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おちこぼれ王女とアルビルの書  作者: kymmt
第一章 キーナ国
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第二十一話 脱出と王都

ブクマありがとうございます!

今回もちょっと長めです。

楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

フラフラと一つの本棚に向かったロクは一冊の本を取り出す。パラパラとページをめくり何かを探していた。


「兄さん!本当にどうしたの?早く行かないと!」


 やって来たシルヴィがロクの肩を揺らしてもやっぱり反応はない。どうすれば……と思っていると、何人かの屋敷の者たちがやって来た。


「ロクさん!妹さん!どうしたんですか!」

「あのっ、兄さんの様子がおかしいんです!私が何を言っても反応してくれなくて!」


 シルヴィは泣きそうになりながら彼らに助けを求める。


 そんな中、ロクは相変わらずページをめくっていた。だが……突然ページをめくるのを止め、一つのページを凝視する。そして……ロクは迷わずそのページを破り取った。


 それに驚いたのは周りの者たちだ。


「兄さん!」

「ロクさん!?」


 ロクは破り取った後の本を本棚に戻した。すると、突如大きな揺れが襲った。


ゴゴゴゴゴ。


 立っていられないほどの揺れ。シルヴィや屋敷の者たちは四つん這いになる。その上から本棚に並べてあった本が落ちてくる。シルヴィたちは痛みに耐えじっとしていた。


 どのくらい経っただろうか?本棚に並べてあったあらかたの本が落ちてあることから見ても結構な時間揺れていたはず。


 揺れが確実に止まったのを確認してシルヴィたちは本の山から抜け出す。


「みなさん、大丈夫ですか?」

「ええ、なんとか」


 全員、軽い打撲などはあったが動けないほどの怪我は負わなかったようだ。だが……。


「兄さんは?」


 シルヴィがそう言って初めて、ロクの姿が見えないことに気がつく。


「ロクさん、どこですか?」

「兄さん、どこいるの?」


 もしかしたら本に埋もれて出てこれないのかもと思い、本を掘り起こしながら探す。だが、さっきいたところの本をどかしてもロクはいなかった。


 どこに行ったの?


 ロクがどこにいるのか検討もつかず、途方に暮れる。


「ロクさんは無事ですよ」


 突如そこに降ってわいた別の声。その声にシルヴィは聞き覚えがあった。確か名前は……。


「アルさん!?」


 そこにはいるはずのない人物、イリニの執事であった。


「はい、お久しぶりです。シルヴィ様」

「私に様はつけなくていいですよ。あなたは私の命の恩人の一人なんですから」

「了解しました」

「……それで兄さんが無事だというのは……」

「はい、ロク様は私が安全なところへ運んでおりますので、心配しないでください。あなた方も同じ場所までお送りしますので安心してください」

「!本当ですか!……でも、この屋敷には隠し通路からしか避難できないらしいのにどうやって?」


 シルヴィがふと呟くように疑問を口にすると、アルは口の前に人差し指を立てる。口に出してはいけなかったようだ。


「さて、行きましょう。私について来てください」


 そう言ってアルが向かったのは雇い主の子どもが向かった方とは逆の方向、入口の方に向かった。


「えっとこちらですか?」


 シルヴィたちが不安に思うのも無理はない。だって入り口の方に近づいているのだから。あの火のまわり方だともうすぐこの部屋にもやって来るだろう。だからこそ早く避難しないといけないのだ。


「ええ、こちらにも逃げ道はあるのです。……それに今先ほどおっしゃっていた方にはいけませんしね」


 そうなのだ。先ほどの揺れのせいで雇い主の子どもが向かった先への道には本が溢れかえり、先を進むのは無理そうだった。それに雇い主の子どもたちはすでに隠し通路に入っていったようで姿はなかった。だから、アルの言葉を信じるしかなかったという理由もある。


「ここです」


 アルがそう言いながら示した先には先ほどはなかったはずの通路があった。


「!この部屋に入ったときにはなかったのに!」


 アルが示した場所は入口のドアの向かい側、部屋に入ったときに必ず目に付くところだったのだから。


「先ほどの揺れの時に偶然この通路が現れまして、私は外から来たんですよ」

「そうだったのですか!」


 なるほど。アルがどこからやって来たのか、そして別の逃げ道があるということになぜ自信があったのかということに合点がいった。ここを通って来たのか。


 アルはなんというか神出鬼没なのでいつもみたいに現れただけだと思っていたが、今回は理由があったのだとほっとする。イリニ様に助けられたときも突然アルが現れてびっくりしたのだ。


「行きましょう、みんな」


 シルヴィがそう言ったことで屋敷の者たちも決心したようだ。全く知らない人が現れたのだ。しかも人族。怯える理由には最もだろう。屋敷の者たちの中には獣人だっているのだから。


 だけど、私と仲がよさそうに話しているのを見て、騙そうとしている人ではないと判断したようだ。


 アルを先頭にその通路を歩いていき、やっと外にでることができた。


 ……でも、外に出ても安心することはできなかった。だって王都の至る所で火の手が上がっていたのだから。


 そして逃げ惑う人たち。それはもう地獄絵図だ。


 そんなとき誰かの言葉が聞こえてきた。


「王城だ!王城に避難しろ!王城の中は安全だ!」


 その言葉を境に人々の流れは一気に城の方に変わる。みんな必死だった。安全な場所に向かうのは当然だろう?……たとえ、知らない人の言葉だったとしても。


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