第35話
〈side 葵〉
今日から林間学校です。
ハンド部で同じクラスなのは、
早苗ちゃんと速川くんと赤井くんと松原くんです。
私は今バスに揺られています。
私の横には早苗ちゃんが座っています。
「はーい、篠原早苗歌いまーす!」
私のクラスはカラオケ大会の真っ最中。
「それでは聞いてください…」
早苗ちゃんうまっ!
こんなに歌上手いって知らなかたったな。
パチパチパチ
「篠原うまかったな!」
「すげーよ、歌手なれんじゃね?」
「早苗!サイッコー!!」
「えへへっ、どうも〜」
早苗は頭に手当ててぺこぺこしている。
「早苗ちゃんすごかったね。」
「ありがと、まあ一応特技だからね。私の美声を傑さまにも聞いてもらいたいわ。」
「そうだね。」
2人で歌ってたら絵になりそうだよね。
「葵は歌わないの?」
「うん、恥ずかしいから。」
「そう?」
「早苗ちゃんがすごいと思うよ。」
「まぁ、馴れだからね〜。今度カラオケ行こっか。」
「うん、それだったらいいかも。」
「約束ね。」
カラオケって行ったことないから楽しみだな。
目的地に到着
「一度部屋に行って、荷物を置いたらまたここに集合してくれ。」
『はーい』
「葵ー、はやく。」
「まってー」
荷物が重い。こんな重かったっけ?
「おい、葵そのカバン俺のだ。」
「え、うそ。」
「嘘じゃない、こっちがお前のだろ。名前確認してから持って行けよ。」
あ、ほんとだ。だから重かったんだね。
「うん、気をつける。ごめんね。赤井くん。」
「ああ、気にすんな。また後でな。」
「うん、ありがとう。」
葵のカバンはブルーの花柄。
同じカバンの人がいるなんて思わなかったな。
赤井くんって意外と可愛いもの好きなのかな?
ふふふっ、
「葵、なにニヤけてんの。早く。」
「あー、ごめん。」
早苗ちゃんに怒られちゃう。
今からハイキングするんだって、
みんなについていけるかな?
班ごとに集まって行くから、迷惑かけないようにしないとね。
私の班は赤井くんと早苗ちゃんがいるんだ。
やっぱりキツイな、
そんなに険しくないけど、普段あまり運動しない私にとっては厳しい道だな。
「早苗ちゃん、はぁ…すごいね」
「まあ、一応元陸上部だからね。これぐらい軽いもんよ。」
腕を捲ってそう言う。
「そうだったんだ。知らなかったな。はぁ…」
「葵大丈夫?少し休憩しようか?」
「はぁ…ううん、大丈夫だよ、はあ…」
「そう?」
やっぱり休憩してもらったほうがいいかな?
でもあと少しっぽいし、いけるよね。
「あとすこ、わぁっ!!」
「葵!!」
やばい!落ちる!
そう思った瞬間、強い力で腕が引かれ、
そのまま抱き寄せられる。
え?今、抱き締められてる?
葵の脈が速くなる。
「おい、大丈夫か?」
「あ、うん…、ありがとう…」
葵は俯いたまま答える。
あぁーー!顔が見れないよぅ。
恥ずかしい。すっごく恥ずかしい。
「少し休憩しよう。」
「私は大丈夫だよ?」
いつまで、このままなのかな?
顔がすっごく近い。
こんな間近なの初めてだよ。
「いや、だめだ、」
「うん、分かった…あの、赤井…くん…?」
「あー、ごめん!」
そう言って隼人はすぐ葵をはなす。
まだドキドキしてる。
赤井くんカッコよかったな。
やっぱり赤井くんは優しいなあ。
「葵、大丈夫だった?」
「うん、赤井くんのおかげで大丈夫だったよ。」
「よかったー。」
早苗は葵に抱きつく。
「早苗ちゃん、大袈裟だよ。」
「ううん、私、怖かったんだから。」
「ありがとう。」
「それで、赤井くんの腕の中どうだったの?」
「え?それは…、ドキドキしたかな。」
葵は顔を真っ赤にして答える。
もーっ!いきなりそんなこと聞かないでよ。
思い出しちゃう。うぅ…
「好きになった?」
「そんなのまだ分かんないよ。」
「そう、」
早苗はニッと笑って葵をみる。
私のドキドキのハイキングは、この後は何事もなく終わった。
はぁー。いろんな意味で疲れたな。
次はカレー作りかぁ。
私料理はしたことあるから安心だな。
私の役割は材料を切る係になった。
しかも赤井くんと、どうしよう、緊張しちゃう!
早苗ちゃんは火を起こす係、やってみたかったんだって。
赤井くんは意外と料理が得意だった。
意外すぎてちょっとキュンッてするよね。
ギャップって言うやつなのかな?
ちょっと失礼だよね。
私と赤井くんが2人で切ってたら、
同じ班の男子が
「赤井と葵って名前的にもお似合いだよな。」
とか言ってくるんだよ。
すっごく、恥ずかしくなっちゃった。
赤井くんは少し照れてて、可愛かったな。
私と赤井くんってお似合い?
