第56話
〈side 葵〉
「よっしゃーー!旭俺の勝ちだ!」
悠人がガッツポーズしながら言う。
「何故だ、僕の計算は完璧だったはず。」
旭は地面に手をついて伏している。
「おい、お前らなに言ってんだよ俺が優勝に決まってんだろ。」
隼人が大量の金魚を見せながら言う。
みんな上手いなあ。
私あんなにすくえない。
「早苗ちゃん。みんな凄いよ…えっ!?」
早苗は隼人の倍ぐらい取っていた。
早苗ちゃんすご!
「なあに、葵、私はこんくらい朝飯前よ。」
「ははは、すごいね早苗ちゃん。」
「葵ちゃんお腹空かない?」
「うん、少し。」
「じゃあ何食べる?」
「私はえっと…」
「まて!」
旭が葵の言葉を遮る。
「ひゃっ、松原くん?」
「すまない、葵、だがここは僕に一つ提案がある。」
「「なんだよ」」
「僕たち3人で一つずつ買ってくるんだ。その中で葵に好きなものを決めてもらうのだよ。」
旭がメガネをクイッとして言う。
「「おーー!それいいな!」」
「え、でもそんなの悪いよ。」
「葵ちゃん気にすんな、ここで待っといて。」
「え、でも、」
そう言う間に3人は散らばって行った。
「もう、みんな勝手だよね、早苗ちゃん。」
そう言って周りを見渡すが早苗がいない。
「あれ?早苗ちゃん?」
いない!あ、白馬くんと一緒なのか。
ってことは私今1人?
うぅ……どうしよう、寂しいな。
葵は木にもたれかかっている。
周りに人はあまりいない。
「お嬢ちゃん、1人?」
「よかったら、俺たちと遊ばない?」
葵は2人組の男に話しかけられる
え?誰?
「え、いや、待ってる人がいるので。」
男は身長は普通ぐらいだが、肌は黒く焼けており、髪の毛は金髪や茶髪でピアスも空いており、サングラスを掛けている。
明らかに柄が悪い。
「えー、いいじゃん。俺らと遊ぼうよ。」
「いえ、結構です。」
怖いなあ、早く誰か戻ってきて。
「楽しいからさ、こいって。」
その口調はだんだん強くなる。
「大丈夫ですから。」
「チッ、来いよ。悪いようにはしないって。」
男は葵の腕を掴んで強引に連れて行こうとする。
「イヤッ、やめて下さい。放してっ!」
葵は必死に抵抗する。
「大人しくしろよ!」
もう無理、誰か助けて…!
〈side 燐〉
「りんにぃ、あれとって!」
「燐くーん、私もあれ欲しいな。」
「おう、任しとけ!」
燐は射的をしている。
パンッ、
奈津の指定した景品が落ちる。
よしっ、んでもう一個が、
パンッ、
さつきのも落ちる。
「うわぁーーい!やった!りんにぃさすがあ!」
「やっるねぇ、燐くん。」
「あんちゃん、やるな、彼女さんかい?」
「え、いや、まあそんなところですかね。」
「大事にしなよ。ほれ、」
「はい。」
奈津にパンダのぬいぐるみを
さつきにはクマのぬいぐるみを渡した。
「りんにぃありがと!」
「おう」
燐は奈津の頭を撫でる。
奈津は嬉しそうだ。
「はい、さつき、」
「うん…、ありがと。」
「ん?これじゃなかった?」
「ううん、これだけど…」
「どうしたんだよ。」
「だ、だってぇ…、燐くんが…」
さつきは燐を見るとすぐ目を逸らし、恥ずかしがりながら、
「私のこと、彼女って。」
「いや、あれは!なんて言ったらいいか分からなかったから。ごめん!」
「どうして謝るの?」
「嫌だったんじゃないのか?」
「ううん、嬉しかったんだよ?」
さつきが満面の笑みで笑い、首を傾ける。
燐は顔を逸らす。
うっ…、可愛い…
奈津が燐をジト目で見ている。
「りんにぃ!」
「は、はい!」
奈津は頬を膨らまして、
「もーー!なつおなかすいた!」
「じゃあ食いもん買いにいくか。」
「うん!」
さつきは嬉しそうな顔で燐たちを眺めていた。
「なつ、何食べる?」
「うーん、なつはあそこのやつたべたい!」
そう言って指を指している。
燐はその方向を見るが、奥に別のものを見る。
ん?あれは、ナンパか?
