東部編9-1
当主の部屋.イマニュエルたちを集めて,レオンは門の封印についての説明をする.
「もし船が出るまでにこの周辺の安全が確保できなければ,この封印を門に施して欲しい.これを使えば向こう側からはこの門を見つけるのは困難になり,こちらから開けることもできなくなる.作るのに3日はかかるのでその時は手伝ってほしい.
「分かった.君の考えを尊重しよう」
「感謝する.これから説明するから聞いてくれ」
レオンは机の上にホログラムを出して説明をした.
……
…
「大変だね.封印の必要ないといいね」
「という訳で今日も探索に行ってくる.前回と反対側に行こう.準備はいいかナレル?」
「あっ,ちょっと待って.装備の点検してくるから」
「じゃ,外で待ってる」
「レオン」
「ん?」
「きっと上手くいく」
「それは必然だ.やるのは俺だから」
レオンは庭でナレルを待ち,合流してから山へ向かった.
「…レオン,誰かが僕らの跡をつけている」
「身に覚えのある視線だが…誰だ?」
「あの洞窟に入ろう」
レオンとナレルは洞窟に入る.追跡者は洞窟の穴の横に立ち,髪をかき上げてゆっくりと洞窟を覗く.暗くてよく見えず,目を凝らす.
「何だ君か」
「横から出られるんだよこの洞窟.知り合いか?」
レオンとナレルは追跡者の目の前に来ていた.
「キスした相手だ」
「いつの間に…」
「でも毒も盛られた」
「えっ?無事なのか…?」
「もう平気だ.どうして跡を追ってきたんだカレン?」
「バレてたか.これまでの償いをしたいけど,私だけの力じゃたかが知れているから…」
「結局のところ何をするつもりなんだ?」
「まあそう急かすなナレル.味方をしてくれるということをまずは歓迎しよう」
「ありがと.私が知っているのは聞いた話に限られるけど…連れ去られた人たちはこの先の廃村に送られているということ」
「道は分かるか?」
「話ではあれ.村の目印は樹齢1000年の木.常緑の針葉樹で,周囲の広葉樹とは大きく違う.」
カレンは高台の上に立って指さす.レオンとナレルは高台の上って指さす先をみる.叢に覆われた場所を指している.その中央に大木が見える.
「よく見たら家の跡らしきものが…」
「木造の家は分解されているけど,石や鉄は風化はしても分解はされてないな」
「行こう」
3人は廃村に向かって歩く.
「…へえ.ダウン一族だったのね.道理で…」
「明かしてよかったのかナレル?」
「うっかりしゃべり過ぎた.この人ハニトラじゃない?」
「失礼ね.それとも女の人にやさしくされるのが怖い?厳しく当たろうかしら?」
「レオン,この人怖い」
レオンは2人を止める.
「どうした?」
「糸が張り巡らされている.これは侵入者を切るためではなく,接触を確かめるためだろう」
「何とか通れないのか?」
「目立たないように少数仕掛けてある.上手く避ければ大丈夫だ.こっちへ,まずはこれをまたいで…」
レオンは先導して糸を避けて廃村に入る.
「見張りがいると思ったが気配がない」
「じゃああの糸が揺れたかどうかどうやって確かめるんだ?」
レオンは糸の先を辿って箱を見つけ,蓋を開ける.揺れを記録する装置が入っていた.
「通信機能もついているかもしれない.とりあえず壊しておこう」
「じゃあここは無人という訳か」
「とはいえ油断はならない」
3人は村の中央に向かって歩く.
「カレン,他に何か知らないか?」
「ここが本拠地への中継場所.どこかに通路があるはず」
「待ち合わせ場所というわけではないのか?通路があるのか?」
「ここから通る道があるみたいよ.水漏れが酷いとぼやいてた」
「ふむ….…….しかし,なぜここは廃村になったんだ?」
「この村も,前に言った村と同じように火事で焼けてしまった.人々はあえてここに住もうとせずに,別の場所へ移動する」
「なるほど,あれは焼けた跡なのか.頑丈な木だな」
「本来は山火事のある地方の木だからね.燃えにくいんだ.村のシンボルとして1000年ほど前に植えられたものらしいよ」
「へえ,すごいな」
「レオン,こっちに変な石がある」
レオンはカレンのぺちぺち叩く石を見る.子供くらいの大きさのなんてことのないきれいな石である.
「何かおかしいところがあるか?」
「これだけ綺麗すぎる.変じゃない?」
「そういう石じゃないか?ナレルはどう思う?」
「確かにこの形状で泥がほとんどついてないのは変だ.動かしたら何かあるんじゃないか?」
「罠は無さそうだから動かしてみよう」
ナレルは石を引いて動かす.下に円形の厚い金属の板が見える.
「おお!」
「取っ手があるが重い….力を加えれば動きそうではあるが…」
「じゃあこの石使ってテコで持ち上げよう.石の上に窪みがある支点にできそうだ.ちょうどいいところに鉄棒があるし」
「しかしナレル,持ち上げた後はどうするんだ?」
「横にスライドさせてずらすんだ.円形だから蓋が穴から落ちることはない」
「なるほど.よし,そっちはナレルとカレンに任せる.敵が飛び出さないか見張っていよう」
レオンは刀身のない柄を抜いて構え,カレンは支点がぶれないように棒を上から抑え,ナレルは力点を押す.蓋が持ち上がり,ナレルは横にスライドして,蓋をずらして地面に置く.
「何か見えるか?」
レオンは石を投げ入れ,様子が変わったことがないのを確認してのぞき込む.
梯子がついており,下には水が張っている.両脇に道があり奥へと続いている.横穴がすぐ近くにある.
「何も無さそうだな」
「僕にも見せて」
ナレルは穴をのぞき込む.
「暗くて見えないや」
穴の中から縄が投げられ,ナレルは引っ張られて落下する.水に飛び込む音が聞こえた.
「馬鹿な!?」
縄が投げられ,カレンの背後に落下する.レオンは光る剣で縄を切った.2人は穴から距離を取る.
「ナレル!無事か?」
「来るな!今はまずい!」
穴から出てきた魔族は光線で霧となって消えた.
「そうか…外にいるのが狩人レオンか.準備が要るな….狩人レオンよ!」
「誰だ?」
「誰でもいい.この男は預かった,助けたければこの先に来ることだ」
「待てるものか」
「行け,お前たち!」
レオンは穴に飛び込もうとするが,魔族が飛び出して阻まれる.出てきた者を光線で消滅させ,慎重に穴に近づき覗くが,もう逃げられてしまった.
「しまった.身代わりにして時間を稼ぐとは….俺はこれからナレルを助けに行く.お前は帰れ.帰り道に気をつけてな」
「ここから先は私じゃ足手まとい?」
「…そうだ.長話する時間もない」
「…分かった.ここから先へは行かない」
「気を付けてな」
レオンは透明になって穴の下へ降りた.腕輪から人間には見えない光線を出して,暗い通路の奥へと進んでいった.