そんなの分かんないよね。
カレーはとっても美味しかった。
食べてたら赤井くんが美味しいねってこっちを向いて言ってきたんだ。
私恥ずかしくなっちゃって、顔そらしちゃった。
だってね、さっきの思い出しちゃうんだもん。
悪いことしちゃったなあ。
それを見てた早苗ちゃんは笑ってるんだよ、ひどいよね。
あとね、カレー食べてるときに、立花くんを見かけたんだ。
声をかけようかなって思ったけど、そんな状況じゃなかったんだ。
立花くんは友達と一緒に女の子達に追いかけられてて大変そうだったんだよ。
やっぱり、モテるんだよね。
女の子も可愛かったし、立花くんはどう思ってるんだろう。
今日の工程はこれで終わりなんだ。
お風呂が時間かかるんだって。
お風呂といえば、遠征のときのこと思い出しちゃた。
今回は絶対逃げよう。うん。
覗きは早苗ちゃんがいるから安心だね。
あっという間に就寝時間
「ふぁ〜〜〜、眠たい。」
「早苗、口開けすぎ。」
「今は、気にしなーい。」
「今気にしないと、他の時にその癖でるよ。」
「大丈夫だって。」
早苗ちゃんと話しているのは同じ部屋の楓ちゃん。
ちっちゃくて可愛いんだよ。
「今日は疲れたよね。」
「そうね、葵は大変だったもんねぇ」
早苗はニヤリと笑い言う。
「うん、まあね」
「葵は、ハンド部の中では誰がお好みなの?」
楓ちゃん興味津々だなあ。
「うーん、お好みって言われても。」
「やっぱり、早苗と同じで白馬くん?」
「ううん、白馬くんはカッコいいと思うけど、好きにはならないかな。早苗ちゃんがいるしね。」
「葵ー。さっすがー。」
「早苗は白馬くんにゾッコンだもんね。」
「うん、まあね、」
言い切るところが早苗ちゃんらしいよね。
「それで、葵は?あのイケメン達の中の誰をえらぶの?」
「え?んー…」
「今日の感じだと赤井くん?」
楓ちゃん追求がすごいなあ。
「楓、葵困ってるから、もう少しゆっくりききなよ。」
「そうだね。葵のペースの方がいいよね。」
これ、いわないとダメな空気になってない?
まだ、よく分からないのに。
「あのね、よく分からないんだ。」
葵は、ゆっくりと口を開く。
「どういうこと?」
「なんかね、自分が誰が好きなのかよく分からないんだ。」
「どうして?」
「なんだか、誰にでもドキドキする気がして。」
「あー、そういうことね。」
「立花くんはどうしたの?」
葵は遠征の夜のことや、さつきとのことを話す。
「そんなことあったの?」
「キュンってする〜」
楓は枕を抱きしめ体を揺らす。
「うん、結局告白出来なかったんだけど、もしかしたら立花くんじゃなくても、告白してたのかなって思って…」
「うーん、それは難しいね。」
「立花くんが葵のこと好きだったら話は楽なんだけどね。」
「私の笑顔がいいって言ってくれたんだけど、どうなんだろうね。」
「でも、ちょっとは葵のこと意識してるんじゃない?」
「え?」
「だって立花くんて、女子にかなり人気あるのに浮ついた話もないしさ。」
「そうそう、話してるところも見たことないし。」
「そうなの?」
「私なんか、ああ、とかしか返事ないよ。ちょっと葵が羨ましいくらい。」
「そうなんだ。」
葵な表情は少し緩む。
「でもさつきって人はかなりの強敵よね。」
「私その人知ってるけど、すっごい美人で性格良いよね。」
「うん、」
葵の表情はまた暗くなる。
「さつき先輩って立花くんのこと好きなのかな?」
「本人に聞いてみれば?」
「一回聞いたときは、答えてくれなかったんだよ。」
「もう一回聞けばいいんじゃない?変わってるかもしれないよ。」
「うん、そうだね。」
「結局、葵は立花くん推し?」
「え、うーん、どうなんだろう。」
「まあクラス一緒じゃないしね、それに一緒に帰るのもたまになんでしょ?」
「うん、2人きりじゃないしね。」
「だったら、デートに誘いなよ。」
「え、そんなの…」
「だって、分からないじゃん。」
「そうだけど、」
「私は、赤井くんとか、他のハンド部の人もいいと思うけどな〜。」
「そうね、私もそっちの方がいいと思う。」
「そうなの?」
「うん、だってね。気持ちがはっきりしてるじゃん。」
「そうそう、」
「そうかな?」
「葵気付いてない?」
「速川くんはそうなのかなぁーって思うけど…実際は聞くまで分かんないかな。」
「もっと自分に自信持ちなよ。」
「そうだよ、葵は魅力的なんだからさ。」
「うん…」
「もう消灯だし今日は寝よ。」
「まだ明日もあるしね。」
「うん。」
「おやすみー」
「おやふみぃ〜」
「おやすみ」
私は誰が好きなの?
どうしたらいいの?
さつき先輩が立花くんを好きなら、時間なんてそんなにないよね。
やっぱり他の人の方がいいのかな。
立花くんの気持ちが知りたいな。
夜は静かに更けていく…




