第49話
〈side 葵〉
よしっ!
準決勝も無事突破だ。
準決勝は燐の活躍もありかなり大差で勝利した。
立花くん絶好調みたい。
よかった〜。
葵の顔は自然と綻ぶ。
「早苗ちゃん、今日も無事突破したね。」
「そうね、良かったわ。それにしても立花くんの活躍は凄かったわね。」
「うん!」
「あんた嬉しそうね。」
葵は頭を掻きながら、
「そ、そうかな〜。」
今日は絶対立花くんと話しをするんだ。
燐たちが戻ってくる。
燐は妹や母と話すと、1番初めにさつきのもとへ向かって行った。
やっぱりそうだよね。
自分の弱みを見せた人がさつき先輩だけだもんね。
いいなあ〜、
「葵、」
「なあに?」
赤井くんだ。
「まだ話せてないのか?」
「うん…、でも今日話そうと思うんだ。」
赤井くんは気にしてくれてたんだね。
「そうか、」
隼人は少し寂しげな顔を見せる。
「赤井くんどうしたの?」
「いや、なんでもない。仲直り出来るといいな。」
「うん、そだね。ありがとう。」
「ああ。」
隼人と葵は燐とさつきの様子を眺めていた。
「なあ、燐とあの人は付き合っているのか?」
「ううん、まだなんだって。」
「そうか、葵は嫌じゃないのか?」
「嫌だけど、私のせいだから…」
沈んだ顔を見せる。
「嫌なこと聞いたな、悪い。」
葵は自分に言い聞かすように、
「ううん、大丈夫。もう大丈夫…」
監督のミーティングが終わる。
なんだか緊張するな。
立花くんどこだろう?
葵はキョロキョロするが、見つからない。
あれー、もう帰った?
でも、さつき先輩とかまだいるしなあ。
「桐山、」
背後から声を掛けられる。
「はい!」
びっくりした〜
葵は振り返りもう一度驚く。
「え?立花くん?」
「ああ、いきなり悪い、ちょっと話あるから、今日一緒に帰らね?」
まさか立花くんから声を掛けられるなんて。
ドキドキしてきた。
葵は下を俯き、遠慮気味に、
「うん…」
「じゃあ、帰んぞ。」
そう言って燐は歩き出す。
あ、待って。
葵を慌てて後を追う。
ふと、さつきの方を見ると、こちらを見て微笑んでいた。
イヤじゃないのかな?
隼人は葵の姿を心配そうな様子で見、
旭は寂しげな顔をして見ていた。
並んで駅まで歩く、2人の間に会話がなく、車の走る音だけが聞こえる。
もう日が傾きかけている。
無言が辛い。
話したいけど、話したいんだけど…
勇気が出ない。
臆病だな私。
終始無言のままいつもの最寄り駅に着いてしまう。
どうしよう。
家に着いちゃう。
「おい、あそこでいいか?」
燐はそう言って指を指す。
その指の先には公園があった。
大きくもなく小さくもない公園。
ブランコや滑り台などの最低限の遊具しかない。
もう日も暮れているので、誰もいない。
葵はコクリと頷く。
燐はそのままブランコに腰かけた。
葵もブランコへ。
2人で並んで座る。
また沈黙。
キーキーとブランコの音だけが響く。
なんて言おう、ごめんかな?
うん、まず謝るのが先だよね。
葵は燐を見る。
燐は俯きなが揺られている。
「……た、ち…」
葵は消えそうな声を出すが、
ブランコの音に掻き消される。
あぁ…、言えない。
ダメだ全然ダメだ。
葵は俯きため息をはく。
このままじゃ終わっちゃうな。
街灯がチカチカと点滅している。
「ごめん……」
横からか細い声が聞こえる。
え?今ごめんって
「ごめん。」
今度ははっきりと聞こえる。
葵は燐を見るが、燐は俯いたままだ。
「うん…、こっちこそごめんね。」
葵の頬をそれがツーとつたう。
何だろう、なんだかすごく安心する。
心が温かくなる。
今日は三日月か。
「桐山は悪くない、あの時の俺がおかしかったんだ。だからお前が謝るな。」
おかしかったって?
私のことは?
「ううん、私も声上げちゃったから。」
「それは仕方ないだろ。」
「でも、」
「でもじゃねぇ、今回は俺が悪いんだ。だから桐山は謝るな!」
「うん…」
葵は静かに頷く。
立花くんは優しいね。
「じゃあ、この件はこれで終わりな!だから、もう泣くな!」
燐はそう言ってハンカチを差し出す。
「ありがとう…」
うっ…うぅ…
涙が止まらないよ。
「おい、もう泣くなって。」
「でも、だって…、もう喋ってくれないと…ぐすっ」
「そんなわけ無いだろ!それは俺の台詞だからな!」
え?そうだったんだ…
葵は泣きながら、微笑って、
「私たち、バカだよね。」
「そーだな。」
燐は視線を逸らしながら言う。
「来週の決勝絶対勝ってね。」
「お、おう。」
葵はふふっと笑う。
「じゃあ帰るか」
「うん。」
2人は公園を後にする。




