第17話
〈side 燐〉
今日からテスト週間か。
まっ、姉ちゃんが教えてくれるから心配ないか。
キーンコーンカーンコーン
今日から部活無いしな、
帰るか。
燐は校門へ向かって歩いている。
「せんぱーい!」
背後から声が聞こえる。
ビクッ
げっ、この声は
そう思った瞬間に背後から抱きつかれた。
「おい、抱きつくな!」
「え〜〜、いいじゃないですか、先輩♡」
「よくねえ!」
当たってるんだよ。
柔らかい感触がな!
しかもこいつかなりでかいぞ。
ちょっと気持ちいい。
「せーんぱい♡」
そう言って耳に息を吹きかける。
燐は身体をブルブルと震わせた。
もうやめてくれ〜〜
2人は注目の的
「葉月さん、周りの視線が集まってるから、早く離れてくれ。」
「先輩!葉月さんじゃないですよ。」
「つ、つばさ!離れろ!」
「もう〜、しょうがないですね。」
燐の顔は真っ赤だ。
「先輩、可愛いですね。」
つばさは手を背後に組んでいる。
2人は並んで歩く。
「お前急に抱きつくな。」
「なんでですか〜?」
頭を傾けて言う。
「なんでもだ!」
「やですよ。」
そう言って、つばさは燐の腕に抱きつく。
くっ、だから当たってるんだよ。
燐は観念したように、ため息を吐いて、
「んで、今日は何の用だ。」
「一緒に勉強するしましょうよ、」
「別にいいけど、俺の家だぞ?」
つばさは一瞬驚いてから、
「いいんですか?」
「いや、俺が訊いてるんだけど。」
「あ、はい!お願いします。」
つばさはガッツポーズをした。
そんな嬉しいのか?
よく分からん子だな。
「あ、ちょっと待って、姉ちゃんに訊くわ」
「どうしてですか?」
「姉ちゃんに勉強教えてもらう予定だから。」
「そうなんですか。」
燐は携帯を取り出して電話をし始めた。
「あ、うん。分かった。サンキュー。」
燐は電話を切って、ポケットにしまい、
「別にいいって、」
つばさは満面の笑みを浮かべて、
「はい!」
「それより先輩って姉いたんですね。」
「ああ、いいだろ、んなこと。」
つばさはムッとして、
「よくないですよ!認められるかどうかかかってるんですから!」
は?何言ってるんだ?
認められる?何を?
そんな会話をしながら、家へ向かう。
───────
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───
つばさは燐の家を見上げながら、
「うわぁー、意外と大きいんですね。」
「ああ、まぁな。早く入るぞ。」
「あ、はい。」
ガチャリ
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
そう言って2人はリビングへ
リビングには沙織と奈津ともう1人の姿が、
「なんで、さつきがいるんだ!?」
「なぁに、助っ人に来てやったんだぞ。喜べ。」
さつきはムッとした表情で言う。
つばさは横で目を丸くしている。
「せ、先輩?この人たちって、沙織先輩とさつき先輩ですか…?」
「そうだけど、知ってんの?」
「もちろんですよ!去年いましたから。」
「あー、そういえばそうだな。」
「もしかして姉って、」
「ああ、この人だ。」
燐はそう言って、沙織を指差した。
「じゃあ、こちらのさつき先輩って先輩の…」
つばさはゆっくりと緊張した口調で言う。
「そう、彼女だよ。」
さつきがニコリと笑って言う。
「ひぇっ!うそ!」
つばさの声は上ずっている。
「おい、変なこと言うなよ。」
「あは、ごめんごめん、ちょっとからかっただけ。」
さつきは舌をペロッと出した。
「じゃあ違うのか。良かった。」
つばさは肩を撫で下ろした。
「何が良かったんだよ。」
「なんでもありません!」
さつきと奈津がジッと2人を見ている。
沙織が、
「燐もしかして、彼女?」
「は?何言ってんだよ。そんなんじゃねえ。」
燐は落ち着いた様子で言った。
「俺、一旦部屋に行くから、変なことすんなよ。」
「「「ほーい。」」」
本当に分かったのか?
