第37話
〈side 葵〉
「葵ー、今からダンスするらしいよ。」
「そうなんだ。」
「それでね、最初は一緒に踊る人指名出来るらしいよ。立花くんを指名しなよ〜」
「そうなの?それは…」
「うん、ただし前に出るか、本人のところへ行くかしないといけないけどね。」
なにそれ!?
絶対みんなに見られるよね?
そんなの恥ずかしくて出来ないよ。
「私はちょっと…」
「え?なんでー?チャンスだよ?」
早苗は葵の顔を覗き込むようにして言う。
「だって…、断られるかもしれないし…」
みんなの前で断られたら立ち直れないよ。
「なーんだ、そんなことか。」
早苗はニヤニヤしながら言う。
「私には大事なことなの!」
早苗ちゃんは分かってないよ。
「安心しな葵、1番初めの女子の誘いは強制だから。」
早苗はニッと笑って言う。
え?じゃあ1番最初に頼めば絶対断られないってこと?
でもそれって、向こうが嫌だったら…
「でも、立花くんてこういうの苦手なんじゃないかな…?」
「なに言ってんのよ、こういう機会でもなきゃあんた何も出来ないでしょ?」
「それはそうだけど…、私も恥ずかしいし。」
葵はもじもじしながらこたえる。
「まっ、強制はしないけどね〜、どっちみち立花くんは誰かに呼ばれると思うよ。人気者なんだしねぇ〜。」
早苗は葵を煽るように言う。
そうだった、立花くんを好きな子をいっぱいいるんだった。
「うん…考えてみる。」
「私は白馬くんの1番とってやるんだから!」
早苗は拳を立てて、燃えている。
どうしよう、みんなの前で誘うの恥ずかしいしな、でも、立花くんが誰かと踊るのも…
うぅーー、踊りなんかなかったらいいのに!
はぁ〜、もう直ぐ始まっちゃうな。
どうしよう。
「はーい、踊りたい人は前に出てきてね〜」
1番最初はちょっと恥ずかしいなぁ。
一回見てみよ。まだ、大丈夫だよね。
おわぁ〜、3人も出て来た。すごいなあ。
「立花さま、私と踊ってくださいまし、」
え?今、立花って言った?
あの人は、
あーーーっ!立花くんを追いかけてた人だ!
やっぱり聞き間違いじゃなかったんだ。
どうしよう。2回目なんて断れるかも知れない。
「葵ちゃん?どうしたの?」
「あ、楓ちゃん。なんでもないよ。」
「立花くん取られたのが悔しいんでしょ?」
「え、ち、違うよ!そんなじゃないよ。」
「うっそだぁ〜、顔に書いてあるよ。」
私ってそんなに分かりやすいの?
「そんなことは…」
「いいじゃん、また誘えば。」
「でも…、2回目はあれだし…、それにみんなの前では…」
葵はお腹の前で指をいじりながら話す。
「それなら、次のフリータイムで誘えばいいんじゃない?」
「そんなのあるの?」
「うん、みんなで踊るから恥ずかしさも薄れるんじゃない?」
これなら、私でもいけそうな気がする。
よしっ、フリータイムで立花くんを誘おう。
「そうしてみるよ、ありがとう楓ちゃん。」
「どういたしまして。」
楓はニコリと笑ってかえす。
「葵ちゃん。一緒に踊らね?」
私?誰だろ。
「え、速川くん?」
「だめかな?前に出るの恥ずかしかったから、直接来たんだけど。」
断っちゃうのも悪いしな〜。
でも、速川くんから誘ったってことは…
やっぱり速川くんて私のこと好きなのかな、
わぁーー!恥かしい。
意識したら、顔見れない。
「葵ちゃん?」
落ち着け、踊るだけ踊るだけ。
「うん、いいよ。」
「まじで!?じゃあいこーぜ!」
悠人は葵の手を引っ張って行く。
うわぁっ!
デートの時みたい。
ドキドキしてきちゃった。
葵の顔は赤い。
はぁ〜、疲れたな。
みんなから見られてる気がしてずっとドキドキしちゃってたな。
速川くんに心臓の音聞かれたかな?
恥ずかしいな。
「次はフリータイムです。自由に踊ってね。」
よし、フリータイムだ。
立花くんはどこにいるかなー?
葵は背伸びをしてキョロキョロと周りを見る。
あれー?いないなあ。
「葵、」
「は、はい!」
あ、赤井くんだ。
「よかったら、俺と踊らね?」
隼人は葵を見ずに、口を尖らせて言う。
立花くん探してるんだけどな〜。
断るのも悪いし。
まだ時間あるし、踊りながら探せばいいか。
「はい。」
隼人は葵の手を取る。
ひゃーー。やっぱりダメ。
緊張しちゃう。うぅ……
赤井くんの手おっきいなあ。
葵は踊りながら隼人をうっとりと眺めていた。
隼人との時間が終わる。
あっ!探すの忘れてた。
うわぁーん。バカだ私。
赤井くんに見惚れちゃってたよ。
でも、カッコよかったな。
「葵!」
今度はだれー?
「はい。」
「Shall we dance?」
男はそう言って、膝をつき手を差し出す。
え、英語!?
なんか映画みたい。
ちょっといいかも。
まだ時間あるし、いいよね。
葵は差し出された手にそっと自分の手を重ねる。
男は顔を上げた。
松原くん!?
なんか合ってる。ふふっ
「ありがとう、お嬢さん。」
「え、あ、うん…」
葵は俯き頰を赤める。
お嬢さんだってーー!!
初めて言われた。
嬉しいな。
葵と旭は踊る。
やっぱり松原くんは落ち着くなあ。
どうしてなんだろう。
相性ぴったり?
うわ、急に恥ずかしくなってきた。
キャンプファイヤーももう終盤
あぁ、どうしよう。
立花くんが見つけられない。
このままじゃ終わっちゃうよ。
「桐山さん、僕と踊ってください!」
「葵さん俺とどうですか?」
「葵ちゃ〜ん、俺と踊りなよ。」
葵は男達に囲まれてしまう。
あ〜、どうしよう。
これじゃあ、動けないし。
立花くん探せないし。
断りにくい。
うわぁーーん、どうしたらいいの〜。
もう、仕方ないか…
私が最初に行かなかったからいけないんだよね。
じゃあこの人で。
そう思い、葵は選んだ男の方へ手を伸ばす。
その瞬間、葵の腕は別の手に捕らえられ、葵は強い力でその手の持ち主へと引き寄せられる。
え!?何?
そしてそのまま葵の身体はその手の持ち主の腕の中へ収まる。
うそ、私抱かれてない!?
何?何が起こったの?
葵はそっと顔を上げる。
え!?た、立花くん!?
どうして、何でここに。




