第53話
〈side 葵〉
仙陽高校は順調に勝ち進み、明日に決勝戦を控えていた。
ついに決勝まで来ちゃったよ。
なんだか私まで緊張してきちゃう。
「葵ー。」
ビクッ
「なあに?早苗ちゃん。」
「なんでそんな驚くのよ。お風呂いこー。」
「うん、いいよ。」
大浴場に着くと、姫花と由利がいた。
はぁー、遠征のお風呂を思い出すなあ。
「先輩方、先にいたんですね。」
「そうですわね。」
姫花はぼんやりと答える。
あれ?いつもと違うな。
やっぱり緊張とかしてるのかな?
4人で浴槽に入っていると、
「わたくし、皆さんとご一緒に部活動が出来て楽しかったですわ。」
姫花が微笑んだ。
そうだ、姫花先輩は明日で引退なんだ…
なんだか寂しい。
こうやって話せるのもあと少しなんだ。
葵の頬を雫が伝う。
「姫花先輩、私も楽しかったです!」
「葵さん…」
「うわぁーーん、姫花さん。」
由利が泣きながら抱きつく。
「先輩、ありがとうございました。」
「みなさん…」
「わたくし皆さんのことが大好きですわ。」
3人が泣いている。
「でも、まだまだ終わっていませんわよ。最後に勝って終われるように頑張りましょう!」
姫花が立ち上がる。
「そして、また明日みんなでお風呂に入りましょう!」
そうだ、まだ終わっていないんだ。
「「「はい!」」」
4人は決起しお風呂を後にした。
葵はタオルを首に巻きながら廊下を歩いてた。
ふぅー、さっぱりした。
明日は絶対勝てるよね。
私も応援頑張らなきゃ!
ホテルの廊下には階ごとに椅子などが置いてある広いスペースがある。
葵はそこに座る人影を見る。
あれは、立花くんだ!
1人で何してるんだろう。
やっぱり緊張とかしているのかな?
葵は燐の側まで近寄る。
燐は背もたれに身体を預けていた。
あれ?寝てる。
こんなところで寝たら風邪引くのに。
起こさないと。
葵は肩をトントンと叩きながら。
「立花く〜ん、起きて〜、風邪引くよ。」
「んっ、んん…、」
燐は片目ずつ開き、
「ん?桐山?なに?」
「こんなところで寝てたら風邪引くよ。」
「あー、悪い、サンキュー。」
「もしかして緊張とかしてたの?」
「いや、そんなんじゃないけど、よく分かんね。」
「そんなんだ、」
葵は思い出したように、
「あ、そうだ!ちょっとここで待ってて。」
「うん。」
葵は走っていった。
あれ?さっきまで俺何してたっけ?
数十分前、
〈side 燐〉
燐は風呂から上がった後。
今日も疲れたなー。
ピローン
『おっす、( ̄Д ̄)ノ 今空いてる?』
先輩からか。
「空いてますよ、どうしたんすか?」
『会える?』
「別にいいっすよ。」
『じゃあ、ロビーに来て、5分以内ψ(`∇´)ψ』
「しゃーなしっすよ。」
5分って結構ギリギリだな。
チンッ
「一回、エントランスです。」
絶対間に合わねぇ。
汗かくのだるいし、もう諦めよ。
さつきがロビーの椅子に座っていた。
「先輩、5分は無理っすよ。」
さつきはちょっと怒ったように、
「もう一回やり直し。」
は?どういうこと?
「何をすか?」
さつきはため息をつき、
「私を呼ぶところからに決まってるだろ。」
あ、そういうことか。
「さつき、遅れてごめん。」
さつきは納得いった顔をして、
「まぁ、無茶振りだったから許すよ。」
「んで、どうしたんすか?」
「君が心配になってね。」
「なんのすか?」
「緊張とかに決まってるだろ。」
「あー、それなら大丈夫っすよ。もう慣れてるんで。」
「ほんと?」
「ああ。」
さつきの顔が明るくなる。
「それだけすか?」
「ううん、まだあるよ。私が明日君が活躍できるようようにおまじないしてあげる。」
さっきまでとは違い表情は穏やかだ。
おまじないってなんだろう?
「じゃあお願いします。」
「ちょっと、目瞑ってて。」
「はい?」
「いいから、いいから、早く瞑って。」
何だ?ちょっと怖いな。
「じゃあいくよ。」
うわぁ〜、ドキドキしてきた。
え?