燐は自分の部屋へ
「えーと、お名前は…?」
沙織が言う。
つばさは慌てて、
「はい!葉月つばさです!2年生です。マネージャーやってます。」
沙織はふふっと笑って、
「じゃあとりあえず、その辺で楽にしてて。」
そう言って立ち上がり、台所へ
つばさが座ると、
奈津とさつきがササッと駆け寄って。
「ねぇねぇ、もしかして燐くんのこと好き?」
「りんにぃのどこが好き?」
「ふぇっ!?わ、私は…好きです。」
つばさは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「きゃーーー!いいねいいね。」
奈津が言う。
沙織はお盆にお茶を乗せて、歩きながら、
「こらこら、奈津からかわないの。」
「えー、いいじゃん。」
「なっちゃん、こういうのは優しく見守るんだよ?」
「そっか、そうだね、さっちゃん。」
奈津はさつきの方を向いて微笑む。
さつきはニヤリと笑って、
「燐くんは手強いよ?」
「はい、分かります。」
「だよね。」
「さつき先輩は立花先輩とはどう言う関係なんですか?」
「あー、私は元カノ?」
とぼけたように言う
「え?」
「こら、さつき。」
「ごめんごめん、私は告白してフラれちゃった。」
「そうなんですか?さつき先輩をフルなんて、」
「まあ、あの時は色々あったんだよ。惜しかったんだけどねぇ。」
さつきと沙織がぼんやりとした顔をし、
「ま、今は親友かな。」
「そうなんですか…」
「私のことはいいから、そんな顔しない!」
さつきはそう言ってつばさのおでこをツンと突いた。
そこへ燐が戻ってきて、
「おい、変なことしてないだろうな?」
「してないよ。するわけないだろ?」
「まあ、そうか。じゃあ、早く勉強しようぜ。」
燐はそう言って座る。
燐の隣にはさつきが座り、その向かいに沙織とつばさが座る。
奈津はソファでダラけている。
勉強は燐にさつきが教え、つばさが沙織に教えてもらう形になった。
「ねぇ、燐くん、勉強してたら思い出すよね?」
さつきは小声で言う。
「何をすか?」
「ほら、私の家で、2人で勉強したとき。」
「えーっと…」
───私は君のことが…
燐は顔が赤くなり、
「バッカ!変な事思い出させんなよ。」
さつきはクスクスと笑う。
つばさはその様子を不安げに見ていた。
「あの2人が気になるの?」
「え、いや、別に…」
つばさはうつむく。
「大丈夫よ、あの2人はいつもああだから。それに2人はもう恋愛関係に発展しないと思うよ。私が保証する。」
沙織が微笑いかける。
「はい。」
「さ、勉強勉強、燐のことなら後で教えてあげるから。」
つばさは顔を引き締めて、
「はい!」
4人が勉強してからしばらく経ち、
「疲れたー!!もう今日は終わっていい?」
「うん、よく頑張った。いいよ。」
さつきが言う。
「うし!」
燐はガッツポーズをする。
ガチャリ
「ただいまー」
「お、健、今日早いんだな。」
「俺もテストなんだよ。」
健は推薦で野球の名門校へ行っている。
「じゃあさ、今から暇だろ?ゲームしようぜ!」
燐は少年のように言った。
「ったく、しょうがねえな。負けたら、アイス奢りな?」
健も満更でもなさそう。
「あーーー!奈津も!」
「じゃあ3人でやるか。健の部屋いくぞ!」
「うん!」
3人は健の部屋へと走って行った。
その様子を見て、さつきと沙織はクスクス笑う。
「先輩って何人兄弟なんですか?」
「5人かな。兄があと1人いるの。」
「へぇー。」
「相変わらず仲良いよね。あの3人。」
