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第43話

〈side 燐〉


林間学校から数週間経った。

あれから桐山とは一言も話していない。

2人とも牽制しあって、話す機会がなかった。

そして、時間が経てば経つほど、話しずらくなっている。

それが今の俺と桐山の状況。


桐山とのことは考えないようにしている。

元々何も無かったからな。

あの時の俺はどうかしてたんだと思う。

でも、時々、喪失感が俺を襲う。

そのときは無性に悲しくなる。

理由がわからない。

元々何も無かったはずなのに…


今週の土曜から、インターハイ二次トーナメントが始まる。

俺達は、シードなので一次予選はなく、二次トーナメントからの参加になる。

まあ、インターハイ出場は問題ないだろう。

多分。

精神的なものは、大丈夫なはずだ…

練習にも影響は出ていないからな。


今日は、大会前最後の休み

俺はまっすぐ家に帰る。

電車に揺られ、最寄り駅に着く。


ポツ、


ん?なんだ?水?


雨か、傘持ってきてないな。

まあ大丈夫だろう。


雨脚はだんだんと強くなる。


ザーッ、


嫌な雨だ、俺の気持ちを映しているみたいだな。


燐は雨に打たれずぶ濡れになっている。


どうして、今頃になって、こんな気持ちになる。

訳が分からない。


雨が冷たい……


涙をごまかせそうだ。

俺は泣きたかったのか?


燐は土砂降りの中を歩き続けた、

自宅を通り過ぎる。


何処へ向かうのか自分でも分からない。


─────────

──────

───


ふと、気がつくと見覚えあるケーキ屋の前に立っていた。


そうか、ここへ来たかったのか。

俺は会いたかったんだな。あの人に。


雨の中をただ立ち尽くす。



駅にて、


「わぁお、土砂降り、傘持ってきてよかったー。」


「ふんふんふふーん♪」


鼻唄を歌いながら歩いていく。


家に向かうさつきの足取りは軽い。



さつきは家の前に人影を見つける。


(ん?家の前に誰かいるな〜、傘も持たずになにしてるのかな?もうっ、風邪引くぞっ)


「ねぇ、君、傘も持たずに、えっ!?」


その人影がよく知っている人だと気づく。


(燐くん?)


「あ、さつき…」


さつきを見る顔は悲しげだ。


「バカ!こんなとこでなにしてるんだ!?」

「俺も良く分かりません。さつきに会いたかったのかな…」


そう言って燐は苦笑する。


さつきは燐を抱き締める。


え?さつき?


「バカ…、風邪引くだろ。」


力はさらに強くなる。


さつきの声は涙声だ。


さつきの温もりを感じる。


俺はこれを求めていたのかも知れない。


「うん…、ごめん。」


さつきは抱き締めたまま、


「とりあえず、上がる?」

「うん。」



燐はシャワーを浴びせさせられた。


着替えはさつきの父の服を借りた。


タオルを頭に被ったまま燐はさつきの部屋と入る。


「少しは落ち着いた?温かいお茶入れたから、飲んでいいよ。」

「はい、ありがとうございます。」


燐はお茶を啜る。


あったかい、身体が温まるな。


「で、君はあんなところで何をしてたのかな?」


さつきの声は優しい。


「分かりません、気がついたら、先輩の家の前にいました。」

「そう。大事な試合前だろ。風邪引いたらどうするんだ。」


ならいっそ、そのほうが、


「その方が良かったのかも知れません。」

「相当へこんでるね、何かあった?」


あったと言われればあったけど…


燐は黙り込んでしまう。


「言いたくないならいいよ、別に、でも、いつまでも落ち込んでる場合じゃないだろ。」

「はい…」


燐の表情はさつきを悲しくさせる。


さつきはまた燐を抱き締める。


涙声で、


「君が元気なかったら、心配するだろ。試合楽しみにしてるんだからさ。私に君の活躍する姿を見せてよ…、私のために…」


ああ、先輩の腕の中は温かい。

このままでいたい。

この温もりの中でなら…


全てをさらけ出せるかもしれない、


この人なら…


全てを受け入れてくれるかもしれない、


燐の感情が溢れ出る。


さつきの胸を濡らした。


さつきは燐をただ抱き締める。



「落ち着いたかな?」

「はい、ありがとうございます。」


さつきは燐の頭を撫でる。

頰が緩む。


「甘えてしまってすみません。」

「ううん、良いんだよ、もっと甘えてよ。」

「さつき…」


燐は再びさつきの腕の中へ。



「すぅ……すぅ……」


燐はさつきの腕の中で夢を見る。


「あらら、寝ちゃったか。」


さつきは燐の頭を撫で続ける。


あんな燐くん初めて見たな、そうとうへこんでたんだね。何があったんだろう。


でも、私のところに来てくれるなんて、

ちょっと嬉しかったな。


燐を見つめるさつきの表情は穏やかだ。


ふふっ、寝顔可愛い。


寝てるならバレないよね。


さつきはそっと燐の頰へキスをする。


君が元気になりますように……


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