第48話
〈side 葵〉
やった!勝った!
立花くん5分ぐらいしか出てなかったな。
もっと見たかった。
燐たちが観客席に帰ってくる。
やっぱり妹だったんだ、仲良いんだね。
花宮さんから何か貰ってる?
私もああいうこと出来たらなあ。
葵はさつきとじゃれ合う燐を遠くから眺めていた。
あ、さつき先輩怒ってる?
でもなんか良い雰囲気だな。
付き合ってるのかな?
なんだろう胸がきゅうってなって、苦しい。
ものすごく切ない気持ちになる。
ああ、私やっぱり立花くんのことが好きなんだ。
私は、どうすればいいの…
葵の瞳には涙が浮かぶ。
「葵ちゃん。」
背後から名前を呼ばれ、
振り返る瞬間に目からこぼれを落ちる。
「え?葵ちゃん?どうしたの?」
「沙織先輩、目にゴミが入っちゃって。」
葵は慌てて涙を拭く。
沙織は優しい顔をし、
「そう。」
そう言うと優しく頭を撫でた。
先輩に心配かけちゃったな。
「沙織、葵ちゃん」
さつき先輩戻ってきたんだ。
「イチャイチャの時間は終わったの?」
さつきは一瞬怯み、
「別にそんなんじゃないんだけどな〜。沙織に言われたくないし!」
頬をぷくっと膨らましている。
「はいはい。」
「もうっ、沙織のバカー!」
沙織はふふっと笑い、
「だって、いつも私ばっかり言われるから、仕返ししたくなっちゃった。」
微笑いかける。
「むぅ……、しょうがないな〜、今回だけだぞ。」
この2人可愛すぎる!!
はぁー、勝てっこないなー。
「葵ちゃん。」
さつきが言う。
「はい、」
「今から暇?」
「はい、暇ですけど。どうしたんですか?」
「じゃあさ、3人でどっか行こっか。話したいこともあるし。いいかな?」
「はい、大丈夫です。」
話したいことってなんだろう?
もしかしてもう付き合ってるとか?
違うとしても、立花くん関係の話な気がする。
なんだか憂鬱だな。
「ちょっと、3人って私も入ってるよね?」
「そうだよ、あったりまえじゃん。」
「私は一馬くんと帰るのに!」
沙織はの声は勢いがある。
「いいじゃん、たまにはさ、それに沙織だって気になることあるだろ?」
そう言ってさつきは沙織に耳打ちする。
沙織はハッとし納得した表情を見せる。
「確かにそうね。今日だけよ。」
「さっすが、沙織ちゃん。」
さつき先輩何を言ったんだろう?
ミーティングを終えると、
葵は3人で帰路に着く。
「あそこのカフェでいいよね!」
「うん。」
葵はコクリと頷く。
3人が選んだのは、駅の近くにあるカフェ。
いつも行っているところとは違った雰囲気があり、客層も若い女性が多い。
3人は入ってすぐにある4人掛けのテーブルに座る。
葵の向かいにさつきと沙織が座る。
うぅ…、なんか取り調べみたいで緊張する。
それに、こんなかわいい所初めて来たな。
3人が注文し終えると、さつきが、
「葵ちゃん。急にごめんね。」
その口調は軽い。
「いいえ、私も暇だったので大丈夫です。」
「そっか、」
さつきは視線を落とし、考え込む。
沙織はぼーっと葵を眺めていた。
どうしたんだろう?
さつきは重そうな口を開き、
「私今日は話が2つあるんだ。」
その目は真剣そのものだ。
葵も大体の内容を察し、
「はい…」
表情は少し悲しげだ。
「私ね葵ちゃんに謝らないといけないことがあるんだ。」
え?謝る?
やっぱり付き合ってるんだ。
葵の脈は徐々に早くなる。
「なん…ですか?」
「私ね、」
イヤだ、イヤだ、聞きたくない!
イヤ。
「燐くんのこと好きになっちゃった。」
葵は少し驚いた表情を見せる。
沙織は2人の表情を交互に伺っている。
「葵ちゃんのこと応援してたのにごめんね。」
あれ?思ってたのと違う。
「大丈夫ですよ。私もそんな気がしてました。そんな謝らないで下さい。さつき先輩は悪くないですよ。」
「ありがとうね、葵ちゃん。」
さつきの頬が緩む。
「はい。」
これが1つ目だとしたら、もう一つは何だろう?
