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おちこぼれ王女とアルビルの書  作者: kymmt
第二章 王族
30/36

第三十話 悪魔の存在

楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

 悪魔、その存在が示唆されるようになったのは、ヴェニアス様がこの世界から去ってからしばらく経ってのことだった。その時は、ヴェニアス様はこの世界を見守ってくれているからだ。そう思っていた。


 しかし、それが間違いだと判明するのは早かった。次々と謎の死体が現れ始めたのだ。外傷もない死体。そして、それを発見した人が口を揃えて言うこと。あれは人ではないと。悪魔だと。


 俺も実際に見るまでは信じていなかった。誰かが俺たちの知らない方法で人を殺しているのだとそう思った。それに悪魔だというやつらはきっと恐怖心から虚像を見ているのだろうと。


 俺が悪魔と言われる存在を見た時のことをここに記しておこうと思う。あの日は夜遅くまで働き、やっとの思いで家に帰っていた。もうすぐ家につく。そんなときだ。水がぽたぽたと垂れているような音が聞こえてきた。


 俺はそのとき、何も考えずにその場所に向かった。もしかしたら油かも。そう思ったから。そのころはその悪魔によるものだと考えられている事件のほかに、頻繫に火事が起こってた。そして、油の不適切な扱いにより火事は起きやすい……。


 そんな気持ちで向かったのに実際に俺が見たのは……




 レクスはここまで読んで本を閉じた。いや、閉じる必要があったと言うべきか。誰かがこちらを見ているのだ。賊か。そう思うがそいつは私に何をすることもなくどこかに行ったようだ。私が気づくとすぐに気配が消えた。


 なかなか優秀なようだ。私が気づいたことに気づくとは。


 そこまで考えて俺は頭に一つの考えが浮かぶ。……なるほど、そういうことか。私は最近聞いたばかりの噂を思い出しながら、ほくそ笑む。


 それにあのこともある。父から聞いた話……。


 楽しくなりそうだ。


 そんなことを考えるレクスの様子はいつもみたいな政治以外は興味がないという雰囲気とはかけ離れていた。




***




「……それで、あなたは退却したと」


 これは、第一王子に気づかれたかもしれないとロクが言った後のイリニの言葉だ。


「はい、申し訳ございません」


 ロクが申し訳なさそうにするが、イリニは気にしていないようだった。


「構わないわ。第一王子にはあなたの存在はすぐにばれたはずだから」

「……そうですか」


 ロクは納得いかないとばかりに顔を少しゆがめている。だからイリニは少しロクに第一王子について教えることにした。


「第一王子は……本物の天才よ」

「……?天才ですか?」

「いえ、本物の。あの人はね、四歳のころから政治に関わっていたらしいわ」

「は!?四歳!」

「ええ。これは人から聞いたことだから、正しいかはわからないの。だけど私が物心着いた頃にはすでに政治の中心になっていたわ。政治に関する知識だけではない。駆け引きでさえもその頃からこの国の誰よりも素晴らしかった。……信じられないって顔をしているわね。でも本当のことよ。あの人が政治に関わるようになってからこの国はとても良くなったわ。……まあ、政治のことだけにしか興味はないらしいのだけど」


 イリニの口から出てくる言葉はロクにとって信じられないものばかりだった。


「……だからね。あの人には後手に回るしかないの。だけどね……私はそれに甘んじるつもりはないわ。あの人は私にとって敵なんだから」

「敵?」

「ええ、だってあの人は本当は……」


 その先の言葉もまた信じられないことだった。そしてそのことをイリニが知っていることにも疑問を覚えた。


 だが、そんなことすぐに忘れる。イリニからもらう仕事はどれも膨大でそれをこなすので精一杯になるのだから。


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