第63話
〈side 燐〉
俺はフラれたのか。
バカだな。
絶対に付き合ってくれるわけじゃなかったのに。
さつきをフッてまで、桐山に告白するなんて。
桐山も俺のことが好きだと勝手に思い込んでた。
俺は本当にバカだ。
ごめん、ごめんさつき。
でも、本気で好きだったんだ。
初めての気持ちだったんだ。
燐の中にただ悲しみだけが残る。
フラれる方もこんなに悲しいのか。
突き刺さるような苦しみ。
胸が張り裂けそうだ、
痛い、心が痛い。
こんなにも苦しいなんて、
こんなにも悲しいなんて、
俺はどうしたらいい……
感傷的な涙が後から後から溢れ出る。
止まらない。
燐はただ立ち尽くす。
「燐!」
そうか、もうそんな時間か
「早く出るよ。お母さん表で待ってるから。」
「うん。」
「どうしたの?」
「なんでもない。」
「うそ!泣いてるじゃない!」
燐は返事をしない。
「とりあえず、早く!」
沙織に燐は車へと連れて行かれる。
座席に座り燐は窓の外をぼんやりと眺めてた。
母がハンドルを握っている。
燐の横には沙織が座っている。
「姉ちゃん、」
燐が口を開いた。
「初恋って実らないんだな。」
「え?燐、フラれたの?誰に?」
「うん、桐山に。」
「それ本当?」
「ああ、」
「そう、」
沙織はそう言うと俯く。
母は何も言わずに前を向いて運転していた。
心の中に空白ができたような寂しさを感じる。
桐山……
頭の中に葵の顔が浮かんでは消えていく。
まだ胸が苦しい。
締め付けられる。
不意に涙が込み上げる。
燐は外を見ながら唇を噛み締め泣いていた。
「燐…」
沙織が心配そうな顔をして見ていた。
「燐、向こうでも頑張りなさいよ。」
母は言う。
「うん…」
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「じゃあ行ってくるよ。」
搭乗口の前で沙織と母に見送られている。
母は燐のもとへ駆け寄り抱きしめ、
「燐、自信を持ってね。あなたは私の自慢の子。」
顔は見えないけど泣いていると思う。
「うん、ありがとう。またすぐに帰ってくるよ」
燐は去って行く。
母さんに心配かけたな、
よしっ、切り替えないと。
気持ちを引き締めるが、燐の目からは涙が溢れた。
「お母さん。燐のあんな姿初めて見たよ。大丈夫かな?」
沙織は心配そうな顔をして言った。
「大丈夫よ、燐は強いもの。それにあの子にとってもこの経験は大事なことだと思うわ。」
そう言う母の目は凛々しい。
「まさか、燐がフラれるなんてね。」
「そうねえ。意外だったわ。」
「うん。」
「沙織も愛想尽かされないようにね。」
「もうっ、お母さん!私は心配ないよ!」
「ふふっ、そうね。」