「それでね、もう一つなんだけど。」
葵はゴクリと唾を飲む。
「葵ちゃん、燐くんと何があったの?」
「え?」
付き合ってるとかじゃないんだ。
よかった。
やっぱり気になるんだ。
「私もそれ知りたいな。」
沙織が言う。
2人が葵に向ける目は真剣だ。
どうしよう。
言ったほうがいいの?
言えば少しは楽になるのかな?
葵の重い口が開く。
「じゃあ、話します。実は…」
林間学校の夜の出来事を話した。
「そんなことがあったんだ。それは葵ちゃんもへこむね。」
「だから燐くんあんなにへこんでたんだ。なんかちょっと悔しいな。」
「「へこんでたの(たんですか)!?」」
葵と沙織は驚く。
立花くん落ち込んでたの?
でもなんでさつき先輩が知ってるんだろう。
さつきは目を丸くし、
「え?2人とも知らなかったの?」
「はい、私は知りませんでした。」
「私も変だとは思ってたけど、へこんでるとはね。」
「知ってると思ってたんだけど。」
「さつきはどうして知ってるの?」
「それは……」
さつきは視線を逸らす。
(どうしてって言われてもな〜。言っていいのか?)
「なぁに?言えないの?」
「言えないっていうかなんていうか。」
さつきは苦い表情を見せる。
「私も知りたいです。」
「もうっ、葵ちゃんまで。」
(言わなきゃいけない雰囲気だよね〜。)
2人の視線はさつきを放さない。
さつきは観念して、
「あー、もう分かったから、でも絶対言わないって誓える?」
2人は勢いよく何度もコクコクと頷く。
「絶対だからね。それが、この前…」
さつきは燐が雨の中1人で店の前で立って泣いていたと話した。
(抱き締めたとか言わないでおこっと、追求されるとめんどくさいしね。)
「あの、燐がねぇ〜。」
沙織はカップを持ってグルグル回しながら言う。
その表情は少し驚きを含んでいる。
葵は言葉が出ない。
立花くんが泣いてた…?
悩んでいたのは私だけじゃなかったんだ。
「それで、葵ちゃんはどうするのかな?」
「どうするって?」
「このままだと私が燐くん貰っちゃうけど。」
あ、そうだ何にも解決してないんだ。
「それは…」
さつきはため息を吐き、
「いい加減葵ちゃんも認めなよ、燐くんのこと好きなんだろ?」
そうだ、私は、私は……
「はい。」
さつきを見つめる目は揺るぎない。
「やっと、認めたね。」
さつきの表情は嬉しそうだ。
「明日、話してみようかなって思います。」
「そうだね、それがいいよ。」
さつきはニコリと微笑む。
沙織は2人を穏やかな顔で眺めていた。
そして、ニヤリと笑い。
「さつき〜、その日燐が嬉しそうな顔してたんだけど、他に何もしてないの〜?」
ギクッ
「え〜、何にもないよ〜。それにあっても教えないし。」
さつきは少し好戦的だ。
何かあったの?
もしかしてキスとか?
えーー!!それはイヤだなあ
葵の表情は暗くなる。
やっぱりさつき先輩は手強いな。
「そ、まあさつきは意外とビビりだから何もしてないだろうけどね。」
沙織は鼻で笑う。
(ムカッ、)
「ふーんだっ!別に出来るもんねっ!沙織ぐらいは進んでないけどハグぐら、あっ、」
そこでさつきはハッとし、自分の口を両手で塞ぐ。
顔がカーッと赤くなる。
(しまった。乗せられた。)
沙織はニヤニヤしながら、
「ハグがどうしたの〜?」
え?ハグって言った?
今ハグって言ったよね?
うわぁーん、先輩に取られちゃう。
私もハグしてほしいな…
「え、そ、それは…」
ダメだこれ以上は聞きたくない!
「沙織先輩はどこまで進んでるんですか?」
「え?」
沙織は呆気にとられる。
「おーー!私も気になる!」
(ナイス!葵ちゃん。これで形勢逆転。)
さつきは葵にウインクする。
沙織は顔を真っ赤にし、
「私は…、そのー、えっと…、さ、最後までっていうかなんていうか、もうっ!恥ずかしいからムリッーー!!」
声を上げる。
2人はポカーンとしている。
え?最後まで?
最後までってことは……
「沙織、ごめん聞いたのが悪かった。」
「先輩すみません。まさか本当に言うとは。」
沙織はムッとし、
「もうっ、冗談だったの?やめてよねー、こっちは本気で恥ずかしかったんだから。」
3人はその後ガールズトークに花を咲かせる。




