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おちこぼれ王女とアルビルの書  作者: kymmt
第一章 キーナ国
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第二十五話 新たな王

楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

「ねえ、本当に彼らを巻き込むの?」


 イリニは火から逃れようともがくバルドラを見ながらアルに尋ねる。


「はい。彼の能力は有能ですしね。それにもう一人ぐらい侍女がいります」

「いままでうまくいっているでしょう?それに関わる人が増えればばれやすくなるわ」

「そんなことはございません。例のこともありますしね。手駒が欲しいんですよ」

「……手駒ね。……わかったわ。彼らを引き入れる。だから……」

「はい。お約束したことは守りますから」

「そう。お願いね」


 イリニは再びバルドラの方を向く。だがそこにはすでにバルドラの姿はなかった。ただ燃え盛る炎しか見ることができなかった。


「さて、終了ね。あとは後片付けだけよね」

「はい。明日中には片が付くでしょう」

「じゃあ、行きましょう」


 そう言ってイリニたちは城を後にする。もうここには用はないとばかりに。



****



 バルドラ様が死んでから一日が過ぎた。火はすでにおさまったが、王都には大きな爪痕が残った。何人もの人がなくなった。


 俺たちの雇い主も死んだそうだ。まだはっきりとは言えないが。それらしき死体が町中で発見された。だが暴行にあったのかわからないが損傷がひどく顔の判別ができなかったのだ。この世界には簡単に個人を判断することができるようなモノはない。


 だけど、俺は死んだと思っている。いや確信していると言っても過言ではないだろう。恐らくだが、王の悪事に関わっていたのだろう。あれから考えてみたのだが、王が悪事をするには手下が必要だったはす。王が自らするのは無理だからな。まして他国との取引。そうそうできるはずはない。


 潜入したときもディオースの警備には苦労したものだ。


 だからこそ確信できる。俺のような者をたくさん使う必要があったのだと。それに……雇い主の手下の中には俺と同じような境遇の者ばかりいた。大切な誰かが攫われたという過去が。きっとそれがあいつらの手口だったのだろう。新たな手下の大切な者を奪い。それをしたのがディオースのやつらだと思わせ憎しみを糧にさせる。


 なんとも最低な策だ。



 ……さて話は変わるが、今俺たちは王城の門の前にいる。新しい王の戴冠式を行うためだ。バルドラ王が死んだからな。


 今度の王はなんと驚くことに獣人。昔傭兵として活躍していた人らしい。そこそこの有名人なんだと。俺はよくは知らなかったけどな。まあ、田舎に住んでいたし。知らなくて当然だろう?シルヴィだって知らなかったのだから。


 新しく王となる獣人の名前はオーラント。年は四十くらいで、妻と娘がいるらしい。


「静粛に」


 おっと、色々と考えていたら戴冠式が始まる時間になったか。


「はじめまして、この度新しく王となるオーラントという。王として未熟者だが、真の意味でこのキーナの民を幸せにしていきたいと思う。よろしく頼む」


 王の短いスピーチの後には溢れんばかりの拍手が起こった。


 ……もしかしてかなりの有名人なのか?


 そんなことを思いながら話を聞いていると、ふと誰かに見られていることに気づいた。


 誰だ?


 そう思いながら辺りを見渡すと、話をしたい人物がいた。


「王女様?」


 民衆から少し離れたところにイリニとアルが立っていた。彼らはロクが自分たちの視線に気づいたことがわかったのか、踵を返す。


「待ってくれ!」


 俺は周囲の人物がぎょっとするのにも構わず大きな声を出してしまう。だが彼らは止まらない。俺は堪らず、その後を追う。


 彼らはどこに向かっているのだろうか?


 そう思いながらも後を追いかける。そしてしばらくの間追いかけっこを続けていると、彼らは止まった。


 ……雇い主の屋敷の残骸の前に。


「さて、あなたには聞きたいことがあるのでしょう?」


 イリニがニッコリと笑っていた。

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