこでシュタインは話を聞くのを止めた。印象がどんどん悪くなり、自分の気持ちとのギャップが広がっていくばかりだから。


「……俺はおかしいのだろうか?」


 シュタインは珍しく弱気になっていた。


「大丈夫だって!また何か作戦を考えておくよ!」

「ありがとう」


 そこで、シュタインはヘレンと分かれて自分の部屋へ向かった。そんなときだ。彼と出会ったのは。


「シュタインではないですか。こんなところでどうしたのですか?」

「……レクス様」


 そう、そこにはこの国の第一王子であるレクス様がいた。


「いえ、散歩をしていただけです。ずっと机についていては体に悪いですからね」

「そうですか。それは邪魔をしましたね。それでは勉強頑張ってください」


 レクス様はそう言うと、すぐにその場から立ち去った。


 シュタインは疑問に覚えるべきだった。なぜ第一王子とこんなところで出くわしたのか。このとき気づいていたら、あんなことは起こらなかった。


 だけど、もう遅い。シュタインは何の疑問を覚えることなく、自分の部屋に向かった。それが事実なのだから。




****



「やはりこの説が有力でしょうか?」


 レクスは先ほど聞いた話を思い出しながら呟く。


 レクスがあのときシュタインと会ったのは偶然ではない。なぜならシュタインがヘレンと会っていた時、レクスはその二人の会話を聞いていた。


 そしてレクスが悩んでいる相手について目星をつけた。それはレクスの想像通りの人物だった。そしてそれこそが真実につながる鍵。


 さて、答え合わせといこうか。


 レクスは最近準備していた計画を実行する。


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