「玄関開けたら魔王がいるのですが。」
「どうせ、子供のイタズラだろう?なんでオレらが行かなきゃいけないんだよ。」
不満そうな顔をしながら通報のあったという現場へ向かうT刑事。
T刑事は25歳。
相棒のS刑事と組んで任務にあたっている。
「イタズラかどうかは、現場を見てみないとわかりませんよ。」
S刑事が言った。
「通報者は6歳の男の子A。通報内容が「玄関開けたら魔王がいるのですが。」だろう?
どう考えてもイタズラだろうよ。」
「イタズラなら、そういうことを110番にすると
迷惑がかかるのだという事をキチンと伝えなければいけません。」
現場のAの住む2世帯住宅に着いた。
「はっはっは、我を倒しに来るのは、わかっていた。勇者どもよ。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
黙って顔を見合わせるT刑事とS刑事。
本当に禍々しい黒いオーラをまとった、魔王が立っていたのだ。
「だが、我は魔王なり。簡単に倒れたりはしない。はっはっは。」
「コスプレした不審者だよな?」
T刑事が言った。
「こら、キミ。人の家に勝手に入っちゃダメだよ。」
S刑事が優しく声をかけながら近づく。
「ええい、我に触るな!!」
魔王が手をかざす。
「うわああああああ!!!」
S刑事が5メートルほど吹っ飛び地面に叩きつけられる。
「!?」
T刑事が拳銃に手を伸ばす。
「銃か、そんなものは我には効かぬぞ?」
魔王がニタニタ笑いながら言った。
「なぜだ?」
「我は物理耐性がある。100%物理攻撃を遮断出来るのだ。」
「んな馬鹿な!」
拳銃を構えるT刑事。
「発砲許可が出てからじゃなきゃダメですよ!」
叫ぶS刑事。
パーン!撃った。
魔王の体の弾の通ったところだけが煙のようにふわっと消えた。
しばらくすると、元の状態に戻った。
「くっそ!」
「我は無敵だ、はっはっは。」
「お巡りさん、魔王追い払えないの?」
Aが玄関から出てきた。
「あ、危ないから出てきちゃダメだよ!」
S刑事がAの方へ駆け寄ろうとした。
「我に近づくな!」
「うわああああああ!!!」
またS刑事が5メートルほど吹っ飛び地面に叩きつけられる。
「おい、またなのか。」
T刑事がツッコミを入れた。
「ださいね。」
Aがボソッと言った。
「な、なんてことを言うんだキミは!」
S刑事が体を起こして言う。
「お巡りさんじゃなくて、魔王の方だよ。」
Aが地面の石をつんつん蹴りながら言った。
「何?我が、ださいだと?」
「うん、黒くて、いかにも魔王って感じなの丸わかりなのが、すんごく、ださい。」
グサッ
「わ、我は魔王だから魔王らしくしているのだ。」
魔王がモジモジする。
「他の魔王のパクリしか出来ないんだね。」
グサグサッ
「これ、何の音なんだ?」
T刑事がS刑事に聞く。
「きっとA君の精神的な攻撃により、魔王がダメージを受けているんだと思います。」
「なにぃ!?じゃあ、精神的な攻撃だったら魔王を退治できるのか!?」
T刑事がすぅっと息を吸った。
「わ、我を倒そうと考えるのは、止めたほうが良いぞ勇者よ。」
慌てる魔王。
「黒くてピカピカしてて、まるでゴキブリに似てるな。魔王って。」
グサグサグサッ クリティカルヒット!!
「殺虫剤持ってきたら逃げ出すかな!」
グサグサッ
「スリッパで叩いたらどうかな!」
グサグサグサッ
「わ、我を・・・馬鹿にするとは・・・。」
花火みたいなド派手な演出とともに魔王は消滅した。