困ってそうだな。
あ、手掴んだ。
ヤバイな
ん!?桐山!?
1人で来たのか!?
このままじゃマズイな。
「さつき、ごめん。ちょっと俺助けてくるわ!」
「え、ちょっと待って!」
燐は走って行く。
〈side 葵〉
お願い!誰でもいいから助けて!
「放してください!」
「いいからいいから、抵抗する方が痛い目みるよ。」
イヤだ、イヤだ
イヤだよ!
「ぐはっ!お前誰だ!」
葵を掴んでいた腕が離れる。
助けてくれた?
「すみません、こいつ俺の彼女なんで。やめてもらえません?」
男達は力の差が分かったようで、
「チッ、なんだよ。」
「行こうぜ。」
そう言うと去って言った。
誰だろう。
葵の前には男が立っていた。
「あの、ありがとうございます。」
「おお、桐山大丈夫だったか?」
え?この声は
男は振り返る。
「た、立花くん!?」
「ああ、そうだけど、桐山どこも怪我してない?」
燐はそう言って顔を近づける。
葵は顔を赤め、
「う、うん…、大丈夫。」
恥ずかしい。
でも、カッコよかった。
「もしかして1人で来たのか?」
「え、いや、」
「あのさ、よかったら一緒にまわらね?」
「え?妹さんは?」
誘ってくれた!嬉しいな
「それがさ、さつき先輩の家に浴衣借りに行ったら、なんか先輩も一緒に行くことになったんだよ。でも桐山、最初に誘ってくれただろ?だから悪いなって思ったからさ、今からでも良かったら一緒にまわらね?4人でになるけど、」
あ、そうなんだ。
さつき先輩とまわってるんだね。
でも私のこと考えてくれたんだ。
葵はニコリと微笑み。
「ありがとう。でも、」
葵の言葉を遮るように、
「おらぁーー!お前ナンパか!」
そう言って、悠人が燐に飛びかかる。
「うおっ!悠人?」
そう言いながら燐は悠人をいなした。
「え、燐か?何してんだよ。」
「は?それはこっちの台詞だ。お前一緒に来てんなら、桐山助けろよ、アホか!」
「何のことだよ。」
「もういいわ、兎に角、桐山からあんま離れんなよ。じゃあな。」
燐はそう言って振り返り、すぐ近くにいたさつきたちのもとへ。
あ、そっか、一緒に来てるんだもんね。
しょうがないか。
「葵ちゃん?なんかあったの?」
「ううん、なんでもないよ。」
「じゃあ、燐のやつ何しに来たんだ?やっぱり葵ちゃんをナンパしようとしたんだな。」
悠人はうんうんと頷いている。
「ははは、」
本当の事は言わないでいっか。
また会えるといいな。
「もうすぐ花火始まるし、みんな来たら行こうぜ」
「うん。」
〈side 燐〉
「ごめん、」
さつきと奈津が腕を組んで立っている。
「何があったの?」
「いや、ナンパされて困ってる人がいたから、助けてた。」
「ふぅーん、その間私たちがナンパされてもいいんだ?」
「いいんだ?」
さつきは少し膨れて言う。
奈津も語尾を繰り返して言う。
「いや、そういうわけじゃないって。」
燐は焦って弁解する。
2人はそれを見てクスッと笑い、
「いいよ、分かってるから。でも急にどっか行くから寂しかったんだぞ。」
さつきは燐の顔の前に人差し指を立てて言う。
「ごめん。」
「じゃあ、今から私たちの言うこと聞いてね。」
「うん、」
「りんにぃ、はなびいこー!」
「ああ、いいぞ。」
3人は花火の見える広場に向かう。