燐の頬に柔らかい感触が触れる。
今のは…、
目を開ける。
さつきは照れたように笑っている。
頬は赤い。
「さつき…?何したの?」
「ないしょだよ。」
そう言ってふふん、と笑う。
「じゃあね、明日頑張れよ!燐。」
「ああ、ありがとう。」
さつきは立ち去る。
燐は頬抑えながら、その後ろ姿を見ていた。
今のってまさか…
まだ感触が残ってる。
燐はボーっとして、頬赤めていた。
時は戻る。
そうださつきに会ってたんだ。
思い出しただけでも…
燐の顔が赤くなる。
葵が戻ってきた。
「桐山、どうしたんだ?」
「立花くんにこれ渡そうと思って。はい!」
葵から綺麗にラッピングされた包みをもらう。
「開けていいか?」
「うん。」
中に入っていたのは赤のリストバンド。
「これ…」
葵は照れながら、
「うん、プレゼント。立花くんの片手まだ空いていたから。」
燐は片手に前にさつきに貰った物を着けていた。
ニコリと笑い、
「ありがとう。」
「うん、明日頑張ってね。」
葵はそう言って微笑んだ。
俺は色んな人に応援されてんな。
「立花くんまだここにいるの?」
「うん、まだ寝るには早いしもう少しここでゆっくりしようと思う。」
時間は8時
葵は頬を赤め、もじもじしながら、
「わ、私もいていいかな?」
「いいけど、椅子が」
「いい、私ここに座るから。」
そう言って葵は燐の隣に座る。
燐が座っていたのは2人掛けのソファー
「え、」
「ダメ、かな…?」
葵は上目遣いで燐を見る。
そんな顔でお願いされたら断れねぇよ。
「別に、大丈夫。」
やっばい、ドキドキしてきたー!
葵は頭を燐の肩へ乗せる。
ピクッ
うそだろ。近い近い、うわぁー!
ダメだ。
「桐山?」
「ごめんね、少しだけだからお願い。」
葵はこちらを見ずに言う。
「ああ。」
2人の脈は早くなる。
(大胆なことしちゃったよ。ドキドキする。でも、幸せだな。)
無言の時間が続く。
俺もうどうにかなりそう。
桐山いい匂いする。
いっそこのまま、抱き締めて…
あーー!それはダメだ!絶対ダメだ!
明日決勝だぞ!
何考えてるんだよ俺。
ここは耐えろ、耐えるんだ
やっぱり桐山といるとふわふわすんな。
でもなんだか心地が良い。
いい気分だ。
(やっぱり私は立花くんのことが好きだな。大会が終わったら…、うん、そうしよう。)
葵は顔を上げて、
「立花くん。」
「な、なに?」
なんだなんだ
真剣だなおい。
「帰ったらさ、お祭り行こうよ。」
あ、これは無理なやつだ。
くそ、ちょっと悔しい。
一緒に行ってみたかった。
燐は頬をポリポリと掻きながら、
「ごめん、それ妹と行かないと行けないんだ。」
「そっか、じゃあ仕方ないね。」
寂しそうな表情を見せる。
ごめん桐山、
「そろそろ部屋戻ろうか。」
「うん、そうだね。明日絶対勝ってね。」
「おう、任しとけ。」
2人は部屋へ戻る。
燐は隼人と同じ部屋。
ガチャリ
「遅かったな、」
隼人がベッドに座りながら言った。
「ああ、ちょっとな。」
「で、告られたのか?」
隼人はこちらを見ずに言う。
は?こいつまさか…
「お前、見てたのか?」
「目に入っただけだ。」
はずかしいぞ!
「別に何もねぇからな、リストバンドもらっただけだ。」
「ふぅーん、そうか、肩を貸して貰ったのか。」
燐は開いた口が塞がらない。
「な、あれは、桐山が言ってきたからで、普通断れねえだろ。」
「ま、今日は追求しないから心配すんな、明日に響くからな。」
「お前今日はって、」
隼人は呆れたように、
「当たり前だろ、俺は葵が好きなんだからな!」
こいつ、はっきり言いやがるな
「知らん!もう寝る。」
もういやだ、こういう時は逃げるが勝ちだ。
「ああ、お前は寝ろ。余計な事は考えるな。」
「分かってるよ。」
夜は更けていく。
一気に飛びました。




