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第64話

〈side 葵〉


今日は学校に行く気がしない。

休みたい。


行けば思い出すから。


立花くんとどんな顔して会えばいいの?


「葵ー!起きなさい!」


母が大声で言う。


「今日は学校行きたくない。」


葵は布団の中で母に背を向けて言う。


「何バカなこと言ってるの?早く行きなさい!」

「今日は行きたくないの!」

「あっそ、じゃあ退学してもらうわ。」

「え?なんでそうなるの!」

「どうせこのままじゃ明日も行かないでしょ。」

「それは…」

「学校辞めたくないなら、さっさと行きなさい!」


お母さんはずるい。


葵は重たい身体を起こして、学校に向かった。


教室に入ると、


「葵!昨日なんで帰ったの!?カバンも置きっぱなしで。」


早苗が飛びついてきた。


「え、まあ、ちょっとね。」

「それより、立花に告られたんでしょ?だから帰ったの?」

「なんで知ってるの?」

「あんな派手な告白知らないほうが不思議。で、返事は?なんか葵がフッたってみんな言ってるんだけど本当?」

「どうして、私が、」


私がフッたって?どうなってるの?

立花くんが言ったの?


「だって葵何も言わないでどっか行ったんでしょ?」

「それは…」


私がフッたことになってる。

どうしよう。


「どうして?好きだったんじゃないの?」


そんなの私にも分かんないよ。

好きなら追いかけてくれるって思ってたのに。


「葵はやっぱり他の人が好きなの?」

「ごめん、早苗ちゃん。今私のことは放っておいて。」


葵は不機嫌そうに言った。


「え、ああ、うん。ごめん。」


授業が全然頭に入らない。


どうして追いかけてくれなかったの?


葵はそのことばかり考えていた。


今日は部活が休み。


早く帰りたい。

立花くんに会ったらどうしよう。


ピローン


あ、沙織先輩からだ。


「今すぐ校門前集合。」


え?急になんだろう。

沙織先輩ってことは多分昨日のことだよね。

行きたくないなあ。


葵は重たい足を校門へと向けた。


校門の前に着く。


良かった立花くんいない。

あれ?

あれはさつき先輩。

嫌だなあ。


葵は不安で足がすくむ。


「葵ちゃん、やっと来た。」


沙織が言う。


さつきはこちらを見ようとはしない。


怒ってるのかな?

やっぱり見られたから怒ってるんだ。


葵はどこを見たらいいのか分からず、下を向いている。


「じゃあ、行こっか。」

「はい…」


3人は最寄り駅のいつも行く喫茶店へ


席は窓際


葵と向かい合うようにして沙織が座り、その横にはさつきが座る。


さつきは葵を見ようとせず、ずっと膨れている。


気まずい雰囲気が漂う。


嫌だな、早く帰りたい。


さつきが痺れを切らしたように、


「葵ちゃん!どうしてフッたの!?」


強い口調で葵に迫る。

その目には涙が浮かんでいる。


え?どうしてって、

先輩泣いてる?


「私は本気で燐くんのこと好きだったんだよ。私のことバカにしてるの?」


さつきから涙が溢れた。


どういうこと?

意味が分からない。

先輩は付き合ってるんじゃ…


「さつきちょっと落ち着いてよ。」


沙織がさつきをなだめる。


「私はフラれたんだよ。でも、葵ちゃんだったらいいって思ってたのに。それなのに…」


さつきは肩を震わせて、大粒の涙を零している。


フラれた?

なにがどうなってるの?


「ちょっと待ってください!先輩フラれたんですか?」


葵は身を乗り出して言った。


「そうだよ!葵ちゃんも見てたよね?」

「でも、先輩あのときキスしてたじゃないですか。」

「それは…、私から最後に頬にしたの。そのことは悪かったと思ってるけど。」


え?頬?


「頬にしたんですか?」

「そうだけど。」

「私は口にしてると…」

「そんなことしないよ!」

「じゃあ、私の勘違い…?」


心臓が高鳴る。


「もしかして、それだけでフッたの?」

「違います。私は…、人が沢山いたから、恥ずかしくなって逃げただけで、フッてなんか。」

「そうなの?」

「はい。」


じゃあ立花くんは私の事…

でも、どうして追いかけてくれなかったの?


