第46話
〈side 葵〉
ここはこの県で、1番大きな体育館。
一階が観客席になっており、地下にコートがある。
入り口付近で一際目立つ赤色のジャージの集団、
仙洋高校ハンドボール部だ。
「おい、見ろ仙高だ。」
「相変わらず威圧感すげえな。」
「ああ、赤色を見るだけでビビっちまう。」
「今年も仙高で決まりか?」
「いや、まだ分からん。今年は、西央大附属がかなり仕上がってるらしい。」
「そうなのか?じゃあ今年も決勝のカードはその2校だな。」
「ああ、おそらくな。」
おわぁ〜、注目されてるなあ。
そんなに有名だったんだ。
知らなかったな。
確かに赤色の集団がいたら目立つよね。
今日は私にとって初めての公式戦です。
ベンチに入ることは出来ないので、外から精一杯応援しようと思います!
体育館に入ると、もう一試合目が始まっていた。
コートは2面あり、決勝戦は中央に1面だけ作ってそこで試合をする。
中へ入ると、歓声や熱気が葵を包み込み、
床に反射した光が目に飛び込んでくる。
これが、公式戦…
すごい。応援の声がすごく大きい。
人が多い。
いつもとは違う、独特な雰囲気が漂っている。
なんだか、すっごくドキドキする。
いつもと違う感じ。
高揚感って言うのかな?
私たちの試合は昼からなので、まだかなり余裕がある。
どうして早く来たかたと言うと、対戦相手の偵察をするためらしい。
偵察ってなんかワクワクするよね。
地区予選から上がって来た8校を4校に絞り、そこからトーナメントでシード校と対戦する。
私たちは3回勝てば優勝となり、インターハイに出場出来る。
意外と楽?分かんないね。
みんな真剣に観てるなあ。
私が見てもあんまり分かんないや。
お昼前にアップをするらしい。
下の階にある小アリーナに移動するみたい。
思ってた以上にみんな落ち着いてて、雰囲気は良いみたい。
これなら心配ないよね。
1年生で試合に出るのは、立花くんだけみたい。
というか、ユニフォームもらってるのが立花くんだけなんだ。
私は改めて立花くんの凄さを実感した。
立花くんもいつも通りだし心配無いみたい。
相変わらず私たちは話せてないけど。
なんだか悲しいな。
アップ終了後、自分たちの席に戻ると、見覚えのある2人がいた。
男ばっかりの中で一際目立つ黒と金の美人2人。
2人は葵を見つけるとすぐ、
「葵ちゃん、こんにちは。」
「やっほー、葵ちゃん。」
「あ、さつき先輩に沙織先輩。応援に来てくれたんですね。」
「もちろん、一馬くんが出るものついでに燐も。」
沙織は拳を握りながら言う。
「うん、燐くんに呼ばれたからね。」
さつきは少し照れ臭さそうに言う。
立花くんに呼ばれたんだ。
さつき先輩もなんだか嬉しそう。
やっぱり好きなのかな?
葵は少し悲しげな顔をする。
「なぁに、葵ちゃんそんな顔して、今日はいっぱい声出すよ。」
「そうだよ、葵ちゃん、元気だせ!」
そうだよね、私がこんな顔してちゃダメだよね。
葵は顔上げ、笑顔で、
「はい!今日は応援頑張りますよ〜!」
「「そうこなくっちゃ。」」
2人はフフフと笑う。
もう直ぐ試合が始まる。
「りんにぃーー!!がんばれ〜!」
立花くんは手を振っている。
立花くんの妹かな?
可愛い。
立花くんのお母さんと妹さんも応援に来てるんだ。
そりゃそうだよね、家族だもんね。
あ、さつき先輩と仲良さそう。
燐の母は、葵を見ると会釈し、
葵もペコリとお辞儀をした。
私のこと覚えていてくれたんだ。
嬉しいな。
「立花さま〜〜!!」
胸に手を当ててクネクネしている女性がいる。
え?何あれ。
あの人はいつも立花くんを追いかけてる、
名前は確か……花宮さん!
花宮さんも来てるんだ。
「お母さん、りんにぃモッテモテだね!」
屈託の無い笑顔で言う。
「そうねぇ、嬉しいことだわ。」
母も嬉しそうだ。
さつきは少し浮かない表情。
「さつき先輩どうしたんですか?」
「いやぁ〜、だってさ、あんな可愛い子がいるとね。」
「あぁ〜、そうですね。」
葵はチャンチョンと服を摘まれる。
「おねえちゃんも、りんにぃのことすきなの?」
奈津の目は透き通っている。
いきなり!?
「え?お姉ちゃんは…まだ分かんないかな?」
奈津はそれを聞くなり、口を尖らせ、
「ちぇ〜、つまんないの。」
つまんない!?
この子立花くんがモテるの楽しんでるのかな?
さつきと沙織は横でクスクス笑っている。
「ごめんね。」
奈津はコクリ頷くと、母のもとへ戻っていく。
分かんなくは無いけど…
でも…
「葵ちゃん、始まるよ!」
「え!?あ、はい!応援頑張りましょう!」
今は試合に集中だ!
余計なこと考えないようにしなきゃ。
隼人はその様子を眺めていた。
やっぱりまだ話してないのか。
予選始まりました。




