第7話
〈side 葵〉
マネージャーの仕事って思っていたよりもキツイ。重労働は無いと思ってた私が甘かった。部員の飲み物を用意するのが意外とキツイんです。
ボトルに水を入れると意外と重くって、早苗ちゃんと2人で持ってもボトル10本って意外と重い!
筋肉ついてムキムキになったらどうしよ〜
お嫁に行けないよ〜
「桐山さん、篠原さん」
そう言って葵達に話しかけてきたのは、一馬だ。
「ひぁ、ひぁい!」
「そんなに緊張しなくていいよ。仕事は慣れた?」
「はい、少しは。」
「そっか、そっか、どっちか2人にお願いがあるんだけど、いいかな?」
「大丈夫でーす!」
早苗が答える。
お願いってなんだろう?もしかしてマッサージとかかな?そんなの出来ないよ〜、先輩彼女いるし大丈夫なのかな?
「ちょっと、葵!」
「ひゃい!」
「話聞いてた?」
「マッサージは無理だから!」
「あんた何言ってんのよ。」
「あ、ごめん。聞いてなかった。なんの話だっけ?」
「だーかーらー、どっちが外で走ってる人に水持ってくかって話!」
「それなら、私行ってくるよ。ちょっと外出たいし。」
「ほ、ほんと?!よかった、じゃあ葵行ってきて」
早苗はそう言って手を振る。
桜木先輩カッコよかったなー。
練習始まる前に速川くんに聞いたんだけど、先輩ってものすごく有名な人みたい。
中学校の時に春と夏の全国大会で優勝して、県の選抜にも選ばれててその大会でも優勝して、最優秀選手に選ばれたんだって、凄いよねなんだか遠い世界の人みたい。今もアンダー?19?の日本代表なんだよ〜って速川くんが言ってた。速川くんもすごいのにね。
それより外で走ってる人って誰なんだろ?門のところにいると思うって言われたけど、あっ、あの人かなー?
「あのー?ハンド部の方ですか?」
「あ?あぁ、一応そうだけど。えーっと君は?」
「私ハンド部でマネージャーをやってるんですけど、ん!!!」
葵は驚いて目を丸くする。
この人朝の人だ!いきなりすぎて緊張してきた。ダメだ。落ち着かなきゃ。
しかし、葵の顔の温度は上昇していく。
「マネージャーね。んで何の用?」
「あ、えーと、その、桜木先輩が水を持って行けって。それで水持ってきました。」
「一馬くんが?ちょうど喉渇いていたし助かったわ。サンキュー。」
「い、いえ、大丈夫です!」
(なんか返事変な感じなっちゃったな〜。)
名前確か立花くんだったよね。立花くんはなんで走ってるんだろう?
「ど、どうして、立花くんだけ走ってるんですか?」
「え、なんで俺の名前知ってんの?」
「ひぇっ、あ、そのー、た、た、体操服!」
「あ、名前書いてあるの忘れてたわ。悪い悪い。」
(本当の事言わないほうがいいよな。)
「あー、多分、入学式欠席した罰かな?」
「なるほどです。だから1年生で1人だけ走ってるんですね。」
「もしかして走ってるの俺一人?一般入部の人も練習してる?」
「はい、一応してると思います。」
あれ?これ言わない方が良かったかな?なんか、怒ってる?!どうしよ嫌われたかな。今日はついてないなー。
葵はため息を零してしまう。
「そっか、水サンキューな。もう戻っていいよ。」
(あんのヤロー!後で問い詰めてやる!)
「じゃあ、失礼します。」
「あ、葵ー、おかえ…げっ!!」
早苗は帰って来た葵を見て驚いてしまう。
葵が見たこと無いくらいどんよりしていて、落ち込んでいるのが分かる。
「早苗ちゃ〜ん、なんだかお花畑が見えるよ。」
葵が低い声でこたえ、ふらふらと歩いている。
「葵!そっち行っちゃダメ!戻ってきなさい!」
早苗は葵の肩を持って体を揺らす。
「あっ、早苗ちゃん、どうしたの?」
正気に戻ったようだ。
「どうしたの?じゃないわよ!あんた死にかけてたんだからね!何があったの?」
「え、な、何もなかったよ?」
「嘘おっしゃい、何かあったんでしょ?」
「何もないよっ、大丈夫だからっ。」
「ふーん、まっ、葵がそう言うなら言いわ。で、走ってたの誰だったの?」
立花くんだったって言ったら、落ち込んでた理由ばれるよね、ばれたら早苗ちゃん立花くんとこ行きそうだし、迷惑かけたくな〜、よしっ、ここは誤魔化そう。
「うーんとね、さ、三年生?かな?多分何かなの罰だよ。」
「そう?カッコよかった?」
「ふ、普通かな。桜木先輩のほうがカッコいいと思うよ。」
「ふーん。」
何とか誤魔化せたかな?
「次からは隠し事なしね?あ・お・い。」
早苗は耳元で脅すように囁いた。
「へ、な、何のことかなぁー?早苗ちゃんに隠し事なんてするわけないよー。あははは。」
えっ、どこでばれたの?怖い。早苗ちゃん怖すぎるよ!
「今回だけよ。」
そう言うと早苗は歩いて行った。
早苗ちゃんに隠し事するのはもう止めよ。命が足りない。