「やっぱり今から、立花くんに会ってきます。」


葵はそう言って立ち上がる。


沙織はそれを制止し、


「ごめん、それは無理ね。」

「どうしてですか?勘違いしたままなんて、私は嫌です。」


さつきも悲しげな表情で葵を見ていた。


逃げたから?

だからダメなの?


「葵ちゃん、もう燐に会えないよ。」

「え?」


どうして?

会いたいよ。

私は今すぐ会いたい。


「燐転校したんだ。それも海外にね。」


雷に撃たれたような衝撃


頭が真っ白になる。


葵はそのまま膝から崩れ落ちた。


え?どういうこと?

転校?なにそれ、海外?

意味が分からない。


言葉が出ない。


「ごめんね、燐も急なことだったから。家族しか知らなかったの。」


だから来なかったの?

立花くんはそれを分かってて私に…

私は逃げた…?


じゃああのとき伝えておけば…


「沙織先輩、立花くんの連絡先教えて下さい。」

「ごめん、それは出来ないかな。」

「どうしてですか?」

「だって、燐のあんな姿初めてみたもの、私はそれに耐えられない。それに、今燐は切り替えないといけない時期よ、いきなり葵ちゃんから連絡来ても会えないし、驚くと思う。燐にとっては初恋だったから余計にね。葵ちゃんには教えてあげたいけど、弟のことを思うと無理かな。ごめんね。」


沙織は申し訳なさそうに言った。


「そうですか…」


私のせいだ、私のせいで

立花くんを苦しめた…


ごめん立花くん…

私があのときちゃんと伝えれていたら。


胸をえぐられるほどの自責、

葵はそれに耐えることが出来ない。


ごめんなさい。

私は本当にバカだね。


悔しくて悔しくて仕方がない。


やっと両思いになれたのに…


ごめんなさい。

本当にごめんなさい…


葵は嗚咽をもらした。


止め処なく溢れでる涙。


「うっ、うぅ……」


葵は拳を握り締め泣くことしか出来なかった。


「葵ちゃん…」


さつきが葵の背中を優しくさする。


先輩の方が悲しいはずなのに。


「葵ちゃん、もう、燐のこと忘れていいからね。ううん、忘れて、私からのお願い。」

「うぐっ、どうし…ぐすっ、てですか?」

「燐だっていつ帰ってくるかも分からないし、葵ちゃん可愛いんだから勿体無いよ。」

「でも…」

「もし、燐が帰って来て葵ちゃんに会ったときに、燐が葵ちゃんのこと忘れてたらどうするの?葵ちゃんは耐えられるの?」

「それは…」

「だからお願い…燐のこと忘れて…」


沙織は涙を零した。


想うことも許されないなんて、


絶望の淵に引き込まれる思い。


私はこれからどうしたら…

そんなに簡単に忘れられるの?

私の犯した罪も


この…


──私の初恋も──


「すみません、もう帰ります。」


葵はそう言って、店を出て行った。



「沙織、そこまで言わなくても。」


さつきが言う。


「分かってる、分かってるけど、燐は大事な弟だから。」


沙織は涙を拭いながら言う。


さつきは言葉を返せない。


「これ以上は何も言わないつもりだから。」

「そう、」

「ごめんね、さつき。」

「なんで沙織が謝るんだよ。」

「だって、今日辛かったでしょ?」

「まあ、そうだけど、私はフラれてるからね。心配しなくていいいよ。」

「でも…」

「いーの!そんなに気になるならケーキ奢れよな。」

「じゃあ、そうする。」

「ありがと。」


───────

─────

───


あれからどれだけ泣いたか分からない。


帰っている間も帰ってからも、ずっと泣いていた。


泣けば全て忘れられる。

涙が全部洗い流してくれる。

そう思っていた。


でもどれだけ泣いたところで、この気持ちが晴れることは無かった。


戻りたい、あの時に戻りたい。

そう思えば思うほど苦しくなる。

張り裂けそうになる。


このまま自分の心臓を握り潰してしまいたいほどに、


真っ暗な部屋の中で葵はベッドにもたれて座っている。

葵の目は死んだ魚のように何の光も無い。


会いたい、ただあなたに会いたい…


お願い、他に何も望まないから…

1年生編は終了です。


番外編をいくつか投稿したいと思います。



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