第二十四話 気づき
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俺たちは今王城の中にいた。
俺は覚えていないのだが、無事屋敷から逃げ出すことができた。シルヴィや親切にしてくれた人たちも無事だ。そんな俺たちがなぜ今城の中にいるのかと言うとそれは城に避難しろと言われたからというのが大きな理由らしい。
王都は屋敷と同じようにあちこちで火事が発生していたらしく、逃げる必要があったんだと。それに先ほどまで一緒にいたアルっていう野郎もここに避難したほうがいいと言っていたそうだ。
しかも俺を担いでここまできたのはアルなんだと。だが俺が目を覚ますより前に王女のところに戻ったらしい。普通なら感謝しなければならないだろう。だが、俺はあいつが苦手だ。得たいが知らないというか、不気味というか。
だって神出鬼没なんだぜ。それに何を考えているかわからないし。
……まあ、それはさておき、俺たちは今酷い裏切りを受けている。……あっ、アルではない。王女が俺に話していたこと。王の裏切りだ。
俺たちが城に避難してから、それはそれは面白いほどに王の悪行の数々が見つかっている。最初に見つけたのは普通ではない動物。禍々しいオーラを纏っていたらしい。しかも人工的に作られたような生き物だったというのだ。許せない。そしてあいつの言っていたことは本当なのだろうと。
だが、俺が最も許せない所業だと思ったのは城で行われていた人体実験だ。これは俺が見つけた。
一目見た瞬間に吐き気が込み上げてきた。その部屋にいた生き物はどれも人ではなくなっていた。いや、ベースに人が含まれているのはわかるのだが、姿がいびつだった。誰も何かしらの動物と合わさった姿をしていた。
それに何よりも恐ろしかったのは彼らの目だった。それには絶望しか映していなかったから。
俺が現れても何も反応しない。何もかも諦めていた。
許せない。本気でそう思った。俺にはあいつからの情報もあった。だからすぐにわかった。これは王がしたことなのだろうと。
そんなときだ。誰かの声が聞こえたのは。王が見つかったという。
俺はすぐにその場所に向かった。シルヴィたちを残して。もちろん、シルヴィは反対したがここは押し通した。何があるかわからないから。
「噓つき!」「約束を守ってよ!」
そんなこと言われたが無理矢理残した。多分今頃はすごい怒っているだろう。だが、来なくてよかったと思う。この光景を見るのはシルヴィには残酷すぎる。
そして今現在、俺の目の先には王がいる。……だが、王は今この城にいるのではない。この城の隣に建つ塔の最上階にいた。その塔の名は通称嘆きの塔。罪人を閉じ込めておくために建てられた塔だ。
普通王がそんなところにいるのはおかしい。そして最上階。そこは最も罪が重い者がいるべき場所。ますますおかしい。
「バルドラ様どうしてですか!なぜあんなことを!」
俺の隣にいたやつがそう王に言う。
だが、王からの返事はない。声は聞こえてるはずなのに。王は弁解も謝罪もなにもしない。だが、なぜか縋りつくようにこちらを見ていた。
そんな様子の王にお構えなく、俺の周りにいた人たちは次々に王に向かって怒鳴っていた。俺も言いたいことはたくさんあった。だがずっと引っかかっていることがあった。
なぜアルは俺たちを助けにあの屋敷に来たのか。いや、そもそもなぜこの国に来たのか。
そのことを考えていると突拍子もないことが頭に浮かんだ。
「まさか、これを仕組んだのはあいつらなのか?」
俺がそう呟くのと同時に王のいる塔が燃え始めた。まるで、俺の考えが正解だと言うように……。