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おちこぼれ王女とアルビルの書  作者: kymmt
第一章 キーナ国
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第十五話 バルドラ国王

ブクマありがとうございます。

ちょっと間が空きましたが、無事更新できました。

8月中は更新頻度は上げられると思います。

楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

 ロクたちが雇い主の家で屋敷の者の言葉を聞く少し前のこと……


 キーナ国の王城の一室では二人の男が密談を行っていた。


「それで、例の件はどうだった?」

「はい、私たちとは関係なかったそうです」

「そうか、それなら問題ないな」

「はい。そうですかと。手下の者も現在は回収しております」

「うむ。ご苦労であった」


 そう言ってもう一人の男の退出を促す。だが、その男は退出しようとはしなかった。


「……どうしたのだ、公爵?」

「実はもう一つ、陛下に報告したいことがございまして」

「聞こうではないか」

「はっ。ディオースに差し向けていた手下の中に王城に侵入した者がおりまして、その者が見聞きしたことによると、かの国には第二王女がいるそうです」

「第二王女だと?」


 陛下と呼ばれた男、キーナ国国王バルドラは眉をひそめる。ディオースに第二王女がいるとは聞いたことはないのだ。

 隠し子がいるかもしれないと調べたこともあったが、見つからなかった。愛人かと思われた女は見つけたのだが、その女は第二王妃だった。


「そんなこと聞いたこともないが……」

「はい。私もまゆつば物かと思ったのですが、手下によると、その者の髪は綺麗な銀髪だったそうで。……王族関係だと見てまず間違いないでしょう」

「銀髪か……。神の血を引く者にしか現れない髪色だったか?」

「はい。言い伝えではそのようですね」


 馬鹿馬鹿しい。ただこの一言に尽きる。


 実のところ、バルドラは神の存在なんて信じていない。本当に神がいたなら、自分が王になることなんてなかっただろうから。


 ……だが、現在自分は王だ。それも賢王。……何も知らない者から見たらな。


 種族差別をしない、この理念を掲げただけで、面白いぐらいに民衆は私についてきた。それに、私のために、民衆は自分の命を差し出す者もいた。


……そのとき私は笑い出さないように必死だった。その者があまりにも滑稽で、愉快で。


 本当は私はただどの種族も下に見ているに過ぎないのに。私以外の者は等しく私の下にあるべきなんだから……。


 だが、このことは誰にも話さない。今話しているこいつも私にとってはただの駒。だが、こいつは自分を支配者だと思っているふしがある。だから、駒としての役割が終わるまでは幸せな思いをさせておこう。


「……そうだな。……それで、その者がどうしたというのだ?」


 そう、ただ第二王女がいた、という事実は大して重要なことではない。よくあることだ。見た目が悪い、縁起が悪い双子の女、愛人の子……。色々な理由で存在が隠されることなんてざらだ。


「はい。第二王女は出来が悪く、そのせいで王族から疎まれているそうです。しかも気が弱く誰かの後ろに隠れるような子のようです」

「ほう」


 これは使えるかもしれない。バルドラはニヤリと笑う。


 家族から疎まれている。この状態は非常に都合がよい。ただ今までの鬱憤を高めて上げれば、復讐者に仕立てられるだろう。


 そして、民衆は不遇な者を救おうとするだろう。ディオースへの憎しみを強めながら。


 だが、それだけではない。出来が悪いということは復讐、ディオースへの戦争を行った後、政治を行う者は別に必要ということ。


 気が弱いということは王の座に就こうとするのではなく、別の王である支配者が必要ということ。


 つまり、私がディオースも支配することができるようになるのだ。


 なんとすてきなことだろう。


「第二王女を連れ出すことはできるのか?」

「はい。手下によりますと第二王女がいる場所は警備が薄いところで侵入するのは容易かったそうで。それに第二王女は自分の現状を嘆いているようで。すぐにこちら側につくかと。すぐにでも連れてこれるように準備しております」


 公爵はバルドラの要望にすぐ答えてきた。


 こいつも同じことを考えていたか。


 ……そうだろう。ディオースを手に入れられるのは非常に魅力的だからな。それに私たちには“あれ”がある。“あれ”があれば戦争にも負けないはずだ。


 今まで幾度となく戦争を繰り返してきたが、いつも勝つことはできなかった。まあ、負けることも無かったが。


 ……それに例のこともある。最大の取引先を無くして困っていたところだ。支配下が広がれば、更なる商品、更なる取引先が見つかるはず。


「では、頼むぞ。今度こそディオースを手に入れるのだ」

「はい、もちろんです、陛下」



「それは無理なことですよ」


 二人は声が聞えてきた方に目を向ける。すると、そこには銀髪の少女が立っていた。


「だってあなたたちは裁かれるのですから」


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