第42話
〈side 葵〉
今日は色々疲れたな。
告白されたり、抱っこされたり。
ドキドキしっぱなしだよ。
こういう時は外にでも出て、風に当たるのがいいよね。
「あ、葵ちゃんどこ行くの?」
「ちょっと、風に当たりたい気分なんだ。」
「そうなんだ、あんまり遅くなったらダメだよ。」
「うん、ありがとう。」
楓ちゃんお母さんみたいだな。
サラサラと風が吹き抜け、葉を揺らす。
雑木林の奥には闇が広がっている。
月の明かりが、葵を照らす。
今日もお月さんが綺麗だなぁ。
あの日もこんな月だったよね。
───立花くん。あのね、私…
あの時もし、伝えていたら、どうなってたのかな?
私は本当に立花くんのことが好き?
それとも他の誰かが好き?
誰か教えて欲しいな。
また呟いたら、あのときみたいに来てくれるのかな?
私はどうしたらいいの?
立花くん…
私はあなたのことが…
「はぁー。」
「葵?」
え?もしかして、本当に来てくれた?
でも、立花くんは葵って呼ばなかったよね。
じゃあ違うのか。
「やっぱり葵だ、なにしてるんだ?」
「あ、赤井くん。ちょっとね、風にあたりたくなって…、赤井くんは?」
赤井くんだったんだ。
「そうか。俺も同じかな。」
「一緒だね。」
葵は隼人に微笑いかける。
「お、おう。」
隼人は顔を逸らす。
「何かあったの?」
「え?」
どうしてそんなこと言うんだろう。
「いや、なんか悩んでそうな顔してたから。」
「そう?」
私ってそんなに顔に出やすい?
恥ずかしいな。
「ああ、俺でよかったら話聞くけど。」
「うん…、でも、大丈夫かな。心配してくれてありがとう。」
「おう、」
「ちょっと話しね?」
「うん、いいよ。」
2人は林間学校で楽しかったことや部活のことを話した。
「あははは、赤井くん、面白いね。」
「そ、そうか?」
隼人は頰を赤める。
「うん、あと、とっても優しいしね。」
「それはあんまり言われた事ないんだけどな。」
「そうなの?赤井くんはとっても優しいよ。」
葵は首を傾げ、破顔する。
隼人は照れ臭そうに、
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
葵はそう言ってニッと笑う。
「そろそろ戻るか?」
「そだね。ありがとうね赤井くん。」
「こっちこそ。」
2人は宿舎の方へ向き直す。
あれ?立花くん?
燐がこっちを見ていた。
「立花くん?何してるの?」
「え?いや、通りかかったら。知ってる人がいたもんで。」
「そうなんだ。」
もっと早く来て欲しかったな。
「2人は付き合ってんのか?」
「「え?」」
そう思われたの?
どうしよう。
「ううん、たまたま会っただけだよ。」
「おう、たまたまだ。」
「そうか、悪かったな邪魔して。」
え?勘違いしてない?
本当にそんなんじゃないのに。
「ち、違うよほんとにたまたまなんだよ?」
「でも、いい雰囲気だっただろ?」
「だから、そんなんじゃないんだって。」
「楽しそうだったじゃん。無理すんなよ。」
(あれ、なんだこれ、なんでこんなこと言ってんだ俺、桐山が他の誰かと楽しそうに話してても俺には関係ないだろ?)
「そんなんじゃないってば!」
なんで?どうしてそうなるの?
「じょあなんなんだよ!」
(くそっ、なんなんだよ…、俺は何がしたいんだ?)
「ほんとにたまたま会っただけなんだって!!」
私のこと信じてよ、
「嘘つくなよ!隼人のことが好きなんだろ!!」
(なんでこんな事言ってんだ俺。なんでこんなに嫌な気持ちなんだ?訳わかんねえ)
「おい、2人とも落ち着けって。」
「立花くんは何も分かってないよ!!私の気持ちなんてわかるの?勝手に決めつけないでよ!!!」
なんでそんなこと言うの?
私は別に赤井くんのことは、
立花くんはどう思ってるの?
教えてよ…
葵の初めてみせる剣幕に燐は怯む。
3人を月明かりが照らす。
「そうか、悪かったな。」
そう言うと、俯いて、その場を後にする。
(なんでこんなに悲しいんだ。)
「待って…、立花くん…」
葵は消えそうな声で言うが、燐には届かない。
どうして?どうして?
分からない。
なんで?
なんでこうなったの?
ほんの数時間前まで、あんなに幸せな気分だったのに…
どうして?
お願い振り返ってよ。
立花くん…
葵の目から光るものが溢れ落ちる。
その数は増えていく。
「ひぐっ、ごめんね、赤井くん。ぐすっ、赤井くんは気にしないでいいからね。」
「葵、泣くなよ…」
「ごめんね、ごめんね、もう直ぐ大会始まるのにね、立花くん大丈夫なのかな。負けたら私のせいだね。ごめんね。」
葵の涙は止まらない。
「気にするな、また話し合えばいいだろ?」
「うん。ありがとう赤井くん。」
やっぱり赤井くんは優しいな。
きっと話し合えば、分かり合えるよね。
大丈夫だよね。
大丈夫…
林間学校編は終わりです。
昼ごろに番外編をいくつか投稿します。