「そうね、燐がの方が健より歳下に見えるしね。」
つばさが恐る恐る、
「あのー、質問してもいいですか?」
「うん、何でも訊いてね。」
「先輩って1年生のときにフラれた人がいるって聞いたんですけど、知っていますか?」
2人の表情は曇る。
「それ、誰から聞いたの?」
沙織が言う。
「先輩から聞きました。誰かは言ってくれませんでしたけど、訊かないほうが良かったですか?」
「ううん、そんなことはないけど、私たちからは詳しいことは言えないかな。ごめんね。」
「そうですか…」
「私もつばさに訊いてもいい?」
さつきが言う。
「はい、いいですけど。」
「つばさはハンド部だよね?先輩ってどんな感じなの?私部活やったこと無いから分かんなくて、やっぱり厳しい?」
(さつき上手いこと訊いたね。)
「全然そんなことありませんよ!むしろ良い人たちばっかです。」
「そう、どんな人がいるの?」
「1人は篠原先輩っていう人で、この人は明るくて楽しいです。怒ると怖いんですけど。」
「そう、いい先輩なのね。」
「もう1人が桐山先輩っていう人です。」
この言葉に2人は僅かに反応する。
「その人はどんな感じ?」
「めっちゃ可愛いんですよ。顔も性格も良すぎます。羨ましいです!あと、彼氏もカッコいいです。変態ですけど、」
つばさは手を合わせて上を見上げている。
「そうなんだ…」
2人の表情は暗く陰る。
「でも、最近、変だと思うんですよね。」
「どう変なの?」
「何か、この前までは余裕のある感じで、落ち着いた雰囲気があったんですけど、最近は取り乱したりする事が増えたと思うんですよね〜。」
2人は顔を見合わせた。
「原因とか分かる?」
「そんなに気になります?」
「まあね。」
「それが多分立花先輩絡みだと思うんですよね。あとは、彼氏と上手くいっていないとか?」
「そうなんだ。燐何かしたのかな?」
(やっぱりまだ…)
「いや〜、何もしてないと思いますよ。話してるところもあんまり見ないですし。多分私の勘違いですね。」
「そう、」
「何か知ってるんですか?」
「ううん、知らないかな。」
2人は黙り込んだ。
「先輩ってどういう子がタイプなんですか?」
「うーん、燐のタイプか〜。」
沙織は顎に手を当てて考える。
「恋愛経験少ないからね〜。」
さつきが言う。
「やっぱり、少ないですよね?」
「うん、まあそうだね。」
「私の名前呼ぶ時だって、めっちゃ照れるんですよ。」
「あーー!それ私のときも!」
「可愛いですよね。」
「うんうん、分かるわ〜。その作戦は正解よ。」
さつきが親指を立てて言う。
つばさの顔はパァと明るくなる。
「先輩方は彼氏とかいるんですか?」
「私はいないよ。今は忙しいからね。」
沙織はもじもじして、
「私は…彼氏っていうか…旦那?」
さつきがクスクス笑い、
つばさは目を丸くして、
「えーー!?結婚してるんですか?」
「うん…つい最近したの。」
沙織は幸せそうだ。
「いいな〜、相手はどんな人なんですか?」
「つばさ、知ってるでしょ?」
さつきが言う。
「え?知ってる、確か去年…あっ!桜木先輩!」
「うん。一馬くん。」
「うそ!本当ですか?」
「ほんとだよ。だから今は桜木沙織。」
沙織は頬を抑えて、顔を真っ赤にする。
「羨ましいです!しかもあんな良い人なんて!」
「でしょ。ありがとう。」
「いいな、いいな、私も先輩と…」
つばさはうっとりしている。
2人はそれをみて微笑み、
「つばさ、頑張りなよ。」
「はい!頑張ります!」
その後はガールズトークに花を咲かせた。




